基底と次元の基本的性質(2)

ベクトル空間 $V$ の次元が $n$ であることと、任意の $V$ の元をその線型結合として一意に表すことができる $n$ 個のベクトルが存在することは同値です。

これは、次元の定義と同値な条件を示す定理であるといえます。

次元の定義と同値な条件


定理 4.31(次元の定義と同値な条件)

$V$ をベクトル空間とすると、次の $2$ つの条件は同値である。

($1$)$\dim V = n$
($2$)$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in V$ があり、$V$ の任意の元が $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合として一意に表せる。


解説

$\dim V = n$ と同値な条件

定理 4.31(次元の定義と同値な条件)は、あるベクトル空間の次元($\dim V$)が $n$ であることと同値な条件を示すものです。

次元の定義と同値な条件

また、 定理 4.31は、 次元の定義と同値な条件を示すものと捉えることもできます。 定理 4.28(基底であることと同値な条件)により、 定理 4.31の条件($2$)は $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ が $V$ の基底であることと同値な条件となるためです。

すなわち、 定理 4.31および 定理 4.28により、次の $3$ つの条件は同値であることがわかります。

($1$)$\dim V = n$
($2$)$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in V$ があり、$V$ の任意の元が $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合として一意に表せる。
($2^{\prime}$)$V$ に $n$ 個の元からなる基底が存在する。


証明

$\dim V = n$ であるとすると、$V$ には $n$ 個の元からなる基底が存在する。これを $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ とすれば、 定理 4.28(基底であることと同値な条件)により、任意の $V$ の元は $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合として一意に表せる。逆に、任意の $V$ の元をその線型結合として一意に表せるような $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in V$ があるとすると、再び 定理 4.28により、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ は $V$ の基底である。したがって、$\dim V = n$ である。$\quad \square$



証明の考え方

定理 4.28(基底であることと同値な条件)を用いて、条件($1$)と($2$)の同値性を証明します。

($1$)$\Rightarrow$($2$)の証明

  • $\dim V = n$ であるので、$V$ には $n$ 個の元からなる基底が存在することになります。
  • $V$ の基底を $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ とすれば、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ は線型独立であり、かつ $V$ を生成するので、 定理 4.28(基底であることと同値な条件)より、$V$ の任意の元が $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合として一意に表せることになります。
  • 以上から($1$)$\Rightarrow$($2$)が示されました。
補足(($1$)$\Rightarrow$($2$)の証明)
  • 上記の証明において 定理 4.28(基底であることと同値な条件)を援用した部分をより詳しく示すと、次のようになります。
  • いま、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ は $V$ の基底であることを仮定していますので、$V$ の任意の元が $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合として表せることは明らかです。
  • したがって、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合としての表し方が一意的であることを示せばよいわけですが、これは、背理法により示すことができます。
    • $V$ の任意の元が $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合として $2$ 通りに表せると仮定すると、次が成り立ちます。

      $$ \begin{gather*} & c_{1} \, \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \, \bm{v}_{n} = c_{1} \, \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \, \bm{v}_{n} \\ \Leftrightarrow & (c_{1} - c^{\prime}_{1}) \, \bm{v}_{1} + \cdots + (c_{n} - c^{\prime}_{n}) \, \bm{v}_{n} = \bm{0} \end{gather*} $$

    • いま、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ が線型独立であることから、$c_{1} - c^{\prime}_{1} = 0, \cdots, c_{n} - c^{\prime}_{n} = 0$、すなわち $c_{1} = c^{\prime}_{1}, \cdots, c_{n} = c^{\prime}_{n}$ が成り立ちます( 基底の定義)。

    • しかしながら、これは、任意の $V$ の元が $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合として $2$ 通りに表せることに矛盾します。

    • よって、$V$ の任意の元は $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合として一意に表せるといえます。

($1$)$\Leftarrow$($2$)の証明

  • 逆に、任意の $V$ の元をその線型結合として一意に表せるような $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in V$ があると仮定して、$\dim V = n$ を導きます。
  • このとき、 定理 4.28(基底であることと同値な条件)より、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ は $V$ の基底となります。
  • したがって $V$ は $n$ 個の元からなる基底もを持ち、$\dim V = n$ となります。
  • 以上から($1$)$\Leftarrow$($2$)が示されました。
補足(($1$)$\Leftarrow$($2$)の証明)
  • 上記の証明において 定理 4.28(基底であることと同値な条件)を援用した部分をより詳しく示すと、次のようになります。
  • いま、任意の $V$ の元が $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合として一意に表せることを仮定していますので、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ が $V$ を生成することは明らかといえます( 基底の定義)。
  • したがって、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ が線型独立であることを示せば、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ が $V$ の基底であることが証明できます。
  • $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ が線型独立であることは、次のようにして確かめることができます。
    • 線型関係 $c_{1} \, \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \, \bm{v}_{n} = \bm{0}$ について考えると、仮定より、左辺($\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合)は一意的であり、かつ $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ には自明な線型関係 $0 \, \bm{v}_{1} + \cdots + 0 \, \bm{v}_{n} = \bm{0}$ が存在することから、次が成り立ちます。

      $$ \begin{gather*} & c_{1} \, \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \, \bm{v}_{n} = 0 \, \bm{v}_{1} + \cdots + 0 \, \bm{v}_{n} \\ \Rightarrow & c_{1} = 0, \cdots, c_{n} = 0 \end{gather*} $$

    • 上式は、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ には自明な線型関係しか存在しない(自明でない線型関係が存在しない)ということを示す式に他ならず、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ は線型独立であるといえます。

      $$ \begin{gather*} & c_{1} \, \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \, \bm{v}_{n} = \bm{0} \\ \Rightarrow & c_{1} = 0, \cdots, c_{n} = 0 \end{gather*} $$


まとめ

  • $V$ をベクトル空間とすると、次の条件は同値である。
    ($1$)$\dim V = n$
    ($2$)$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in V$ があり、$V$ の任意の元が $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の線型結合として一意に表せる。
    ($2^{\prime}$)$V$ に $n$ 個の元からなる基底が存在する。

参考文献

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初版:2023-03-05   |   改訂:2024-12-25