ユニタリ変換の定義
計量同型写像であるような線型変換を、ユニタリ変換といいます。すなわち、ユニタリ変換とは、計量ベクトル空間 $V$ から $V$ 自身への計量同型写像です。
ここでは、ユニタリ変換を定義するとともに、線型変換がユニタリ変換であるための条件(必要十分条件)を示します。
ユニタリ変換の定義
まず、ユニタリ変換の定義を示します。
定義 7.9(ユニタリ変換)
$V$ を $K$ 上の計量ベクトル空間とする。$V$ から $V$ 自身への計量同型写像をユニタリ変換($\text{unitary}$ $\text{transformation}$)という。
解説
ユニタリ変換とは:計量同型な線型変換
ユニタリ変換とは、計量同型写像であるような線型変換です。すなわち、線型変換 $f : V \to V$ が計量同型写像であるとき、$f$ をユニタリ変換と呼ぶということです。
上記の定義より、ユニタリ変換は計量を保つ線型変換であり、内積の値やノルムの値を保存します( 計量同型写像の定義を参照)。
したがって、$f : V \to V$ がユニタリ変換であるとき、任意の $\bm{x}, \bm{y} \in V$ について、次の $2$ つが成り立ちます。
直交変換とは:実計量ベクトル空間のユニタリ変換
特に、$K = \mathbb{R}$ である場合、ユニタリ変換を直交変換($\text{orthogonal}$ $\text{transformation}$)といいます。すなわち、直交変換とは、実計量ベクトル空間におけるユニタリ変換です。
ユニタリ変換の例
例えば、直交座標系が与えられた平面を標準内積を備えた実数ベクトル空間 $\mathbb{R}^{2}$ と捉えれば、「原点周りの回転」や「原点を通る直線に関する対称移動」等に対応する変換は、ユニタリ変換になります。
「原点周りの回転」や「原点を通る直線に関する対称移動」等の操作によって、ベクトルの内積の値やノルムの値(長さ)等は変わりません。このような理由から、ユニタリ変換は「等長変換」などと呼ばれることもあります( [4] など)。
ユニタリ変換(直交変換)の重要性
これまで見てきたように、固有値と固有ベクトルや行列の標準化(対角化、三角化)の問題は、線型変換と、その表現行列である正方行列に対する考察に基づいています。
これは、計量ベクトル空間においても同様です。ユニタリ変換(直交変換)およびその表現行列である ユニタリ行列( 直交行列)に対する考察は、具体的に与えられた行列の標準化の問題を考える上で、非常に重要な役割を果たします。
ユニタリ変換であることと同値な条件
次に、線型変換がユニタリ変換であることと同値な条件を示します。
定理 7.21(ユニタリ変換であることと同値な条件)
$V$ を $K$ 上の計量ベクトル空間として、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ を $V$ の正規直交基底とする。$f : V \to V$ を線形変換とすると、$f$ がユニタリ変換であるためには、$f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})$ が $V$ の正規直交基底であることが必要にして十分である。
解説
正規直交基底の像が正規直交基底であること
定理 7.21(ユニタリ変換であることと同値な条件)は、ある線型変換がユニタリ変換であることと同値な条件を示すものです。すなわち、線型変換 $f : V \to V$ がユニタリ変換であることと、$f$ が正規直交基底を正規直交基底に移すことは同値です。
また、$f$ が正規直交基底を正規直交基底に移すということは、$V$ の正規直交基底 $\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ の $f$ による像 $f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})$ が $W$ の正規直交基底になるということに他なりません。
ユニタリ変換であることと同値な条件(まとめ)
ユニタリ変換の定義と 定理 7.21(ユニタリ変換であることと同値な条件)をまとめて表すと、次のようになります。すなわち、次の $4$ つの条件は互いに同値です。
($2$)$f$ は内積の値を保存する。
($3$)$f$ はノルムの値を保存する。
($4$)$f$ は正規直交基底を正規直交基底に移す。
定理 7.18(計量同型写像と正規直交基底)との関係
線型変換は線形写像の特別な場合であることから、 定理 7.21(ユニタリ変換であることと同値な条件)が成り立つことは、 定理 7.18(計量同型写像と正規直交基底)より明らかといえます。
$V, W$ を次元の等しい計量ベクトル空間として、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ を $V$ の正規直交基底とする。$f : V \to W$ を線形写像とすると、$f$ が計量同型写像であるためには、$f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})$ が $W$ の正規直交基底であることが必要にして十分である。
つまり、 定理 7.21は 定理 7.18を、特に線型変換についてまとめ直したものといえます。
証明
定理 7.18(計量同型写像と正規直交基底)より明らかである。$\quad \square$
証明の考え方
線型変換は線形写像の特別な場合であることから、線型変換に対して 定理 7.18(計量同型写像と正規直交基底)を適用することで、 定理 7.21(ユニタリ変換であることと同値な条件)が直ちに導けます。
まとめ
- $V$ を $K$ 上の計量ベクトル空間とする。$V$ から $V$ 自身への計量同型写像をユニタリ変換という。
- 特に、$K = \mathbb{R}$ である場合、これを直交変換という。
- $V$ を $K$ 上の計量ベクトル空間として、$\bm{v}_{1}, \cdots, \bm{v}_{n}$ を $V$ の正規直交基底とする。$f : V \to V$ を線形変換とすると、$f$ がユニタリ変換であるためには、$f(\bm{v}_{1}), \cdots, f(\bm{v}_{n})$ が $V$ の正規直交基底であることが必要にして十分である。
- ユニタリ変換の定義と 定理 7.21(ユニタリ変換であることと同値な条件)より、次の $4$ つの条件は互いに同値である。
($2$)$f$ は内積の値を保存する。
($3$)$f$ はノルムの値を保存する。
($4$)$f$ は正規直交基底を正規直交基底に移す。
参考文献
[1] 齋藤正彦. 線型代数入門. 東京大学出版会. 1966.
[2] 永田雅宣 他. 理系のための線型代数の基礎. 紀伊國屋書店. 1986.
[3] 川久保勝夫. 線形代数学 [新装版]. 日本評論社. 2010.
[4] 松坂和夫. 線型代数入門 [新装版]. 岩波書店. 2018.
[5] 三宅敏恒. 線形代数学 初歩からジョルダン標準形へ. 培風館. 2008.
[6] S. Lang. Linear Algebra Third Edition. Springer. 1987.
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[8] 雪江明彦. 代数学 $1$ 群論入門. 日本評論社. 2010.
[9] 雪江明彦. 代数学 $2$ 環と体とガロア理論. 日本評論社. 2010.
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[11] 松坂和夫. 代数系入門. 岩波書店. 1976.
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[13] S. Lang. Algebra Revised Third Edition. Springer. 2002.
[14] M. Artin. Algebra Second Edition. Pearson Education Limited. 2014.
[15] 青本和彦 他. 数学入門辞典. 岩波書店. 2005.