同型なベクトル空間の次元(1)

同型写像の基本的な性質に関する定理を導きます。すなわち、同型写像は、線型独立性や基底といったベクトル空間の性質を保存します。

これは、同型な 22 つのベクトル空間が構造的に同じものであるということを表す定理でもあり、同型なベクトル空間の次元に関する考察において重要です。

同型写像の基本的性質


定理 4.40(同型写像と線型独立性)

V,WV, W をベクトル空間とする。f:VWf : V \to W が同型写像ならば、次が成り立つ。

11v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} が線型独立であることと、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) が線型独立であることは同値である。
22v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV の基底であることと、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW の基底であることは同値である。



解説

同型写像の基本的性質(定理 4.40の主張)

定理 4.40(同型写像と線型独立性)は、線型独立性や基底といったベクトル空間の性質が同型写像により保存されることを示しています。

(1)同型写像は線型独立性を保存する

VVWW の間に同型写像 f:VWf : V \to W が存在するとき、次が成り立ちます。

  • v1,,vnV\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in V が線型独立であれば、同型写像 ff による v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} の像 f(v1),,f(vn)Wf(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) \in W もまた線型独立である。
  • w1,,wnW\bm{w}_{1}, \cdots, \bm{w}_{n} \in W が線型独立であれば、f(vi)=wif(\bm{v}_{i}) = \bm{w}_{i} (1in)(1 \leqslant i \leqslant n) を満たすような線型独立なベクトルの組 v1,,vnV\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in V が存在する。

これは、同型写像が線型独立性を保存することを意味しています。

ここで、定義より、同型写像は全単射であるため、同型写像 ffVV の元と WW の元を 1111 に対応させます(同型写像の定義)。したがって、w1,,wnW\bm{w}_{1}, \cdots, \bm{w}_{n} \in W に対して、f(vi)=wif(\bm{v}_{i}) = \bm{w}_{i} (1in)(1 \leqslant i \leqslant n) を満たすような v1,,vnV\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in V が存在することは、定理 4.40(同型写像と線型独立性)においては前提として扱ってよいことになります。

(2)同型写像は基底を保存する

同様に VVWW の間に同型写像 f:VWf : V \to W が存在するとき、次が成り立ちます。

  • v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV の基底であれば f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW の基底である。
  • w1,,wn\bm{w}_{1}, \cdots, \bm{w}_{n}WW の基底であれば、f(vi)=wif(\bm{v}_{i}) = \bm{w}_{i} (1in)(1 \leqslant i \leqslant n) を満たすようなベクトルの組 v1,,vnV\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in V が存在し、v1,,vnV\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in VVV の基底である。

これは、同型写像が基底を保存することを意味しています。

11)の場合と同様に、同型写像 ff が全単射であることから、w1,,wnW\bm{w}_{1}, \cdots, \bm{w}_{n} \in W に対して、f(vi)=wif(\bm{v}_{i}) = \bm{w}_{i} (1in)(1 \leqslant i \leqslant n) を満たすような v1,,vnV\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} \in V が存在することは、前提事項となります。

同型なベクトル空間の間の対応関係

22 つのベクトル空間 VVWW の間に同型写像が存在するということは、VVWW が互いに同型(VWV \simeq W)であるということに他なりません(同型写像の定義)。また、22 つのベクトル空間が同型であるというとき、それらはベクトル空間として構造的に同じものであるということを意味しています(ベクトル空間の同型)。

このように考えれば、定理 4.40(同型写像と線型独立性)は、VVWW が互いに同型であるとき、(11)線型独立な VV の元と線型独立な WW の元が 1111 に対応していること、(22VV 基底と WW 基底が 1111 に対応していること、をそれぞれ表していると理解することができます。



証明

11v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} が線型独立であるとき、c1f(v1)++cnf(vn)=0c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) = \bm{0} とすると、ff が線型写像であることから次が成り立つ。

c1f(v1)++cnf(vn)=0f(c1v1++cnvn)=0 \begin{alignat*} {2} && c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) &= \bm{0} \\ & \Leftrightarrow & f(c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n}) &= \bm{0} \end{alignat*}

ff は単射であるから Kerf={0}\text{Ker} f = \{\, \bm{0} \,\} であり、

f(c1v1++cnvn)=0c1v1++cnvn=0 \begin{alignat*} {2} && f( c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} ) &= \bm{0} \\ & \Rightarrow & c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} &= \bm{0} \end{alignat*}

ここで、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} は線型独立であるので c1==cn=0c_{1} = \cdots = c_{n} = 0 が成り立つ。よって、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) は線型独立である。逆に f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) が線型独立であるとき、c1v1++cnvn=0c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} = \bm{0} とすると、ff が線型写像であることから次が成り立つ。

c1v1++cnvn=0f(c1v1++cnvn)=0c1f(v1)++cnf(vn)=0 \begin{gather*} & c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} = \bm{0} \\ \Rightarrow & f(c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n}) = \bm{0} \\ \Rightarrow & c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) = \bm{0} \\ \end{gather*}

このとき、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) は線型独立であることから c1==cn=0c_{1} = \cdots = c_{n} = 0 が成り立つ。よって、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} は線型独立である。以上から、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} が線型独立であることと f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) が線型独立であることは同値である。


22)(11)より v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} が線型独立であることと f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) が線型独立であることは同値である。いま、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV を生成するとすれば、任意の vV\bm{v} \in Vv1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} の線型結合として表せる。また、ff が全射であることから任意の wW\bm{w} \in W に対して f(v)=wf(\bm{v}) = \bm{w} となるような v\bm{v} が存在し、次が成り立つ。

w=f(v)=f(c1v1++cnvn)=c1f(v1)++cnf(vn) \begin{split} \bm{w} &= f( \bm{v} ) \\ &= f( c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} ) \\ &= c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) \\ \end{split}

このとき、任意の wW\bm{w} \in Wf(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) の線型結合として表すことができるから、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW を生成する。逆に、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW を生成するとすれば、任意の wW\bm{w} \in Wf(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) の線型結合として表せる。また、ff は写像であるから、任意の vV\bm{v} \in V に対して f(v)=wf(\bm{v}) = \bm{w} となるような w\bm{w} が存在し、次が成り立つ。

f(v)=w=c1f(v1)++cnf(vn)=f(c1v1++cnvn) \begin{split} f( \bm{v} ) &= \bm{w} \\ &= c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) \\ &= f( c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} ) \\ \end{split}

いま、ff は単射であることから、

f(v)=f(c1v1++cnvn)v=c1v1++cnvn \begin{alignat*} {2} && f( \bm{v} ) &= f( c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} ) \\ & \Rightarrow & \bm{v} &= c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} \end{alignat*}

したがって、任意の vV\bm{v} \in Vv1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} の線型結合として表すことができ、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}WW を生成する。以上から、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV の基底であることと f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW の基底であることは同値である。\quad \square



証明の考え方

i\text{i}\simiv\text{iv})を次のように置いて、(i\text{i}\Leftrightarrowii\text{ii})、(iii\text{iii}\Leftrightarrowiv\text{iv})を示します。

  • i\text{i}): 「 v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} が線型独立である」
  • ii\text{ii}): 「 f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) が線型独立である」
  • iii\text{iii}): 「 v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV を生成する」
  • iv\text{iv}): 「 f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW を生成する」

それぞれの証明において、ff同型写像線型写像かつ全単射)であることを用います。

  • i\text{i}\Rightarrowii\text{ii})は ff線型写像かつ単射であることから、(i\text{i}\Leftarrowii\text{ii})は ff線型写像であることのみから示すことができます。
  • また、(iii\text{iii}\Rightarrowiv\text{iv})は ff線型写像かつ全射であることから、(iii\text{iii}\Leftarrowiv\text{iv})は ff線型写像かつ単射であることから示すことができます。

11)の証明

i\text{i}\Rightarrowii\text{ii})の証明
  • v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} が線型独立であるとして、定義にしたがって f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) が自明でない線型関係を持たない(自明な線型関係しか持たない)ことを確かめます。
  • f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) の線型関係 c1f(v1)++cnf(vn)=0c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) = \bm{0} について考えます。
    • ff が線型写像であることから次が成り立ちます。

      c1f(v1)++cnf(vn)=0f(c1v1++cnvn)=0 \begin{alignat*} {2} && c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) &= \bm{0} \\ & \Leftrightarrow & f(c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n}) &= \bm{0} \end{alignat*}

    • ff は単射であるから Kerf={0}\text{Ker} f = \{\, \bm{0} \,\} が成り立ちます(定理 4.12(線型写像と単射))。すなわち、単射 ff により 0W\bm{0} \in W に移る元は 0V\bm{0} \in V のみであるといえます。

      f(c1v1++cnvn)=0c1v1++cnvn=0 \begin{alignat*} {2} && f( c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} ) &= \bm{0} \\ & \Rightarrow & c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} &= \bm{0} \end{alignat*}

    • いま、仮定より v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} は線型独立であるので c1==cn=0c_{1} = \cdots = c_{n} = 0 が成り立ちます。

  • 以上から、c1f(v1)++cnf(vn)=0c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) = \bm{0} ならば c1==cn=0c_{1} = \cdots = c_{n} = 0 が成り立つので、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) が自明でない線型関係を持たない(自明な線型関係しか持たない)ことが示されました。
  • したがって、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) は線型独立であり、(i\text{i}\Rightarrowii\text{ii})が成り立ちます。
i\text{i}\Leftarrowii\text{ii})の証明
  • 逆に、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) が線型独立であるとして、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} が自明でない線型関係を持たない(自明な線型関係しか持たない)ことを確かめます。
  • v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} の線型関係 c1v1++cnvn=0c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} = \bm{0} について考えます。
    • ff が線型写像であることから次が成り立ちます。これは、線型写像は零ベクトルを零ベクトルに移すという線型写像の性質によります(定理 4.9(零ベクトルの像))。

      c1v1++cnvn=0f(c1v1++cnvn)=0c1f(v1)++cnf(vn)=0 \begin{gather*} & c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} = \bm{0} \\ \Rightarrow & f(c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n}) = \bm{0} \\ \Rightarrow & c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) = \bm{0} \\ \end{gather*}

    • いま、仮定より f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) は線型独立であるので c1==cn=0c_{1} = \cdots = c_{n} = 0 が成り立ちます。

  • 以上から、c1v1++cnvn=0c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} = \bm{0} ならば c1==cn=0c_{1} = \cdots = c_{n} = 0 が成り立つので、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} が自明でない線型関係を持たない(自明な線型関係しか持たない)ことが示されました。
  • したがって、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} は線型独立であり、(ii\text{ii}\Rightarrowi\text{i})が成り立ちます。

22)の証明

  • 11)において(i\text{i}) 「v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} が線型独立である」と(ii\text{ii}) 「f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) が線型独立である」の同値性が示されましたので、あとは(iii\text{iii}) 「v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV を生成する」と(iv\text{iv}) 「f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW を生成する」の同値性を示せばよいです。
iii\text{iii}\Rightarrowiv\text{iv})の証明
  • いま、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV を生成するとして、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW を生成することを導きます。

  • 仮定より、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV を生成するならば、任意の vV\bm{v} \in Vv1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} の線型結合として表せることになります(基底の定義)。

  • また、ff が全射であることから任意の wW\bm{w} \in W に対して f(v)=wf(\bm{v}) = \bm{w} となるような v\bm{v} が存在します。このとき、次が成り立ちます。

    w=f(v)=f(c1v1++cnvn)=c1f(v1)++cnf(vn) \begin{split} \bm{w} &= f( \bm{v} ) \\ &= f( c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} ) \\ &= c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) \\ \end{split}

  • すなわち、任意の wW\bm{w} \in Wf(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) の線型結合として表すことができるから、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW を生成するといえます。

  • したがって、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV の基底であれば f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW の基底であり、(iii\text{iii}\Rightarrowiv\text{iv})が成り立ちます。

iii\text{iii}\Leftarrowiv\text{iv})の証明
  • 逆に、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW を生成するとして、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV を生成することを導きます。
  • 仮定より、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW を生成するならば、任意の wW\bm{w} \in Wf(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) の線型結合として表せることになります(基底の定義)。
  • また、ff が写像であることから、任意の vV\bm{v} \in V に対して f(v)=wf(\bm{v}) = \bm{w} となるような w\bm{w} が存在し、次が成り立ちます。任意の vV\bm{v} \in V に対して f(v)=wf(\bm{v}) = \bm{w} となるような w\bm{w} が存在することは、ff が写像であることから明らかであるといえます。
f(v)=w=c1f(v1)++cnf(vn)=f(c1v1++cnvn) \begin{split} f( \bm{v} ) &= \bm{w} \\ &= c_{1} f(\bm{v}_{1}) + \cdots + c_{n} f(\bm{v}_{n}) \\ &= f( c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} ) \\ \end{split}
  • いま ff は単射であることから、次が成り立ちます。

    f(v)=f(c1v1++cnvn)v=c1v1++cnvn \begin{alignat*} {2} && f( \bm{v} ) &= f( c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} ) \\ & \Rightarrow & \bm{v} &= c_{1} \bm{v}_{1} + \cdots + c_{n} \bm{v}_{n} \end{alignat*}

  • すなわち、任意の vV\bm{v} \in Vv1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} の線型結合として表すことができるから、v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}WW を生成するといえます。

  • したがって、f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW の基底であれば v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV の基底であり、(iv\text{iv}\Rightarrowiii\text{iii})が成り立ちます。


まとめ

  • V,WV, W をベクトル空間とする。f:VWf : V \to W が同型写像ならば、次が成り立つ。
    • 11v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n} が線型独立 \Leftrightarrow f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n}) が線型独立。
    • 22v1,,vn\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}VV の基底 \Leftrightarrow f(v1),,f(vn)f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})WW の基底。

参考文献

[1] 齋藤正彦. 線型代数入門. 東京大学出版会. 1966.
[2] 永田雅宣 他. 理系のための線型代数の基礎. 紀伊國屋書店. 1986.
[3] 川久保勝夫. 線形代数学 [新装版]. 日本評論社. 2010.
[4] 松坂和夫. 線型代数入門 [新装版]. 岩波書店. 2018.
[5] 三宅敏恒. 線形代数学 初歩からジョルダン標準形へ. 培風館. 2008.
[6] S. Lang. Linear Algebra Third Edition. Springer. 1987.
[7] T. Miyake. Linear Algebra From the Beginnings to the Jordan Normal. Springer. 2022.
[8] 雪江明彦. 代数学 11 群論入門. 日本評論社. 2010.
[9] 雪江明彦. 代数学 22 環と体とガロア理論. 日本評論社. 2010.
[10] 桂利行. 代数学 I\text{I} 群と環. 東京大学出版会. 2004.
[11] 松坂和夫. 代数系入門. 岩波書店. 1976.
[12] 高木貞治. 代数学講義 [改訂新版]. 共立出版. 1965.
[13] S. Lang. Algebra Revised Third Edition. Springer. 2002.
[14] M. Artin. Algebra Second Edition. Pearson Education Limited. 2014.
[15] 青本和彦 他. 数学入門辞典. 岩波書店. 2005.


初版:2023-06-11   |   改訂:2024-11-25