零行列をブロックにもつ行列の行列式 - 2通りの証明と解説

行列式の性質(6)

零行列をブロックとして含む行列の行列式は、零行列に隣り合う 22 つのブロック行列の行列式の積に等しくなります。

次項以降、この定理に基づき、00 を含む特定の形状をもった行列の行列式の性質に関する定理を示します。

零行列をブロックに持つ行列の行列式


定理 3.16(零行列をブロックに持つ行列の行列式)

AAmm 次の正方行列、BBnn 次の正方行列とすると、次が成り立つ。

  AC    OB  =AB \begin{equation} \tag{3.5.14} \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & B \; \end{vmatrix} = \vert \, A \, \vert \cdot \vert \, B \, \vert \end{equation}



解説

行列式の分解(零行列をブロックとして含む行列)

定理 3.16(零行列をブロックに持つ行列の行列式)は、ある行列が零行列をブロックとして持つ場合、その行列式が零行列に隣り合う 22 つの行列の行列式の積の形に分解できることを示しています。

(3.5.14)式において、左辺の行列は、行列の区分けにより、mm 次の正方行列 AA(m,n)(m, n) 型の行列 CC(n,m)(n, m) 型の零行列 OOnn 次の正方行列 BB44 つのブロックに分けて表されています。したがって、(3.5.14)式の左辺は (m+n)(m + n) 次正方行列の行列式であり、右辺は mm 次正方行列の行列式と nn 次正方行列の行列式の積です。

定理 3.16の証明方法

定理 3.16(零行列をブロックに持つ行列の行列式)の証明の仕方は何通りか考えられますが、ここでは主なものとして、次の 22 通りを示します。

11)行列式の定義による証明に比べて、22)写像としての行列式の性質を利用した証明の方が簡潔です。ただし、先立って系 3.17を示しておく必要があり、11)行列式の定義による証明もそこまで複雑ではないため、22)写像としての行列式の性質を利用した証明を採用するメリットは小さいです。

なお、ここでは定理 3.16の系として系 3.17を導出します(次項を参照)。22)写像としての行列式の性質を利用した証明を採用する場合、系 3.17を行列式の定義にしたがって示す必要があります。



証明 1(行列式の定義による方法)

X=  AC    OB  =(xij)X = \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & B \; \end{vmatrix} = (\, x_{ij} \,) と置くと、行列式の定義より次が成り立つ。

X=σSm+nsgn(σ)  x1σ(1)xmσ(m)x(m+1)σ(m+1)x(m+n)σ(m+n) \begin{align*} \begin{split} \vert \, X \, \vert &= \sum_{\sigma \in S_{m+n}} \text{sgn} (\sigma) \; x_{1 \, \sigma(1)} \, \cdots \, x_{m \, \sigma(m)} \, x_{(m+1) \, \sigma(m+1)} \, \cdots \, x_{(m+n) \, \sigma(m+n)} \\ \end{split} \end{align*}

仮定より、m+1im+nm+1 \leqslant i \leqslant m+n のとき、1σ(i)m1 \leqslant \sigma(i) \leqslant m ならば xiσ(i)=0x_{i \, \sigma(i)} = 0 となるから、和は m+1σ(i)m+nm+1 \leqslant \sigma(i) \leqslant m+n の場合のみ考えればよい。このとき、σ\sigma は全単射であるから、1im1 \leqslant i \leqslant m ならば 1σ(i)m1 \leqslant \sigma(i) \leqslant m となる。すなわち、τ\tau{1,,m}\lbrace 1, \cdots, m \rbrace 上の置換、ρ\rho{m+1,,m+n}\lbrace m+1, \cdots, m+n \rbrace 上の置換として、σ=τρ\sigma = \tau \rho が成り立つ。したがって、

X=τSmρSnsgn(τρ)  x1τ(1)xmτ(m)x(m+1)ρ(m+1)x(m+n)ρ(m+n)=τSmsgn(τ)  x1τ(1)xmτ(m)  ρSnsgn(ρ)  xm+1ρ(m+1)xm+nρ(m+n)=AB \begin{align*} \begin{split} \vert \, X \, \vert &= \sum_{\tau \in S_{m}} \sum_{\rho \in S_{n}} \text{sgn} (\tau \rho) \; x_{1 \, \tau(1)} \, \cdots \, x_{m \, \tau(m)} \, x_{(m+1) \, \rho(m+1)} \, \cdots \, x_{(m+n) \, \rho(m+n)} \\ &= \sum_{\tau \in S_{m}} \text{sgn} (\tau) \; x_{1 \, \tau(1)} \, \cdots \, x_{m \, \tau(m)} \; \sum_{\rho \in S_{n}} \text{sgn} (\rho) \; x_{m+1 \, \rho(m+1)} \, \cdots \, x_{m+n \, \rho(m+n)} \\ &= \vert \, A \, \vert \cdot \vert \, B \, \vert \quad \quad \quad \square \end{split} \end{align*}


証明の考え方 1

置換が全単射であることを用いて(11(m+n)(m + n) 次の置換 σ\sigmamm 次の置換 τ\taunn 次の置換 ρ\rho に分割し、行列式の定義にしたがって(22)零行列 OO をブロックに含む行列 XX の行列式を 22 つの行列式の積に分解します。

置換の分割はやや複雑でが、行列式に零行列 OO のブロックが含まれることと σ\sigma が全単射であることから着想を得ます。

前提事項の整理

  • X=  AC    OB  =(xij)X = \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & B \; \end{vmatrix} = (\, x_{ij} \,) と置きます。
  • XX(m+n)(m + n) 次の正方行列であり、行列式の定義にしたがって書き下すと、次のようになります。
    X=σSm+nsgn(σ)  x1σ(1)xmσ(m)x(m+1)σ(m+1)x(m+n)σ(m+n) \begin{align*} \vert \, X \, \vert = \sum_{\sigma \in S_{m+n}} \text{sgn} (\sigma) \; x_{1 \, \sigma(1)} \, \cdots \, x_{m \, \sigma(m)} \, x_{(m+1) \, \sigma(m+1)} \, \cdots \, x_{(m+n) \, \sigma(m+n)} \\ \end{align*}

(1)置換の分割

  • 定理の仮定(与えられた XX の形)より、σSm+n\sigma \in S_{m+n} に関する和を見直します。
  • 行列式 XX(m+n)(m + n) 次の置換全体にわたる和になりますが、XX は零行列 OO をブロックとして含むため、いくつかの項は 00 に等しくなり和に含めなくて良くなるはずです。
  • XX の行番号を ii として、xiσ(i)=0x_{i \, \sigma(i)} = 0 となるか否か、次のように場合分けして考えます。
m+1im+nm+1 \leqslant i \leqslant m+n の場合
  • XX の左下のブロックは零行列 OO なので、XX(i,j)(i, j) 成分 xijx_{ij} について、m+1im+nm+1 \leqslant i \leqslant m+n かつ 1jm1 \leqslant j \leqslant m であるならば xij=0x_{ij} = 0 となります。

    • これは、定理の仮定(与えられた行列 XX の形)によります。
  • よって、m+1im+nm+1 \leqslant i \leqslant m+n かつ 1σ(i)m1 \leqslant \sigma(i) \leqslant m ならば xiσ(i)=0x_{i \, \sigma(i)} = 0 となり、このとき、次が成り立ちます。

    sgn(σ)  x1σ(1)xiσ(i)x(m+n)σ(m+n)=0 \begin{gather*} \text{sgn} (\sigma) \; x_{1 \, \sigma(1)} \, \cdots \, x_{i \, \sigma(i)} \, \cdots \, x_{(m+n) \, \sigma(m+n)} = 0 \end{gather*}

  • つまり、このような場合は、行列式の和の計算に含めなくて良いということです。

  • したがって、m+1im+nm+1 \leqslant i \leqslant m+n かつ m+1σ(i)m+nm+1 \leqslant \sigma(i) \leqslant m+n となる場合のみ行列式の和を計算すればよい、ということがわかります。

1im1 \leqslant i \leqslant m の場合
  • 上記の考察から、m+1im+nm+1 \leqslant i \leqslant m+n ならば m+1σ(i)m+nm+1 \leqslant \sigma(i) \leqslant m+n となる場合しか行列式の和の計算に含めないこととしました。
    • iim+1m+nm+1 \sim m+n の範囲にあれば、σ(i)\sigma(i)m+1m+nm+1 \sim m+n の範囲にある場合しか考えないということです。
    • 集合として {σ(m+1),,σ(m+n)}={m+1,,m+n}\lbrace \sigma(m+1), \cdots, \sigma(m+n) \rbrace = \lbrace m+1, \cdots, m+n \rbrace の場合のみ考えるとしても同じです。
  • ここで、置換 σ\sigma は、定義により全単射となります(置換の定義)。
  • したがって、iim+1m+nm+1 \sim m+n の範囲にあれば σ(i)\sigma(i)m+1m+nm+1 \sim m+n の範囲にあるということは、逆に、ii1m1 \sim m の範囲にあれば σ(i)\sigma(i)1m1 \sim m の範囲になければならないということです。
  • すなわち、1im1 \leqslant i \leqslant m かつ 1σ(i)m1 \leqslant \sigma(i) \leqslant m となる場合のみ、行列式の和を計算すればよいということです。
  • 以上から、XX の行列式の計算において、(m+n)(m + n) 次の置換 σ\sigmamm 次の置換 τ\taunn 次の置換 ρ\rho に分割できることがわかりました。つまり、σ=τρ\sigma = \tau \rho となります。

(2)行列式の分解

  • 上記の考察から、XX の行列式を計算する際、σSm+n\sigma \in S_{m+n} に関する和は τSm\tau \in S_{m} に関する和と ρSn\rho \in S_{n} に関する和に分割でき、次のようになります。

    A=(i)σSm+nsgn(σ)  x1σ(1)xmσ(m)x(m+1)σ(m+1)x(m+n)σ(m+n)=(ii)τSmρSnsgn(τρ)  x1τ(1)xmτ(m)x(m+1)ρ(m+1)x(m+n)ρ(m+n)=(iii)τSmsgn(τ)  x1τ(1)xmτ(m)  ρSnsgn(ρ)  xm+1ρ(m+1)xm+nρ(m+n)=(iv)τSmsgn(τ)  a1τ(1)amτ(m)  ρSnsgn(ρ)  b1ρ(1)bnρ(n)=(v)AB \begin{split} \vert \, A \, \vert &\overset{(\text{i})}{=} \sum_{\sigma \in S_{m+n}} \text{sgn} (\sigma) \; x_{1 \, \sigma(1)} \, \cdots \, x_{m \, \sigma(m)} \, x_{(m+1) \, \sigma(m+1)} \, \cdots \, x_{(m+n) \, \sigma(m+n)} \\ &\overset{(\text{ii})}{=} \sum_{\tau \in S_{m}} \sum_{\rho \in S_{n}} \text{sgn} (\tau \rho) \; x_{1 \, \tau(1)} \, \cdots \, x_{m \, \tau(m)} \, x_{(m+1) \, \rho(m+1)} \, \cdots \, x_{(m+n) \, \rho(m+n)} \\ &\overset{(\text{iii})}{=} \sum_{\tau \in S_{m}} \text{sgn} (\tau) \; x_{1 \, \tau(1)} \, \cdots \, x_{m \, \tau(m)} \; \sum_{\rho \in S_{n}} \text{sgn} (\rho) \; x_{m+1 \, \rho(m+1)} \, \cdots \, x_{m+n \, \rho(m+n)} \\ &\overset{(\text{iv})}{=} \sum_{\tau \in S_{m}} \text{sgn} (\tau) \; a_{1 \, \tau(1)} \, \cdots \, a_{m \, \tau(m)} \; \sum_{\rho \in S_{n}} \text{sgn} (\rho) \; b_{1 \, \rho(1)} \, \cdots \, b_{n \, \rho(n)} \\ &\overset{(\text{v})}{=} \vert \, A \, \vert \cdot \vert \, B \, \vert \\ \end{split}

    • i\text{i}行列式の定義の通りです。
    • ii\text{ii})(iii\text{iii}sgn(τρ)=sgn(τ)  sgn(ρ)\text{sgn} (\tau \rho) = \text{sgn} (\tau) \; \text{sgn} (\rho) であることを用いて、σSm+n\sigma \in S_{m+n} に関する和を、τSm\tau \in S_{m} に関する和と ρSn\rho \in S_{n} に関する和に分割しています。
    • iv\text{iv}XX の成分を A,BA, B の成分として表し直しています。すなわち、定理の仮定(与えられた行列 XX の形)より、次が成り立ちます。
      x1τ(1)xmτ(m)=a1τ(1)amτ(m)xm+1ρ(m+1)xm+nρ(m+n)=b1ρ(1)bnρ(n) \begin{align*} x_{1 \, \tau(1)} \, \cdots \, x_{m \, \tau(m)} &= a_{1 \, \tau(1)} \, \cdots \, a_{m \, \tau(m)} \\ x_{m+1 \, \rho(m+1)} \, \cdots \, x_{m+n \, \rho(m+n)} &= b_{1 \, \rho(1)} \, \cdots \, b_{n \, \rho(n)} \end{align*}
  • 以上から、X=AB\vert \, X \, \vert = \vert \, A \, \vert \cdot \vert \, B \, \vert となり、題意が示されました。



証明 2(写像としての行列式の性質を利用した証明)

bj\bm{b}_{j}nn 項列ベクトルとして、B=(b1,b2,,bn)B = (\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}, \cdots, \bm{b}_{n}) と置き、FF を以下のような写像とする。

F(b1,b2,,bn)=  AC    OB   \begin{align*} F (\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}, \cdots, \bm{b}_{n}) = \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & B \; \end{vmatrix} \end{align*}

FF定理 3.14(写像としての行列式)の条件(i\text{i})、(ii\text{ii})、(iii\text{iii})を満たすので、以下が成り立つ。ここで、EnE_nnn 次の単位行列を表す。

F(b1,b2,,bn)=F(e1,e2,,en)B=  AC    OEn  B \begin{split} F (\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}, \cdots, \bm{b}_{n}) &= F (\bm{e}_{1}, \bm{e}_{2}, \cdots, \bm{e}_{n}) \cdot \vert \, B \, \vert \\ &= \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} \cdot \vert \, B \, \vert \\ \end{split}

ここで、CC の第 11 列から第 jj 列からなる行列を CjC_j として、系 3.17(00 を含む行列の行列式)を繰り返し用いると、次が成り立つ。

  AC    OEn  =  ACn    OEn  =  ACn1    OEn1      =A \begin{split} \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} &= \begin{vmatrix} \; A & C_n \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} \\ &= \begin{vmatrix} \; A & C_{n-1} \; \\ \; O & E_{n-1} \; \end{vmatrix} \\ &\; \; \vdots \\ &= \vert \, A \, \vert \\ \end{split}

したがって、

F(b1,b2,,bn)=AB \begin{align*} F (\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}, \cdots, \bm{b}_{n}) = \vert \, A \, \vert \cdot \vert \, B \, \vert \end{align*} \tag*{\square}



証明の考え方 2

11定理 3.14(写像としての行列式)の条件を満たす写像を定め(22)行列式を積の形に分解した上で、系 3.17(00 を含む行列の行列式)を用いて(33)次数下げを行います。

この方針で証明する場合、先立って系 3.17を示しておく必要があります。

(1)行列式写像の設定

  • まず、定理 3.14(写像としての行列式)33 つの条件を満たす写像 FF を設定します。

  • 写像 FF を以下のように置きます。

    F(b1,b2,,bn)=  AC    OB   \begin{align*} \begin{split} F (\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}, \cdots, \bm{b}_{n}) &= \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & B \; \end{vmatrix} \end{split} \end{align*}

    • 前提として、定理 3.14の対象となる写像は、nn 個の nn 項列ベクトルに対してある数を対応させる写像(F:Kn××KnKF : K^n \times \cdots \times K^n \to K)のような写像です。
    • 写像 FF において、行列 B=(b1,b2,,bn)B = (\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}, \cdots, \bm{b}_{n}) を変数、行列 AA を定数のように扱っています。
  • FF の置き方より、直ちに次の関係式が得られます。

    F(e1,e2,,en)=  AC    OEn   \begin{align*} F (\bm{e}_{1}, \bm{e}_{2}, \cdots, \bm{e}_{n}) = \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} \end{align*}

    • ここで、EnE_nnn 次の単位行列を指しています。

(2)行列式の分解

  • FF定理 3.14(写像としての行列式)を適用して、行列式を積の形に分解します。
  • FF定理 3.14の条件(i\text{i})、(ii\text{ii})、(iii\text{iii})を満たします。FF の置き方から、FF の像は (m+n)(m + n) 次の正方行列の行列式であり、当然、多重線型かつ交代的であるといえます。
  • したがって、次が成り立ち、B\vert \, B \, \vert の形が得られます。
    F(b1,b2,,bn)=F(e1,e2,,en)B=  AC    OEn  B \begin{split} F (\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}, \cdots, \bm{b}_{n}) &= F (\bm{e}_{1}, \bm{e}_{2}, \cdots, \bm{e}_{n}) \cdot \vert \, B \, \vert \\ &= \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} \cdot \vert \, B \, \vert \\ \end{split}

(3)次数下げ

  • 系 3.17(00 を含む行列の行列式)を用いて次数下げを行い、A\vert \, A \, \vert の形を抽出します。

  •   AC    OEn  \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} に対して、系 3.17を繰り返し適用することで、行列式の次数を下げます。

    •   AC    OEn  \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix}(m+n)(m + n) 行目に着目すると、11 列目から (m+n1)(m + n -1) 列目まではすべて 00 であり、(m+n)(m + n) 列目の成分が 11 であることがわかります。このとき、系 3.17より、次が成り立ちます。

        AC    OEn  =(i)  ACn    OEn  =(ii)  ACn1    OEn1   \begin{split} \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} &\overset{(\text{i})}{=} \begin{vmatrix} \; A & C_n \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} \\ &\overset{(\text{ii})}{=} \begin{vmatrix} \; A & C_{n-1} \; \\ \; O & E_{n-1} \; \end{vmatrix} \\ \end{split}

    • ここで、CC の第 11 列から第 jj 列まででできる行列を CjC_j と表します。

    • CC はもともと m×nm \times n の行列ですので、等号(i\text{i})は表記を変えただけです。等号(ii\text{ii})は、系 3.17により、CnC_{n}EnE_{n} の第 nn 列が削られて、次数が 11 つ下がったことを表しています。

    • 以上の操作を、(m+n1)(m + n - 1) 行目、(m+n2)(m + n - 2) 行目 \cdots、と続けていくと、m+nm + n から mm まで次数を下げることができます。

    • このとき、EnE_n に伴って CC は削り取られ、最終的に A\vert \, A \, \vert だけが残ります。

        AC    OEn  =  ACn    OEn  =  ACn1    OEn1      =A \begin{split} \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} &= \begin{vmatrix} \; A & C_n \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} \\ &= \begin{vmatrix} \; A & C_{n-1} \; \\ \; O & E_{n-1} \; \end{vmatrix}\\ &\; \; \vdots \\ &= \vert \, A \, \vert \\ \end{split}

  • したがって、F(B)=ABF (B) = \vert \, A \, \vert \cdot \vert \, B \, \vert が成り立ちます。

    F(b1,b2,,bn)=F(e1,e2,,en)B=  AC    OEn  B=AB \begin{split} F (\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}, \cdots, \bm{b}_{n}) &= F (\bm{e}_{1}, \bm{e}_{2}, \cdots, \bm{e}_{n}) \cdot \vert \, B \, \vert \\ &= \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & E_n \; \end{vmatrix} \cdot \vert \, B \, \vert \\ &= \vert \, A \, \vert \cdot \vert \, B \, \vert \\ \end{split}

  • ここで、F(b1,b2,,bn)=  AC    OB  F (\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}, \cdots, \bm{b}_{n}) = \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & B \; \end{vmatrix} であるので、これは(3.5.14)式に他なりません。

  • 以上から、題意が示されました。


まとめ

  • AAmm 次の正方行列、BBnn 次の正方行列とすると、次が成り立つ。
      AC    OB  =AB \begin{equation*} \begin{vmatrix} \; A & C \; \\ \; O & B \; \end{vmatrix} = \vert \, A \, \vert \cdot \vert \, B \, \vert \end{equation*}

参考文献

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初版:2022-12-09   |   改訂:2024-12-16