点と直線の距離(2)

平面上の点と直線の距離を与える公式を導きます。

ここでは、法線ベクトルを用いたベクトル方程式により直線が与えられたとき、平面上の任意の点と直線の距離を与える公式を導きます。また、ベクトルで表現された点と直線の距離の公式が、座標系が与えられている場合の(一次方程式で表現された)公式と対応することを確かめます。

点と直線の距離(法線ベクトル)

まず、平面上の直線が法線ベクトルに関するベクトル方程式によって与えられている場合について、点と直線の距離の公式を示します。



定理 1.11(平面上の点と直線の距離(法線ベクトル))

平面上の直線 ll がベクトル方程式 (xx0)b=0(\bm{x} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} = 0 により与えられているとする。このとき、平面上の点 X1X_{1} の位置ベクトルを x1\bm{x}_{1} とすると、点 X1X_{1} と直線 ll の距離 dd は次の式により与えられる。

d=  (x1x0)b  bvp1 \begin{equation*} \tag{1.3.8} d = \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \; \big\rvert \,}{\, \lVert \, \bm{b} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ \end{equation*}



解説

方向ベクトルによる点と直線の距離の公式

(1.3.8)式は平面上の任意の点と直線の距離を与える公式であり、法線ベクトルに関するベクトル方程式により直線が与えられている場合に用いることができます。

平面上の直線の方程式の項に示した通り、直線を与えるベクトル方程式は(11方向ベクトルによるものと(22法線ベクトルによるものがあります。

定理 1.11(平面上の点と直線の距離(法線ベクトル))は(22法線ベクトルの場合に対応する公式です。(11方向ベクトルを用いたベクトル方程式により直線が与えられている場合の公式については、 前項 に示した通りです。

点と直線の距離を定めるベクトル

(1.3.8)式より、点と直線の距離は、点 X1X_{1} の位置ベクトル x1\bm{x}_{1} と直線 ll を定めるベクトル(x0\bm{x}_{0}b\bm{b})により定まることがわかります。

X1X_{1} と直線 ll の距離 dd は、次のように図示されます。

法線ベクトルに関するベクトル方程式により直線が与えられている場合の点と直線の距離の公式

上図において、点 X1X_{1} から直線 ll に下ろした垂線の足を X1X_{1}^{\prime} とすると、点 X1X_{1} と直線 ll の距離 dd は線分 X1X1X_{1} X_{1}^{\prime} の長さに他なりません。すなわち、d=X1X1d = X_{1} X_{1}^{\prime} であり、X1X_{1}^{\prime} の位置ベクトルを x1\bm{x}_{1}^{\prime} とすれば、d=x1x1d = \lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime} \, \rVert となります。

ただし、垂線の足 X1X_{1}^{\prime} の位置ベクトル x1\bm{x}_{1}^{\prime} は、点と直線の距離を定める公式(1.3.8)式には表れません。これは、点 X1X_{1} と直線 ll が定まっていれば、X1X_{1} から ll に下ろした垂線の足が(自ずから)ただ 11 つに定まるためです。

点と直線の距離の公式の拡張(平面から空間)

直線が方向ベクトルにより与えられている場合

前項において、方向ベクトルに関するベクトル方程式により直線が与えられているとき、平面上の点と直線の距離を与える公式((1.3.6)式)は、空間上の点と直線の距離についても成り立つことに触れました(公式の違いと使い分け)。

d=  αx1+βy1+γ  α2+β2VP1(1.3.7) \begin{equation*} d = \displaystyle \frac{\, \lvert \; \alpha x_{1} + \beta y_{1} + \gamma \; \rvert \,}{\, \sqrt{\, {\alpha}^{2} + {\beta}^{2} \vphantom{ {\bm{VP}}^{1} } \,} \,} \end{equation*} \tag{1.3.7}

すなわち、方向ベクトルに関するベクトル方程式により直線が与えられている場合、平面上の点と直線の距離を与える公式((1.3.6)式)は、空間上においても点と直線の距離を与える公式として、そのまま用いることができます。

直線が法線ベクトルにより与えられている場合

これに対して、平面上の直線が法線ベクトルに関するベクトル方程式により与えられている場合、このような対応関係は成り立ちません。

平面において直線を与えるベクトル方程式 (xx0)b=0(\bm{x} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} = 0 は、空間においては、法線ベクトル b\bm{b} と直交する平面を与える方程式となるためです。

したがって、この場合、平面において点と直線の距離を与える公式((1.3.8)式)は、空間においては、点と平面の距離を与える式になります。

d=  (x1x0)b  bvp1 \begin{equation*} \tag{1.3.8} d = \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \; \big\rvert \,}{\, \lVert \, \bm{b} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ \end{equation*}



証明(定理 1.11)

X1X_{1} から直線 ll に下ろした垂線の足を X1X_{1}^{\prime} として、X1X_{1}^{\prime} の位置ベクトルを x1\bm{x}_{1}^{\prime} とする。このとき、垂線 X1X1X_{1} X_{1}^{\prime} が直線 ll に直交することと X1X_{1}^{\prime} が直線 ll 上の点であることから、x1\bm{x}_{1}^{\prime} に関して次が成り立つ。

{x1x1=tb(x1x0)b=0 \left\{ \begin{array} {c} \bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime} = t \bm{b} \\ (\bm{x}_{1}^{\prime} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} = 0 \end{array} \right.

したがって、

x1=x1(x1x0)bb2  b \bm{x}_{1}^{\prime} = \bm{x}_{1} - \displaystyle \frac{\, (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \,} \; \bm{b}

いま、d=x1x1d = \lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime} \, \rVert であることから、d2d^{2} は次のようになる。

d2=x1x12=x1x1+(x1x0)bb2  b2=(x1x0)bb2  b2={(x1x0)b}2b4  b2={(x1x0)b}2b2 \begin{split} d^{2} &= {\lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime} \, \rVert}^{2} \\ &= {\Big\lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{1} + \displaystyle \frac{\, (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \,} \; \bm{b} \, \Big\rVert}^{2} \\ &= {\Big\lVert \, \displaystyle \frac{\, (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \,} \; \bm{b} \, \Big\rVert}^{2} \\ &= \displaystyle \frac{\, \big\{ (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \big\}^{2} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{4} \,} \; {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \\ &= \displaystyle \frac{\, \big\{ (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \big\}^{2} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \,} \end{split}

また、d0d \geqslant 0 であるから、次が成り立つ。

d=  (x1x0)b  bvp1 \begin{gather*} d = \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \; \big\rvert \,}{\, \lVert \, \bm{b} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ \end{gather*} \tag*{\square}



証明の考え方(定理 1.11)

垂線の足 X1X_{1}^{\prime} の位置ベクトルを x1\bm{x}_{1}^{\prime} として(11x1\bm{x}_{1}^{\prime} を他の定数ベクトルで表し、(22d=x1x1d = \lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime} \, \rVert であることから、点と直線の距離を求めます。基本的な考え方は、前項定理 1.9(平面上の点と直線の距離(方向ベクトル))と同じです。

(1)垂線の足の位置ベクトルを求める

  • X1X_{1} から直線 ll に下ろした垂線の足を X1X_{1}^{\prime} として、X1X_{1}^{\prime} の位置ベクトル x1\bm{x}_{1}^{\prime} を求めます。

  • x1\bm{x}_{1}^{\prime} に関して成り立つ関係式を整理します。

    • 垂線 X1X1X_{1} X_{1}^{\prime} は直線 ll に直交します。したがって、ベクトル x1\bm{x}_{1}x1\bm{x}_{1}^{\prime} の差 x1x1\bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime} は直線 ll の法線ベクトル b\bm{b} と平行(同じ向きまたは逆の向き)になります。すなわち、x1x1\bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime}b\bm{b} のスカラー倍で表すことができ、x1x1=tb\bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime} = t \bm{b} となる tRt \in \mathbb{R} が存在します。
    • X1X_{1}^{\prime} が直線 ll 上の点です。したがって、x1\bm{x}_{1}^{\prime} は直線 ll を与えるベクトル方程式を満たします。すなわち、(x1x0)b=0(\bm{x}_{1}^{\prime} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} = 0 が成り立ちます。
    • これらをまとめると、次の\ast)式のようになります。これは、x1\bm{x}_{1}^{\prime}tt を未知数とする連立方程式のように捉えることができます。
      {x1x1=tb(x1x0)b=0() \left\{ \begin{array} {c} \bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime} = t \bm{b} \\ (\bm{x}_{1}^{\prime} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} = 0 \end{array} \right. \tag{\ast}
  • \ast)式を解いて x1\bm{x}_{1}^{\prime} を求めます。

    • 定理 1.4(内積の演算法則)より\ast)式の第 22 式は次のように変形できます。

      x1b=x0b \begin{gather*} \bm{x}_{1}^{\prime} \cdot \bm{b} = \bm{x}_{0} \cdot \bm{b} \end{gather*}

    • \ast)式の第 11 式の両辺のベクトルと法線ベクトル b\bm{b} の内積をとることで x1\bm{x}_{1}^{\prime} を消去し、まずは tt を求めます。ここでも、定理 1.4(内積の演算法則)x1b=x0b\bm{x}_{1}^{\prime} \cdot \bm{b} = \bm{x}_{0} \cdot \bm{b} であることを用います。

      x1bx1b=tbbx1bx0b=tb2t=x1bx0b(vp)b2t=(x1x0)bb2 \begin{gather*} & \bm{x}_{1} \cdot \bm{b} - \bm{x}_{1}^{\prime} \cdot \bm{b} = t \, \bm{b} \cdot \bm{b} \\ \Leftrightarrow & \bm{x}_{1} \cdot \bm{b} - \bm{x}_{0} \cdot \bm{b} = t \, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \\ \Leftrightarrow & t = \displaystyle \frac{\, \bm{x}_{1} \cdot \bm{b} - \bm{x}_{0} \cdot \bm{b} \vphantom{(\bm{vp})} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \,} \\ \Leftrightarrow & t = \displaystyle \frac{\, (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \,} \\ \end{gather*}

    • 上式を\ast)式の第 11 式に代入すると、x1\bm{x}_{1}^{\prime} が次のように求まります。

      x1=x1(x1x0)bb2  b \begin{gather*} \bm{x}_{1}^{\prime} = \bm{x}_{1} - \displaystyle \frac{\, (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \,} \; \bm{b} \end{gather*}

(2)点と直線の距離を求める

  • 11で求めた x1\bm{x}_{1}^{\prime} を用いて、d=x1x1d = \lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime} \, \rVert であることから、点と直線の距離を求めます。

  • まず、d2d^{\, 2} を求めます。

    d2=(i)x1x12=(ii)x1x1+(x1x0)bb2  b2=(iii)(x1x0)bb2  b2=(iv){(x1x0)b}2b4  b2=(v){(x1x0)b}2b2 \begin{align*} d^{\, 2} &\overset{(\text{i})}{=} {\lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{1}^{\prime} \, \rVert}^{2} \\ &\overset{(\text{ii})}{=} {\Big\lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{1} + \displaystyle \frac{\, (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \,} \; \bm{b} \, \Big\rVert}^{2} \\ &\overset{(\text{iii})}{=} {\Big\lVert \, \displaystyle \frac{\, (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \,} \; \bm{b} \, \Big\rVert}^{2} \\ &\overset{(\text{iv})}{=} \displaystyle \frac{\, \big\{ (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \big\}^{2} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{4} \,} \; {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \\ &\overset{(\text{v})}{=} \displaystyle \frac{\, \big\{ (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \big\}^{2} \,}{\, {\lVert \, \bm{b} \, \rVert}^{2} \,} \tag{\ast \ast} \end{align*}

    • i\text{i}内積の定義より、ベクトル x\bm{x} の長さについて v=vvvp1\lVert \, \bm{v} \, \rVert = \sqrt{\, \bm{v} \cdot \bm{v} \vphantom{\bm{vp}^{1}} \,} が成り立つことから、v2=vvvp1{\lVert \, \bm{v} \, \rVert}^{2} = \bm{v} \cdot \bm{v} \vphantom{\bm{vp}^{1}} となります。
    • ii\text{ii}11で求めた x1\bm{x}_{1}^{\prime} を代入します。
    • iii\text{iii})式を整理すると、d2d^{\, 2}22 つのベクトル x1x0\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}b\bm{b}(いずれも定数ベクトル)により表せることがわかります。
    • iv\text{iv}定理 1.4(内積の演算法則)より、cv2=c2v2vp1{\lVert \, c \, \bm{v} \, \rVert}^{2} = c^{2} \, {\lVert \, \bm{v} \, \rVert}^{2} \vphantom{\bm{vp}^{1}} が成り立ちます。
    • v\text{v})更に式を整理すると、d2d^{\, 2}22 つのベクトル x1x0\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}b\bm{b} の内積と、b\bm{b} の長さの 22 乗により表せることがわかります。
  • 次に、dd を求めます。

    • d0d \geqslant 0 であるので、dd\ast \ast)式の正の平方根であり、次のようになります。
      d={(x1x0)b}2bvp1=  (x1x0)b  bvp1 \begin{split} d &= \displaystyle \frac{\, \sqrt{\, \big\{ (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \big\}^{2} \,} \,}{\, \lVert \, \bm{b} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ &= \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \; \big\rvert \,}{\, \lVert \, \bm{b} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ \end{split}
  • 以上から、点と直線の距離に関する公式(1.3.8)式が導かれました。


点と直線の距離(座標変数)

次に、直交座標系が与えられており、平面上の直線が座標変数の一次方程式によって表される場合について、点と直線の距離の公式を示します。

以下に示す定理 1.10(平面上の点と直線の距離(座標変数))は、前項で既に証明済みです。ここでは、定理 1.10定理 1.11(平面上の点と直線の距離(法線ベクトル))が同じものであることを確かめます。



定理 1.10(平面上の点と直線の距離(座標変数))

平面上に直交座標系が与えられており、直線 llxxyy の一次方程式 αx+βy+γ=0\alpha x + \beta y + \gamma = 0 により与えられているとする。このとき、平面上の点 X1X_{1} の座標を (x1,y1)(x_{1}, y_{1}) とすると、点 X1X_{1} と直線 ll の距離 dd は次の式により与えられる。

d=  αx1+βy1+γ  α2+β2VP1(1.3.7) \begin{equation*} d = \displaystyle \frac{\, \lvert \; \alpha x_{1} + \beta y_{1} + \gamma \; \rvert \,}{\, \sqrt{\, {\alpha}^{2} + {\beta}^{2} \vphantom{ {\bm{VP}}^{1} } \,} \,} \end{equation*} \tag{1.3.7}



解説

座標変数による点と直線の距離の公式

平面上に直交座標系が与えられているとき、直線 ll の方程式は 22 つの変数(座標変数) x,yx, y に関する一次方程式 αx+βy+γ=0\alpha x + \beta y + \gamma = 0 の形で表すことができます。

平面上の点 X1X_{1} の座標を (x1,y1)(x_{1}, y_{1}) とすると、点 X1X_{1} と直線 ll の距離 dd は、上記の(1.3.7)式で与えられることが知られています。これは、高校数学において、図形と方程式等の問題でよく用いられる公式です。

ベクトルによる点と直線の距離の公式との対応

ベクトルによる点と直線の距離の公式(1.3.8)式と、座標変数による点と直線の距離の公式(1.3.7)式は、本質的に同じものです。このことは、下記の証明からも明らかといえます。すなわち、定理 1.10(平面上の点と直線の距離(座標変数))は、定理 1.11(平面上の点と直線の距離(法線ベクトル))から直ちに導くことができます。

公式の違いと使い分け

これまで、平面上の点と直線の距離を与える公式を 33 つ示してきました。これらの公式はあくまで等価なものであり、平面上の直線がどのような形式で与えられているかによって使い分けることが重要です。

点と直線の距離を与える 33 つの公式を改めて整理すると、次の通りです。

定理 1.9(平面上の点と直線の距離(方向ベクトル))
  • 平面上の直線:方向ベクトルに関するベクトル方程式

    x=x0+ta \begin{gather*} \bm{x} = \bm{x}_{0} + t \bm{a} \end{gather*}

  • 点と直線の距離の公式:

    d=x1x02a2{(x1x0)a}2avp1 \begin{equation*} \tag{1.3.6} d = \displaystyle \frac{\, \sqrt{\, {\lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{0} \, \rVert}^{2} {\lVert \, \bm{a} \, \rVert}^{2} - \big\{ (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{a} \big\}^{2} \,} \,}{\, \lVert \, \bm{a} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ \end{equation*}

定理 1.11(平面上の点と直線の距離(法線ベクトル))
  • 平面上の直線:法線ベクトルに関するベクトル方程式

    (xx0)b=0 \begin{gather*} (\bm{x} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} = 0 \end{gather*}

  • 点と直線の距離の公式:

    d=  (x1x0)b  bvp1 \begin{equation*} \tag{1.3.8} d = \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \; \big\rvert \,}{\, \lVert \, \bm{b} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ \end{equation*}

定理 1.10(平面上の点と直線の距離(座標変数))
  • 平面上の直線:座標変数に関する一次方程式

    αx+βy+γ=0 \begin{gather*} \alpha x + \beta y + \gamma = 0 \end{gather*}

  • 点と直線の距離の公式:

    d=  αx1+βy1+γ  α2+β2VP1(1.3.7) \begin{equation*} d = \displaystyle \frac{\, \lvert \; \alpha x_{1} + \beta y_{1} + \gamma \; \rvert \,}{\, \sqrt{\, {\alpha}^{2} + {\beta}^{2} \vphantom{ {\bm{VP}}^{1} } \,} \,} \end{equation*} \tag{1.3.7}



証明(定理 1.10)

直線 ll 上の点 X0X_{0} の座標を (x0,y0)(x_{0}, y_{0}) とすると、X0X_{0} が直線 ll 上にあることから、次が成り立つ。

αx0+βy0+γ=0 \begin{gather*} \alpha x_{0} + \beta y_{0} + \gamma = 0 \end{gather*}

また、X0X_{0} の位置ベクトルを x0\bm{x}_{0}、直線 ll の法線ベクトルを b\bm{b} とすると、22 つのベクトル x1x0\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}b\bm{b} はそれぞれ次のように成分表示できる。

x1x0=(x1x0y1y0),b=(αβ) \begin{array} {cc} \bm{x}_{1} - \bm{x}_{0} = \begin{pmatrix} \, x_{1} - x_{0} \, \\ \, y_{1} - y_{0} \, \end{pmatrix}, &\bm{b} = \begin{pmatrix} \, \alpha \, \\ \, \beta \, \end{pmatrix} \end{array}

このとき、定理 1.11(平面上の点と直線の距離(法線ベクトル))より次が成り立つ。

d=  (x1x0)b  bvp1=  α(x1x0)+β(y1y0)  α2+β2VP1=  αx1+βy1(αx0+βy0)  α2+β2VP1 \begin{align*} d &= \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \; \big\rvert \,}{\, \lVert \, \bm{b} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ &= \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; \alpha \, (x_{1} - x_{0}) + \beta \, (y_{1} - y_{0}) \; \big\rvert \,}{\, \sqrt{\, \alpha^{2} + \beta^{2} \vphantom{{\bm{VP}}^{1}} \,} \,} \\ &= \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; \alpha x_{1} + \beta y_{1} - (\alpha x_{0} + \beta y_{0}) \; \big\rvert \,}{\, \sqrt{\, \alpha^{2} + \beta^{2} \vphantom{{\bm{VP}}^{1}} \,} \,} \\ \end{align*}

ここで、X0X_{0} は直線 ll 上の点であり αx0+βy0+γ=0\alpha x_{0} + \beta y_{0} + \gamma = 0 であるから、

d=  αx1+βy1+γ  α2+β2VP1 \begin{gather*} \tag*{\square} d = \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; \alpha x_{1} + \beta y_{1} + \gamma \; \big\rvert \,}{\, \sqrt{\, \alpha^{2} + \beta^{2} \vphantom{{\bm{VP}}^{1}} \,} \,} \end{gather*}



証明の考え方(定理 1.10)

定理 1.11(平面上の点と直線の距離(法線ベクトル))から直ちに示すことができます。(1.3.8)式に現れる 22 つのベクトル x1x0\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}b\bm{b} を成分表示することで(1.3.7)式が得られます。

直線 ll が座標変数の一次方程式 αx+βy+γ=0\alpha x + \beta y + \gamma = 0 で与えられているとき、直線 ll の法線ベクトル b\bm{b} は次のように成分表示できることを用います(ベクトル方程式と一次方程式の対応(法線ベクトル))。

b=(αβ) \begin{gather*} \bm{b} = \begin{pmatrix} \, \alpha \, \\ \, \beta \, \end{pmatrix} \end{gather*}


まとめ

  • 平面上の直線 ll がベクトル方程式 (xx0)b=0(\bm{x} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} = 0 により与えられているとする。平面上の点 X1X_{1} の位置ベクトルを x1\bm{x}_{1} とすると、点 X1X_{1} と直線 ll の距離 dd は次の式により与えられる。

    d=  (x1x0)b  bvp1 \begin{equation*} d = \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \; \big\rvert \,}{\, \lVert \, \bm{b} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ \end{equation*}

  • 平面上に直交座標系が与えられており、直線 llxxyy の一次方程式 αx+βy+γ=0\alpha x + \beta y + \gamma = 0 により与えられているとする。平面上の点 X1X_{1} の座標を (x1,y1)(x_{1}, y_{1}) とすると、点 X1X_{1} と直線 ll の距離 dd は次の式により与えられる。

    d=  αx1+βy1+γ  α2+β2VP1 \begin{equation*} d = \displaystyle \frac{\, \lvert \; \alpha x_{1} + \beta y_{1} + \gamma \; \rvert \,}{\, \sqrt{\, {\alpha}^{2} + {\beta}^{2} \vphantom{ {\bm{VP}}^{1} } \,} \,} \end{equation*}



参考文献

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[11] S. Lang. Algebra Revised Third Edition. Springer. 2005.
[12] M. Artin. Algebra Second Edition. Pearson Education Limited. 2014.
[13] 青本和彦 他. 数学入門辞典. 岩波書店. 2005.

初版:2023-08-27   |   改訂:2024-12-12