行列の対角化

行列を対角化する方法について整理します。

行列を対角化するためには、まず、固有方程式を解いて固有値を求め、対角化可能であるか判定します。対角化可能である場合は、各固有値に属する固有ベクトルを求め、行列を対角化する正則行列を得ます。

行列を対角化する方法

まず、具体的に与えられた行列が対角化可能であるかを判定し、対角化可能である場合、行列を対角化する方法を示します。


対角化可能性の判定と対角化の手順

$A$ を $n$ 次の正方行列とすると、$A$ を対角化するための手順は、次の通り。

($1$)対角化可能性の判定

  • $A$ の固有方程式を解き、$A$ が(重複を含めて)$n$ 個の固有値を持つことを確認する。
  • 固有空間の次元の総和が $n$ に等しいことを確認する。

($2$)対角化

  • 各固有値に属する固有ベクトルを求め、それらを列ベクトルに持つ行列を作ることで $A$ を対角化する正則行列を得る。


(1)対角化可能性の判定

すべての正方行列が対角化可能であるわけではありません。したがって、対角化に先立って、与えられた行列が対角化可能であることを確かめる必要があります。

$n$ 次の正方行列 $A$ の対角化可能性を判定するためには、まず、$A$ の固有方程式を解き、$A$ が(重複を含めて)$n$ 個の固有値を持つことを確認します。$A$ の固有値が重複を含めて $n$ 個ある場合は、更に、固有空間の次元の総和が $n$ に等しいことを確認します。

$A$ の対角化可能性は、固有値の個数と固有空間の次元の観点から、次の $3$ つのパターンに分類されます。

$\, \text{I}. \,$ 固有値が(重複を含めて)$n$ 個ない
$\quad $ $\Rightarrow$ 対角化できない

$\text{II}. \,$ 固有値が(重複を含めて)$n$ 個ある
$\,$($\text{i}$)固有空間の次元の総和が $n$ に等しい
$\qquad$ $\Rightarrow$ 対角化できる
($\text{ii}$)固有空間の次元の総和が $n$ より小さい
$\qquad$ $\Rightarrow$ 対角化できない


$\, \text{I}. \,$ 固有値が(重複を含めて)$n$ 個ない場合

$A$ が(重複を含めて)$n$ 個の固有値を持たないとき、$A$ は対角化できません。このとき、線型独立な固有ベクトルの数は $n$ 個に満たず、 対角化の条件を満たさないためです( 定理 6.13(対角化の条件))。

実数の範囲で考える場合にのみ起こる

これは、実数の範囲で行列の対角化を考える場合にのみ起きます。

定理 6.3(固有方程式)より、$n$ 次の正方行列である $A$ の固有方程式は $n$ 次方程式となります。また、代数学の基本定理より「 $n$ 次方程式は複素数の範囲で重複を含めて $n$ 個の解を持つ」といえます。したがって、固有値が(重複を含めて)$n$ 個ないというのは、対角化の問題を、実数の範囲に限定して考えた場合にのみ起き得ます。

対角化不可能である場合の例

例えば、$A$ が $3$ 次の正方行列であり、$A$ の固有多項式が次のようになるとします。

$$ \begin{gather*} \phi_{A} (t) = (1 - t) (1 + t^{2}) \end{gather*} $$

このとき、実数の範囲で考えると、$A$ の固有値は $t = 1$ のみであり、$A$ は対角化不可能となります。一方で、複素数の範囲で考えれば、$A$ は $3$ つの相異なる固有値 $t = 1, \, \plusmn \, i$ を持つため、対角化可能であるということになります(この場合、 $\text{II}. $($\text{i}$)に該当します)。

$\text{II}. \,$ 固有値が(重複を含めて)$n$ 個ある場合

$A$ が(重複を含めて)$n$ 個の固有値を持つとき、$A$ が対角化可能であるかを判定するためには、更に、重複している固有値の固有空間の次元を調べる必要があります。

すなわち、固有空間の次元により、更に、次のような $2$ つの場合に分けられます。

($\text{i}$)固有空間の次元の総和が $n$ に等しい場合

固有空間の次元の総和が $n$ に等しいとき、$A$ は 対角化の条件を満たします。したがって、この場合、$A$ は対角化可能です。

固有値の重複度と対角化可能性

$A$ の相異なる固有値を $\lambda_{1}, \cdots, \lambda_{r}$ として、それぞれの重複度を $m_{1}, \cdots, m_{r}$ とすれば、この条件は、次のように表せます。

$$ \begin{gather*} \dim W (\lambda_{i}) = m_{i} & (\, 1 \leqslant i \leqslant r \,) \end{gather*} $$

すなわち、$A$ の相異なるすべての固有値 $\lambda_{1}, \cdots, \lambda_{r}$ において、固有空間の次元と固有値の重複度が等しいならば、$A$ は対角化可能であるといえます。

重複のある固有値についてのみ調べる

しかしながら、実際には、すべての固有値について調べる必要はありません。

定義より固有ベクトルは $\bm{0}$ でないため、固有空間の次元は必ず $1$ 以上になります。また、 定理 6.11(固有空間の次元と重複度)より、固有空間の次元は重複度を超えません。したがって、重複度が $1$ の場合、 上記の条件は必ず満たされます。

このような理由から、実際には、重複度が $2$ 以上の固有値(固有方程式の重解)についてのみ、固有空間の次元を調べる必要があるということです。

重複がない(相異なる $n$ 個の固有値を持つ)場合

$A$ の固有値に重複がない(すなわち、$A$ が相異なる $n$ 個の固有値を持つ)場合、$A$ は直ちに対角化可能といえます。

これは、 定理 6.10(対角化可能であるための十分条件)に他なりません。すなわち、$A$ が相異なる $n$ 個の固有値を持つならば、すべての固有値 $\lambda_{1}, \cdots, \lambda_{n}$ において、固有空間の次元と重複度は、ともに $1$ に等しく、自ずから等しくなります。

($\text{ii}$)固有空間の次元の総和が $n$ よりも小さい場合

固有空間の次元の総和が $n$ よりも小さいとき、$A$ は 対角化の条件を満たしません。したがって、この場合、$A$ は対角化不可能です。

重複のある固有値についてのみ調べる

上記の考察の通り、重複度が $1$ の固有値は、必ず固有空間の次元と重複度が等しくなります。

したがって、この場合も重複度が $2$ 以上の固有値(固有方程式の重解)についてのみ調べていき、$1$ つでも固有空間の次元が重複度より小さい固有値があれば、直ちに対角化不可能とわかります。


(2)対角化

$A$ を対角化する正則行列を求めることで、$A$ を対角化します。

正方行列を対角化する正則行列の作り方

線形独立な $A$ の固有ベクトルを求め、これをまとめて行列表示することで、次の式を満たす正則行列 $P$ を求めます。この $P$ こそ、$A$ を対角化する正則行列に他なりません。

$$ \begin{gather*} & P^{-1} A P = \begin{pmatrix} \; \lambda_{1} & & \large{O} \; \\ & \ddots & \\ \; \large{O} & & \lambda_{n} \; \\ \end{pmatrix} \\ \end{gather*} $$

$A$ を対角化する正則行列 $P$ の作り方は、 定理 6.13(対角化の条件)の証明(特に($3$)$\Rightarrow$($1$)の証明)に示した通りですが、ここに改めて整理します。

$P$ が正則であることの根拠

まず、$P$ が正則であることは、$A$ が対角化可能な場合、その固有ベクトルが線形独立であることによります。

既に $A$ が対角化可能であると判定されている場合、$A$ の固有空間の次元の総和が $n$ に等しいことが確かめられています。したがって、 定理 6.13(対角化の条件)により、$A$ は $n$ 個の線型独立な固有ベクトルを持つといえます。

したがって、これら $n$ 個の線型独立な固有ベクトルを列ベクトルとして持つ行列は、 定理 4.27(行列式と線型独立性)より、正則であるといえます。

対角行列の成分(固有値)と固有ベクトルの対応

また、$P$ の列ベクトルとしての固有ベクトルの並び順は、$A$ を対角化した行列の対角成分と対応したものになります。

具体的には、$A$ の(重複を含む)固有値 $\lambda_{1}, \cdots, \lambda_{n}$ に対応する $n$ 個の線型独立な固有ベクトルを $\bm{x}_{1}, \cdots, \bm{x}_{n}$ とすると、$1 \leqslant i \leqslant n$ について $A \bm{x}_{i} = \lambda_{i} \bm{x}_{i}$ 成り立ちます。ここで、$A \bm{x}_{1}, \cdots, A \bm{x}_{n}$ を列ベクトルとして、これをまとめて行列として表すと、次のようになります。

$$ \begin{gather*} A \, (\, \bm{x}_{1}, \cdots, \bm{x}_{n} \,) = (\, \bm{x}_{1}, \cdots, \bm{x}_{n} \,) \begin{pmatrix} \; \lambda_{1} & & \large{O} \; \\ & \ddots & \\ \; \large{O} & & \lambda_{n} \; \\ \end{pmatrix} \end{gather*} $$

更に、$P = (\, \bm{x}_{1}, \cdots, \bm{x}_{n} \,)$ とすれば、$\bm{x}_{1}, \cdots, \bm{x}_{n}$ が線型独立であることから $P$ は正則である(逆行列を持つ)といえます。したがって、次のように、$P$ によって $A$ が対角化されます。

$$ \begin{gather*} & A P = P \begin{pmatrix} \; \lambda_{1} & & \large{O} \; \\ & \ddots & \\ \; \large{O} & & \lambda_{n} \; \\ \end{pmatrix} \\ \Leftrightarrow & P^{-1} A P = \begin{pmatrix} \; \lambda_{1} & & \large{O} \; \\ & \ddots & \\ \; \large{O} & & \lambda_{n} \; \\ \end{pmatrix} \end{gather*} $$

上記の式は、固有値と固有ベクトルの対応関係を表す $A \bm{x}_{1}, \cdots, A \bm{x}_{n}$ を行列表示したものであることから、$P$ 列ベクトルとしての固有ベクトル $\bm{x}_{i}$ の並び順は、$A$ を対角化した行列の対角成分(すなわち、固有値 $\lambda_{i}$)の並び順と対応しています。


行列の対角化(例)

次に、具体的に与えられた行列について、対角化の判定と対角化の例を $2$ つ示します。


例題1(対角化可能性の判定)

次の正方行列について、対角化可能かを判定し、可能な場合は対角化せよ。

$$ \begin{align*} \begin{pmatrix} \; 2 & -1 & 2 \; \\ \; 1 & 0 & 2 \; \\ \; -2 & 2 & -1 \; \\ \end{pmatrix} \end{align*} $$


解答(例題1)

与えられた行列を $A$ とすると、$A$ の固有多項式は、次のようになる。

$$ \begin{align*} \phi_{A} (t) &= \begin{vmatrix} \; 2 - t & -1 & 2 \; \\ \; 1 & - t & 2 \; \\ \; -2 & 2 & -1 - t \; \\ \end{vmatrix} \\ &= - (t + 1) (t - 1)^{2} \end{align*} $$

よって、$A$ の固有値は $\lambda = -1, 1$ であり、固有値 $1$ の重複度は $2$ である。いま、$\lambda = 1$ として、斉次連立一次方程式 $(A - E) \, \bm{x} = \bm{0}$ を解くと、

$$ \begin{gather*} \bm{x} = c \begin{pmatrix} \; 1 \; \\ \; 1 \; \\ \; 0 \; \end{pmatrix} & (\, c \in K \,) \end{gather*} $$

であるから、固有値 $\lambda = 1$ の固有空間を $W (1)$ とすれば、$\dim W (1) = 1 \lt 2$ であり、$W (1)$ の次元は重複度を超えない。したがって、$A$ は対角化できない。



解答の考え方(例題1)

対角化可能性の判定と対角化の手順に従います。

(1)対角化可能性の判定
  • はじめに、固有方程式を解いて $A$ の固有値を求めます。

  • いま、固有方程式が重解を持つので、重複のある固有値 $\lambda = 1$ の固有空間の次元を調べて、対角化可能性を判定します。

  • 斉次連立一次方程式 $(A - E) \, \bm{x} = \bm{0}$ を解くことで、固有値 $\lambda = 1$ に属する固有ベクトルを求めます。

    • 定義より、固有値 $\lambda = 1$ に属する固有ベクトルは、$A \bm{x} = 1 \bm{x}$ を満たします。
    • したがって、固有値 $\lambda = 1$ に属する固有ベクトルを求めることは、斉次連立一次方程式 $(A - E) \, \bm{x} = \bm{0}$ を解くことと同じです。
      $$ \begin{gather*} A \bm{x} = 1 \bm{x} \; \Leftrightarrow \; (A - E) \, \bm{x} = \bm{0} \end{gather*} $$
  • 斉次連立一次方程式の解法にしたがって、行列の基本変形を用いて $(A - E) \, \bm{x} = \bm{0}$ を解くと、次のようになります。

    $$ \begin{gather*} \bm{x} = c \begin{pmatrix} \; 1 \; \\ \; 1 \; \\ \; 0 \; \end{pmatrix} & (\, c \in K \,) \end{gather*} $$

  • すなわち、固有値 $\lambda = 1$ に属する固有ベクトルは、$1$ つの定ベクトルのスカラー倍で表せることがわかります。

  • つまり、$\lambda = 1$ の固有空間の次元は $1$ であり、重複度を超えないことがわかります。

  • 以上から、 定理 6.13(対角化の条件)を満たさないことがわかりましたので、$A$ は対角化できないといえます。

    • 重解ではない $\lambda = -1$ の場合の固有ベクトルを求める必要はありません。
    • もちろん、$\dim W (-1) = 1$ であるので、$\dim W (-1) + \dim W (1) = 2 \lt 3$ であることから、固有空間の次元の総和が $A$ の次数を超えないことが確かめられます。


例題2(行列の対角化)

次の正方行列について、対角化可能かを判定し、可能な場合は対角化せよ。

$$ \begin{align*} \begin{pmatrix} \; 2 & 0 & 1 \; \\ \; 1 & 1 & 1 \; \\ \; 0 & 0 & 1 \; \\ \end{pmatrix} \end{align*} $$


解答(例題2)

与えられた行列を $A$ とすると、$A$ の固有多項式は、次のようになる。

$$ \begin{align*} \phi_{A} (t) &= \begin{vmatrix} \; 2 - t & 0 & 1 \; \\ \; 1 & 1 - t & 1 \; \\ \; 0 & 0 & 1 - t \; \\ \end{vmatrix} \\ &= - (t - 1)^{2} \, (t - 2) \end{align*} $$

よって、$A$ の固有値は $\lambda = 1, 2$ であり、固有値 $1$ の重複度は $2$ である。いま、$\lambda = 1$ として、斉次連立一次方程式 $(A - E) \, \bm{x} = \bm{0}$ を解くと、

$$ \begin{gather*} \bm{x} = c_{1} \begin{pmatrix} \; -1 \; \\ \; 0 \; \\ \; 1 \; \end{pmatrix} + c_{2} \begin{pmatrix} \; 0 \; \\ \; 1 \; \\ \; 0 \; \end{pmatrix} & (\, c_{1}, \, c_{2} \in K \,) \end{gather*} $$

であり、固有値 $\lambda = 1$ の固有空間を $W (1)$ とすれば、$\dim W (1) = 2$ である。また、$\lambda = 2$ として、斉次連立一次方程式 $(A - 2 E) \, \bm{x} = \bm{0}$ を解くと、

$$ \begin{gather*} \bm{x} = c_{3} \begin{pmatrix} \; 1 \; \\ \; 1 \; \\ \; 0 \; \end{pmatrix} & (\, c_{3} \in K \,) \end{gather*} $$

であり、固有値 $\lambda = 2$ の固有空間を $W (2)$ とすれば、$\dim W (2) = 1$ である。したがって、$\dim W (1) + \dim W (2) = 3$ であり、固有空間の次元の総和が $A$ の次数に等しいので、$A$ は対角化可能である。

いま、次のような行列を $P$ とすると、

$$ \begin{gather*} P = \begin{pmatrix} \; -1 & 0 & 1 \; \\ \; 0 & 1 & 1 \; \\ \; 1 & 0 & 0 \; \\ \end{pmatrix} \end{gather*} $$

$P$ は正則であり、次が成り立つ。

$$ \begin{gather*} P^{-1} A P = \begin{pmatrix} \; 1 & 0 & 0 \; \\ \; 0 & 1 & 0 \; \\ \; 0 & 0 & 2 \; \\ \end{pmatrix} \end{gather*} $$



解答の考え方(例題2)

対角化可能性の判定と対角化の手順に従います。

(1)対角化可能性の判定
  • はじめに、固有方程式を解いて $A$ の固有値を求めます。
  • いま、固有方程式が重解を持つので、重複のある固有値 $\lambda = 1$ の固有空間の次元を調べて、対角化可能性を判定します。
  • 例題1 と同様に、$\lambda = 1$ として斉次連立一次方程式を解いて、固有値 $\lambda = 1$ に属する固有ベクトルを求めると、固有空間 $W (1)$ の次元が重複度と等しいことが確かめられます。
  • したがって、この場合、 定理 6.13(対角化の条件)を満たし、$A$ は対角化可能であることがわかります。
(2)対角化
  • $A$ の各固有値に属する線型独立な固有ベクトルを求めます。

    • 対角化可能なケースなので、重複のない固有値 $\lambda = 2$ に属する固有ベクトルも求めます。
    • $\lambda = 1$ に属する固有ベクトルを $\bm{x}_{1}, \, \bm{x}_{2}$ 、$\lambda = 2$ に属する固有ベクトルを $\bm{x}_{3}$ とすると、それぞれ次のようになります。
      $$ \begin{align*} & \bm{x}_{1} = \begin{pmatrix} \; -1 \; \\ \; 0 \; \\ \; 1 \; \end{pmatrix}, \, \bm{x}_{2} = \begin{pmatrix} \; 0 \; \\ \; 1 \; \\ \; 0 \; \end{pmatrix}, \\ & \bm{x}_{3} = \begin{pmatrix} \; 1 \; \\ \; 1 \; \\ \; 0 \; \end{pmatrix} \end{align*} $$
  • $P = (\, \bm{x}_{1}, \, \bm{x}_{2}, \, \bm{x}_{3} \,)$ とすると、$\bm{x}_{1}, \, \bm{x}_{2}, \, \bm{x}_{3}$ が線型独立であることから $P$ は正則であり、$P^{-1}$ は次のようになります。

    $$ \begin{gather*} P^{-1} = \begin{pmatrix} \; 0 & 0 & 1 \; \\ \; -1 & 1 & -1 \; \\ \; 1 & 0 & 1 \; \\ \end{pmatrix} \end{gather*} $$

    • $P$ の逆行列も、行列の基本変形による 逆行列の計算法を用いて求めることができます。
  • 以上で、$A$ を対角化する正則行列 $P$ が求まり、$A$ が対角化できたことになります。

    • 上記の考察の通り、$P$ の列ベクトルの順番は、対角行列における対角成分(固有値)の順番に対応します。
    • $\bm{x}_{1}, \, \bm{x}_{2}$ は $\lambda = 1$ に属する固有ベクトル、$\bm{x}_{3}$ は $\lambda = 2$ に属する固有ベクトルなので、対角行列において、固有値は $1, 1, 2$ の順で並びます。

まとめ

  • $A$ を $n$ 次の正方行列とすると、$A$ を対角化するための手順は、次の通り。

($1$)対角化可能性の判定

  • $A$ の固有方程式を解き、$A$ が(重複を含めて)$n$ 個の固有値を持つことを確認する。
  • 固有空間の次元の総和が $n$ に等しいことを確認する。

($2$)対角化

  • 各固有値に属する固有ベクトルを求め、それらを列ベクトルに持つ行列を作ることで $A$ を対角化する正則行列を得る。

  • $A$ の対角化可能性は、固有値の個数と固有空間の次元の観点から、次の $3$ つのパターンに分類される。

$\, \text{I}. \,$ 固有値が(重複を含めて)$n$ 個ない
$\quad $ $\Rightarrow$ 対角化できない

$\text{II}. \,$ 固有値が(重複を含めて)$n$ 個ある
$\,$($\text{i}$)固有空間の次元の総和が $n$ に等しい
$\qquad$ $\Rightarrow$ 対角化できる
($\text{ii}$)固有空間の次元の総和が $n$ より小さい
$\qquad$ $\Rightarrow$ 対角化できない


参考文献

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初版:2023-10-17   |   改訂:2025-02-12