ユニタリ変換とユニタリ行列(2)
一般の計量ベクトル空間において、ユニタリ変換の表現行列がユニタリ行列であることを示します。
これは、線型変換がユニタリ変換であるための条件(必要十分条件)の $1$ つです。また、ユニタリ行列による行列の標準化を考える上で重要な役割を果たします。
ユニタリ行列とユニタリ行列
定理 7.26(ユニタリ変換とユニタリ行列)
$V$ を $n$ 次元の計量ベクトル空間として、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ を $V$ の正規直交基底とする。このとき、$V$ の線型変換 $f_{A} : V \to V$ の正規直交基底 $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ 関する行列表示を $A$ とすると、次の $2$ つの条件は同値である。
($2$)$A$ はユニタリ行列である。
解説
ユニタリ変換の行列表示はユニタリ行列
定理 7.26(ユニタリ変換とユニタリ行列)は、一般の計量ベクトル空間において、 ユニタリ変換の表現行列が ユニタリ行列であることを示しています。
数ベクトル空間における対応関係の一般化
また、 定理 7.26(ユニタリ変換とユニタリ行列)は、 定理 7.25(数ベクトル空間のユニタリ変換)を一般化したものであるといえます。
数ベクトル空間におけるユニタリ変換とユニタリ行列の対応
前項の 定理 7.25(数ベクトル空間のユニタリ変換)は、数ベクトル空間 $K^{n}$ において、ユニタリ変換とユニタリ行列が対応関係にあることを示すものでした。
すなわち、数ベクトル空間 $K^{n}$ において、ユニタリ変換の行列表示はユニタリ行列であり、逆にユニタリ行列により定まる線型変換はユニタリ変換となります。
数ベクトル空間と計量ベクトル空間の同型
ところで、標準内積を備えた数ベクトル空間 $K^{n}$ は、一般の(内積を備えた)$n$ 次元計量ベクトル空間に同型であることがわかっています( 定理 7.19(計量同型)、 系 7.20(計量同型と数ベクトル空間)を参照)。
したがって、数ベクトル空間に関して 定理 7.25が成り立つならば、一般の計量ベクトル空間に関して 定理 7.26が成り立つことは、ある意味当然ともいえます。(詳しくは、下記の 証明を参照。)
ユニタリ変換であるための条件:表現行列がユニタリ行列であること
定理 7.26(ユニタリ変換とユニタリ行列)より、線型変換が計量同型写像であることと、その表現行列がユニタリ行列であることは同値であるといえます。
これは、 定理 7.21(ユニタリ変換であることと同値な条件)などにまとめた、線型変換がユニタリ変換であるための条件(必要十分条件)に、新たな条件を追加するものです。
ユニタリ変換であるための条件(まとめ)
線型変換 $f$ がユニタリ変換であるための条件(必要十分条件)を改めてまとめると、次のようになります。すなわち、次の $6$ つの条件は互いに同値です。
$\,$($\text{ii}$)$f$ は内積の値を保存する。
($\text{iii}$)$f$ はノルムの値を保存する。
($\text{iv}$)$f$ は正規直交基底を正規直交基底に移す。
$\,$($\text{v}$)$f$ の表現行列の列ベクトルは正規直交基底をなす。
($\text{vi}$)$f$ の表現行列がユニタリ行列である。
ここで、条件($\text{i}$)$\sim$($\text{iii}$)は ユニタリ変換の定義によるものであり、条件($\text{iv}$)は 定理 7.21(ユニタリ変換であることと同値な条件)、条件($\text{v}$)は 定理 7.25(数ベクトル空間のユニタリ変換)、条件($\text{vi}$)は 定理 7.26(ユニタリ変換とユニタリ行列)によるものです。
証明
系 7.20(計量同型と数ベクトル空間)より、$n$ 次元計量ベクトル空間 $V$ と $K^{n}$ は計量同型であるから、$K^{n}$ から $V$ への計量同型写像が存在し、
とすると、$\phi : K^{n} \to V$ は計量同型写像である。このとき、線型変換 $f_{A}$ の $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ に関する行列表示が $A$ であることから、次が成り立つ。
ここで、$A$ を $K^{n}$ から $K^{n}$ への線型変換と考えれば、$f_{A}$ がユニタリ変換であることと、$A$ がユニタリ変換であることとは同値である。また、線型変換 $A$ の、標準基底に関する行列表示は $A$ に他ならない。したがって、 定理 7.25(数ベクトル空間のユニタリ変換)より、線型変換 $A$ がユニタリ変換であることと、その表現行列 $A$ がユニタリ行列であることは同値である。$\quad \square$
証明の考え方
線形変換のその表現行列の間に成り立つ関係式を用いて、次の $3$ つの条件が同値であることを導きます。
($2^{\prime}$)行列 $A$ により定まる $K^{n}$ の線型変換 $A : K^{n} \to K^{n}$ がユニタリ変換であること。
($2$)行列 $A$ がユニタリ行列であることと。
- ($1$)$\Leftrightarrow$($2^{\prime}$)は、ユニタリ変換の性質により導くことができます。
- ($2^{\prime}$)$\Leftrightarrow$($2$)は、 定理 7.25(数ベクトル空間のユニタリ変換)より明らかといえます。
($1$)$\Leftrightarrow$($2^{\prime}$)の証明
線形写像の行列表示について成り立つ関係式
系 7.20(計量同型と数ベクトル空間)より、$n$ 次元計量ベクトル空間 $V$ と $K^{n}$ は計量同型であるから、$K^{n}$ から $V$ への計量同型写像が存在します。
いま、次のような $\phi : K^{n} \to V$ を考えると、$\phi$ は、$K^{n}$ の正規直交基底 $\bm{e}_{1}, \cdots, \bm{e}_{n}$ を $V$ の正規直交基底 $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ に移すので、計量同型写像であるといえます( 定理 7.18(計量同型写像と正規直交基底))。
$$ \begin{align*} \phi(\bm{e}_{i}) = \bm{v}_{i} && (\, 1 \leqslant i \leqslant n \,) \end{align*} $$このとき、線型変換 $f_{A}$ の $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ に関する行列表示が $A$ であることから、$A$ を $K^{n}$ から $K^{n}$ への線型変換と考えれば、$2$ つの線型変換 $f_{A}$ と $A$ の関係は次のように表すことができます( 可換図式による表現を参照)。

- 可換図式の異なる経路の写像の合成は等しくなるので、$V$ の線型変換 $f_{A}$ と $K^{n}$ の線型変換 $A$ の間には、次の関係式が成り立つことがわかります。$$ \begin{gather*} f_{A} = \phi \circ A \circ \phi^{-1} \\ A = \phi^{-1} \circ f_{A} \circ \phi \\ \end{gather*} $$
ユニタリ変換に対応するユニタリ変換
上記の考察より、$\phi$ は計量同型写像であるので、$\phi^{-1}$ も計量同型写像となります。
- このことは、 計量同型写像の定義と 定理 4.14(同型写像の逆写像)から明らかといえます。
また、計量同型写像の積もまた計量同型写像となります。
- このことも、 計量同型写像の定義と 定理 4.13(同型写像の合成)から明らかといえます。
したがって、$f_{A}$ がユニタリ変換であるとすると、次の式により、$A$ もユニタリ変換となります。
$$ \begin{gather*} A = \phi^{-1} \circ f_{A} \circ \phi \\ \end{gather*} $$また、逆に $A$ がユニタリ変換であるとすると、次の式により、$f_{A}$ もユニタリ変換となります。
$$ \begin{gather*} f_{A} = \phi \circ A \circ \phi^{-1} \\ \end{gather*} $$つまり、($1$)$f_{A}$ がユニタリ変換であることと($2^{\prime}$)$A$ がユニタリ変換であることとは同値であるといえます。
($2^{\prime}$)$\Leftrightarrow$($2$)の証明
- ここまで、$A : K^{n} \to K^{n}$ を、行列 $A$ により定まる $K^{n}$ の線型変換として扱ってきました。すなわち、線型変換 $A$ の、$K^{n}$ の標準基底に関する行列表示は $A$ に他なりません。
- 定理 7.25(数ベクトル空間のユニタリ変換)より、数ベクトル空間 $K^{n}$ において、線型変換がユニタリ変換であることと、その表現行列がユニタリ行列であることは同値です。
- したがって、($2^{\prime}$)$K^{n}$ の線型変換 $A$ がユニタリ変換であることと($2$)その表現行列 $A$ がユニタリ行列であることは同値であるといえます。
証明のまとめ
- 以上から、 ($1$)$\Leftrightarrow$($2^{\prime}$)および ($2^{\prime}$)$\Leftrightarrow$($2$)が成り立つので、($1$)$\Leftrightarrow$($2$)が成り立つことが示されました。
まとめ
- $V$ を $n$ 次元の計量ベクトル空間として、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ を $V$ の正規直交基底とする。このとき、$V$ の線型変換 $f_{A} : V \to V$ の正規直交基底 $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ 関する行列表示を $A$ とすると、次の $2$ つの条件は同値である。
($2$)$A$ はユニタリ行列である。
- 線型変換 $f$ がユニタリ変換であるための条件について、次の $6$ つの条件は互いに同値である。
$\,$($\text{ii}$)$f$ は内積の値を保存する。
($\text{iii}$)$f$ はノルムの値を保存する。
($\text{iv}$)$f$ は正規直交基底を正規直交基底に移す。
$\,$($\text{v}$)$f$ の表現行列の列ベクトルは正規直交基底をなす。
($\text{vi}$)$f$ の表現行列がユニタリ行列である。
参考文献
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