エルミート行列の固有値と固有ベクトルに関する基本的な性質について解説します。すなわち、エルミート行列の相異なる固有値に属する固有ベクトルは互いに直交します。このことを、エルミート行列の定義や標準的内積と随伴行列の性質を用いて証明します。
エルミート行列の定義と基本的性質について解説します。エルミート行列・実対称行列・対称行列の関係性をベン図を用いて整理するとともに、それぞれの具体例を示します。また、エルミート行列と歪エルミート行列の固有値について成り立つ性質を証明します。
エルミート行列の対角化について解説します。エルミート行列は、対角成分が実数の対角行列に対角化可能です。このことをエルミート行列の定義に基づいて証明します。これは、一般の行列が対角化可能であるための条件(必要十分条件)の特殊な場合を表します。
クラメルの公式について解説します。連立一次方程式の行列表示を導入し、クラメルの公式(行列式による解法)を証明します。行列の基本変形による解法と比較して、クラメルの公式を適用するメリットとデメリットについて、具体的な計算例とともに解説します。
シュミットの正規直交化法の手順や根拠について解説します。具体的に与えられたベクトルに対して行う直交化と正規化の操作について解説します。また、実際に、シュミットの正規直交化法を用いて、線型独立なベクトルの組から正規直交系を作る例を示します。
幾何ベクトルに関するシュワルツの不等式について解説します。シュワルツの不等式は、ベクトルの内積と長さの関係を示す重要な不等式です。シュワルツの不等式の2通りの証明方法(幾何的な考察による証明、内積の演算法則による証明)について解説します。
計量ベクトル空間におけるシュワルツの不等式について解説します。幾何ベクトルにおけるシュワルツの不等式と比較しつつ、ベクトルの内積とノルムの間の関係を解説します。また、あくまで内積の公理的な定義にしたがって、シュワルツの不等式を証明します。
ブロック行列に成り立つ演算規則について解説します。適切に区分けされた行列どうしの演算では、1つ1つのブロックを、あたかも通常の行列の成分のように扱うことができます。特に、ブロック行列の和と積が成り立つための条件について解説します。
実計量ベクトル空間における、ベクトルのなす角の定義について解説します。ベクトルのなす角は、平面や空間における角度を一般化した概念であり、実計量ベクトル空間に限って定義されます。また、内積やノルムによる、角度や余弦定理の一般化について解説します。
ノルムの定義と基本的性質について解説します。計量ベクトル空間において、ノルム(norm)は内積により定義され、その値の範囲は負でない実数となります。ノルムは、幾何における長さの概念を一般化し、抽象的なベクトル空間に持ち込んだものといえます。
ベクトルの和とスカラー倍の定義について解説します。有向線分により幾何ベクトルを定義したように、和とスカラー倍の演算もあくまで幾何的に定義することができます。ベクトルの和とスカラー倍の幾何的なイメージについて図を用いて解説します。
結合法則や交換法則など、平面(または空間)上のベクトルの和とスカラー倍に関して成り立つ演算法則を、幾何的なベクトルの定義にしたがって証明します。ベクトルの演算法則はベクトル空間の公理として一般化されます。
有向線分を用いてベクトルを幾何的に定義します。有向線分とは線分に向きの概念を加えたものであり、ベクトルとは、平行移動により重なる有向線分を1つにまとめたものです。幾何的に定義されたベクトルは、抽象的なベクトルの1種です。
ベクトルの成分表示と位置ベクトルを定義します。これらは、幾何的に定義されたベクトル(幾何ベクトル)を実数の組(数ベクトル)に対応させ、代数的に扱うことを可能にします。また、ベクトルの成分表示と位置ベクトルが、与えられた座標系に依存することについて解説します。
計量ベクトル空間における、ベクトルの直交の定義について解説します。幾何ベクトルの直交との相違点や直交系・正規直交系の条件を示し、零ベクトルを含まない直交系が線型独立であることを証明します。これらは、正規直交基底を導入する準備として重要です。
ベクトル空間は、和とスカラー倍の演算に関する8つの公理を満たす集合として定義される、数学の基礎的概念です。本記事では、公理の詳細な解説とともに、幾何ベクトルや行列などの具体例を通じて、一般化(抽象化)された概念としてのベクトル空間の理解を深めます。
前項で定義したベクトル空間の性質ともいえる諸定理を示します。これらは、一見して明らかな事実や演算規則のように見えますが、確かにベクトル空間の公理のみから導出されるものであることを確認しておきます。こうすることで、より高度で実用的な定理の導出に用いることができます。
前項に続き、ベクトル空間の性質ともいえる諸定理を示します。これらは、一見して明らかな事実や演算規則のように見えますが、確かにベクトル空間の公理のみから導出されるものであることを確認しておきます。こうすることで、より高度で実用的な定理の導出に用いることができます。
ユニタリ変換とユニタリ行列の対応関係について解説します。特に、標準内積を備えた数ベクトル空間において、ユニタリ変換の行列表示がユニタリ行列であり、ユニタリ行列により定まる線型変換がユニタリ変換であることを証明します。
ユニタリ変換とユニタリ行列の対応関係について可換図式を用いて解説します。また、線型変換がユニタリ変換であるための必要十分条件をまとめます。線型変換がユニタリ変換であることと、表現行列がユニタリ行列であることが同値であることを証明します。
ユニタリ変換と直交変換の定義について、具体例とともに解説します。ユニタリ変換が計量同型な線型変換であることを示した上で、線型変換が正規直交基底を正規直交基底に移すことが、ユニタリ変換であるための必要十分条件であることを証明します。
ユニタリ行列による行列の三角化の条件と手順を解説します。正方行列がユニタリ行列により三角化可能であるための必要十分条件について証明します。また、シュミットの正規直交化法を用いて、具体的に与えられた正方行列を三角化する手順について解説します。
ユニタリ行列の固有値に関する性質について解説します。すなわち、ユニタリ行列(およびユニタリ変換)の固有値は絶対値が1の複素数に等しいことを証明します。同様に、直交行列(および直交変換)の固有値は、存在すれば、1または-1に等しくなります。
ユニタリ行列の定義と基本的性質を解説します。ユニタリ行列とは逆行列が随伴行列である正方行列であり、実ユニタリ行列を直交行列といいます。ユニタリ行列の積もユニタリ行列であること、ユニタリ行列の行列式は絶対値が1の複素数であることを証明します。
一般の連立一次方程式の解の有無を判定する方法を示します。連立一次方程式は、(1)拡大係数行列を階段行列に変形し(2)係数行列と拡大係数行列の階数を比較することで、解を持つか否か判定できます。判定法の手順や注意点、例題について解説します。
行列の基本変形を利用した連立一次方程式の解法を示します。一般の連立方程式は(1)解の有無判定の後に(2)係数拡大行列を行標準形に変形し(2)簡単になった連立一次方程式を解くことで解が得られます。解法の手順や注意点、例題について解説します。
幾何ベクトルに関する三角不等式について解説します。三角形の辺の長さに関する(一般の)三角不等式との対応関係について図解するとともに、幾何ベクトルに関する三角不等式が成り立つことを内積の演算法則とシュワルツの不等式を用いて証明します。
計量ベクトル空間における三角不等式について解説します。幾何ベクトルにおける三角不等式と比較しつつ、ベクトルの和とノルムの間の関係や、距離の公理との関係について解説します。また、内積の公理的な定義にしたがって、三角不等式を証明します。
行列が三角化可能であるための必要十分条件を示します。重複を含めてn個の固有値を持つことは、n次正方行列が三角化可能であることと同値です。したがって、複素数の範囲で考えれば、正方行列は常に三角化可能です。このことを証明するとともに解説します。
余因子の定義について解説します。余因子の構成要素である小行列式や符号の意味について解説し、定義の前提事項を整理します。また、余因子の計算方法と計算手順について具体例とともに解説します。余因子は、行列式の展開定理を導く際に重要な概念です。
余因子行列の定義と基本的性質について解説します。ある行列とその余因子行列の積は、行列式の展開をまとめて表現したものであることを証明します。余因子行列は、ある行列が正則である(逆行列を持つ)ための条件を考える上で重要な役割を果たします。
全単射の定義について解説します。全単射とは全射かつ単射である写像であり、2つの集合の間に全単射が存在することは、2つの集合の元が1対1対応することを意味します。また、全単射であることが逆写像を持つための必要十分条件であることを証明します。
任意のベクトル空間に内積が定義できることを証明し、内積と標準的内積の対応関係を解説します。基底の選択により、座標ベクトルの標準内積はもとのベクトルの内積となります。このことは、任意のベクトル空間に正規直交基底が存在することを意味します。
内積の幾何的な定義と代数的な定義について解説します。また、成分表示されたベクトルの内積が、対応する成分どうしの積の和に等しいことを証明します。内積は長さ(距離)や角度といった概念を一般化する際に重要な役割を果たします。
計量ベクトル空間とは、内積が定義されたベクトル空間です。ここでは、内積と計量ベクトル空間の定義について解説します。また、エルミート対称性や共役線型性、正値性などの内積の基本的性質や、内積の演算規則について解説します。
ベクトルの内積の演算法則について解説します。交換法則や分配法則、スカラー倍の演算との可換性、ノルムとの関係など、ベクトルの内積に関する演算法則を、幾何的な考察により証明します。これらの演算法則は、計量ベクトル空間の公理として一般化されます。
写像の像と逆像の定義を解説します。像と逆像が、それぞれ写像の値域と定義域の部分集合であることを確かめ、逆像と逆写像の違いを解説します。また、具体的な写像に対して、像と逆像の例を挙げるとともに、写像が必ずしも逆写像を持たないことを確かめます。
恒等写像・合成写像・逆写像の定義と基本的性質について解説します。特に、すべての写像が逆写像を持つわけではないことを具体例を用いて確かめます。また、ある写像が逆写像を持たないことと同値な条件を示し、その対偶として、逆写像を持つための条件を示します。
写像の定義について解説します。写像とは集合の間の元の対応であり、任意の元に対して対応する元がただ1つに定まるものです。写像の定義を分解し、集合の間の元の対応が写像であるための条件(任意性と一意性)を明らかにするとともに、写像の例と反例を示します。
行列の列階数と行階数が等しいことを証明します。ある行列の線型独立な列ベクトルの最大数と線型独立な行ベクトルの最大数は等しく、行列の階数は行と列に関して対称的です。列階数と行階数の定義を整理するとともに、階数の対称性について解説します。 つです。
単射と全射の定義を解説し、写像が単射・全射であるための条件を明らかにします。集合AからBへの写像であって、任意の異なるAの元に対して異なるBの元を対応させるものを単射といい、任意のBの元に対応するAの元が存在するものを全射といいます。
線型代数学のおすすめの教科書を紹介し、論理構成や解説の丁寧さ、練習問題の量などの観点から比較します。また、線型代数学の学習の参考になる代数学の教科書も紹介します。本記事により、教科書ごとの違いや学習段階に応じた活用方法を知ることができます。
線型写像を可換図式により表現する方法について解説します。具体例として、線型写像および基底変換行列の可換図式を示し、その構造、ベクトル空間から数ベクトル空間への同型写像の役割や座標変換の関係について解説します。
線形写像の合成の行列表示は、それぞれの線形写像の行列表示の積に等しくなります。このことを、線型写像の合成が線型写像であることと線型写像が行列により表現されることから証明します。更に、合成写像の行列表示について、可換図式を用いて解説します。
同型写像が線型独立性や基底といったベクトル空間の性質を保存することを証明します。これは、同型な2つのベクトル空間が構造的に同じものであることを表しています。この定理は、同型なベクトル空間の次元について考察する際、重要な役割を果たします。
ベクトル空間が同型であるための必要十分条件を示します。すなわち、2つのベクトル空間が同型であるためには、それぞれの次元が等しいことが必要にして十分です。この定理から、次元が等しいベクトル空間はすべて互いに同型であることがわかります。
次元の等しいベクトル空間と数ベクトルが同型であることを証明します。この定理は抽象的なベクトル空間と具体的な数ベクトル空間が構造的に同じであることを意味しています。この定理から、次元の等しいベクトル空間がすべて互いに同型であることが導けます。
同型写像の定義と基本的性質について解説します。同型写像とは線形写像かつ全単射であるような写像です。同型写像の合成写像や逆写像もまた同型写像となることを証明します。証明にあたっては、その考え方や過程についても明らかにします。
同型なベクトル空間の基本的性質について解説します。互いに同型なベクトル空間の間に反射律、対称律、推移律が成り立つことを証明し、ベクトル空間の同型が同値関係を意味することを解説します。これらの性質は、同型写像の性質の言い換えに他なりません。
ベクトルの成分の和とスカラー倍が、幾何的に定義した和とスカラー倍に等しいことを示します。これは、ベクトルの和とスカラー倍の代数的な定義ともいえます。このことにより、ベクトルの和とスカラー倍の演算が簡単になります。
商ベクトル空間の定義について解説します。商ベクトル空間はベクトル空間とその部分空間により定められる集合(ベクトル空間)です。商ベクトル空間の具体例(平面上の平行な直線全体)を示し、代数学における一般化(同値類・剰余群)についても解説します。
商ベクトル空間(V/W)の次元が、もとのベクトル空間(V)の次元から部分空間(W)の次元を減じたものに等しいことを、次元の定義と線形写像の基本定理を用いて、2通りの方法で証明します。この定理は、ジョルダン標準形などの応用においても重要です。
部分空間により定まる集合の定義と基本的性質について解説します。部分空間により定まる集合は、商ベクトル空間を矛盾なく(well-definedに)定義するために必要な概念であり、代数学においては、剰余類などとして一般化されます。
固有ベクトルとは線型変換によりスカラー倍されるベクトルであり、そのスカラー倍の値が固有値です。本記事では、線型変換と正方行列に対する固有値と固有ベクトルの定義について解説し、線型変換とその表現行列の固有値全体が一致することを証明します。
固有方程式とは、線型変換の表現行列で表されるn次方程式です。固有方程式を解くことで線型変換(またはその表現行列)の固有値が求められます。固有方程式と固有多項式、固有値の重複度を定義し、固有方程式の解が固有値となることを証明とともに解説します。
線型変換(またはその表現行列)が固有値を持つとき、ある固有値に属する固有ベクトルと零ベクトルの集合を固有空間といいます。固有空間の定義を解説するとともに、その基本的性質として、固有空間がもとのベクトル空間の部分空間であることを証明します。
固有空間の次元は固有値の重複度を超えません。このことを解説するとともに、固有空間がベクトル空間の部分空間であることと重複度の定義を用いて証明します。この定理は、行列が対角化可能であるための必要十分条件を導く際に重要な役割を果たします。
固有空間の次元の総和はもとのベクトル空間の次元を超えません。このことを解説するとともに、線型変換の固有多項式の定義と固有空間に関する考察により、証明します。この定理は、行列が対角化可能であるための必要十分条件を導く上で極めて重要です。
ベクトル空間の基底と次元の基本的な性質に関する諸定理を示します。ここでは、ベクトル空間 の次元と に含まれる線型独立なベクトルの最大個数が等しいことを示します。
次元の定義と同値な条件について証明・解説します。すなわち、ベクトル空間の次元がnであることと、ベクトル空間の任意の元をその線型結合として一意に表すことができるn個のベクトルが存在することは同値です。
ベクトル空間の次元が明らかな場合、ベクトルの組が基底であるための条件を示します。次元がnの場合、n個のベクトルの組が基底であるためには、定義の条件(線型独立である、ベクトル空間を生成する)のいずれかを満たせばよいことを証明、解説します。
有限次元ベクトル空間において、線型独立なベクトルに適切なベクトルを加えて基底を構築する方法を証明とともに解説します。これは、零ベクトルのみからなるベクトル空間を除き、すべての有限次元ベクトル空間が有限個の基底を持つことを示す重要な定理です。
有限次元ベクトル空間において、生成元から適当なベクトルを選んで基底を構築する方法を証明とともに解説します。これは、零ベクトルのみからなるベクトル空間を除き、すべての有限次元ベクトル空間が有限個の基底を持つことを示す重要な定理です。
基底とはベクトル空間を生成する線型独立なベクトルの組です。基底を定義するとともに、あるベクトルの組が基底であるための条件(必要十分条件)について解説します。また、線型結合の一意性の観点から、基底の定義と同値な条件を示し、これを証明します。
ベクトル空間の次元とは、そのベクトル空間の基底の個数であり、ベクトル空間に対して一意に定まる数です。ここでは、ベクトル空間の基底の個数が一意に定まることを証明するとともに、基底の個数の一意性を根拠として、ベクトル空間の次元を定義します。
未知数(変数)の数が式の数よりも多いとき、斉次連立一次方程式は自明でない解を持ちます。この条件を証明し、証明の考え方や過程について解説します。この定理は、ベクトルが線型従属であるための条件を導き、基底と次元を導入する準備として大変重要です。
ベクトルの組が線型従属であるための条件(十分条件)について証明・解説します。ベクトルの数が要素の数よりも多ければ、そのベクトルの組は線型従属となります。この定理は、斉次連立一次方程式が自明でない解を持つための条件と本質的に同じです。
ベクトルが線型従属であるための条件を証明します。より少ないベクトルの線型結合で表せるベクトルの組は線型従属となります。また、m個のベクトルが生成する部分空間の線型独立なベクトルの数は高々m個です。これは、次元の一意性を根拠付ける重要な定理です。
ベクトル空間の複数の基底は正則行列によって関係付けられます。すなわち、基底の線型結合の行列表示が正則であることは、線型結合で表されるベクトルが基底であるための必要十分条件です。このことを解説・証明し、基底の変換を定式化する準備を整えます。
ベクトル空間における基底の変換と座標の変換を表す関係式について解説します。基底の関係を表す正則行列を基底変換行列と捉えることで、基底の変換に伴う座標の変換を表す関係式が得られます。このことを証明するとともに、基底変換行列について解説します。
基本行列と基本変形の対応について解説します。基本行列とは基本変形に対応する正方行列です。ある行列に対する基本変形は、対応する基本行列を掛けることに等しく、基本変形が施された行列は、もとの行列といくつかの基本行列の積として表すことができます。
基本変形により行列の階数が変わらないことを証明します。これは、行列の基本変形が階数を保存する操作であることを意味しており、基本変形の重要な性質の1つです。また、行列の基本変形と階数の定義との関係について解説します。
三角行列の固有値はその対角成分に等しくなります。すなわち、表現行列がn次の三角行列となるような線型変換は、重複を含めてn個の固有値を持ちます。このことを解説するとともに、固有多項式と行列式の基本的な性質を用いて証明します。
零行列をブロックとして含む、特定の形の正方行列の固有多項式は、2つ固有多項式の積に分解できます。このことについて解説するとともに、固有多項式と行列式の基本的な性質を用いて証明します。
相似な行列の固有多項式は等しく、したがって、それぞれの固有値全体の集合も等しくなります。これは、固有多項式や固有値が、表現行列によらず、線型変換に対して定まるものであることを意味しています。このことを証明するとともに解説します。
正方行列の対角成分の和を行列のトレース(trace)といいます。行列のトレースの定義について解説します。また、固有多項式の係数が行列のトレースや行列式を用いて表せることを証明するとともに、固有多項式の重要な性質について解説します。
相似な行列のトレースは等しいことを証明・解説します。相似な行列とは同じ線型変換を表現する行列です。したがって、相似な行列のトレースが等しいということは、トレースが(表現行列によらず)線型変換に対して一意に定まるということを意味しています。
連立一次方程式の解法の考え方を示します。連立一次方程式の解法である掃き出し法について考察し、連立一次方程式の基本変形が可逆であることを示します。また、掃き出し法による解法が、係数拡大行列に対する基本変形に等しいことを確かめます。
基本行列が正則であることを証明します。基本行列がいずれも正則であり、それらの逆行列もまた基本行列であることについて解説します。これは、基本行列の重要な性質であり、基本行列に対応する行列の基本変形が可逆的な操作であることを意味しています。
対称群の定義について解説します。また、置換全体の集合が積の演算により群(対称群)になることを解説します。すなわち、置換全体が空でない集合であり、置換の積に関して結合法則を満たし、単位元(恒等置換)と逆元(逆置換)が存在することを示します。
対等な行列とは同じ線型写像を表現する行列であり、正則行列により互いに変換可能です。このことを、線型写像の行列表示と基底変換行列を用いて証明します。また、基底の変更により表現行列がどのように変更されるか、可換図式を用いて解説します。
対等な行列の階数は等しいことを証明・解説します。ある行列と正則行列の積の階数はもとの行列の階数に等しくなります。これは、線型写像の表現行列の階数が基底の変換により不変であること、行列の階数が基本変形により不変であることを示しています。
行列が対角化可能であるための必要十分条件について解説します。正規行列の性質や固有値と固有ベクトルの観点から対角化の条件を示し、それぞれの関係を整理します。特に、列ベクトルが正規直交基底であることと対角化可能であることとの同値性を証明します。
行列が対角化可能であるための十分条件について解説・証明します。相異なるn個の固有値を持つならば、n次の正方行列は対角化可能です。また、対角化可能な正方行列は、固有値を対角成分に持つ対角行列に相似である(変形できる)ことを解説します。
行列が対角化可能であるための必要十分条件について解説します。固有空間の次元や直和、固有ベクトルの線形独立性、対角行列との関係(相似であること)の観点から、正方行列が対角化可能であるための条件を示し、それぞれが同値であることを証明します。
巡回置換と互換を定義し、具体例とともにそれぞれを置換として表記する方法を示します。これらはともに置換の特別な場合であり、互換は長さ2の巡回置換といえます。これらの概念は、任意の置換を互換の積に分解する際に必要となります。
平面上のベクトルが作る平行四辺形と三角形の面積がベクトルの長さと内積により表されることを証明します。この求積法は、平面上に座標系が与えられており、ベクトルが成分表示できる場合に有効です。具体的な実例を通じて計算方法について解説します。
方向ベクトルと法線ベクトルを定義し、方向ベクトルと法線ベクトルに関するベクトル方程式により平面上の直線を表す2通りの方法を解説します。また、座標系が与えられた場合に、これらのベクトル方程式が、座標変数に関する一次方程式と一致することについて解説します。
ベクトル空間の恒等写像(恒等変換)の行列表示が単位行列であることを証明します。更に、恒等写像に特別な性質として、表現行列が基底の選び方によらないことを証明します。また、恒等写像と表現行列の関係について可換図式を用いて解説します。
置換の符号を定義するための準備として、多項式の文字の置換と差積を定義します。文字の置換により不変である多項式を対称式、文字の置換により正負が入れ替わる多項式を交代式といいます。差積とは特定の形の多項式あり交代式です。
差積が交代式であり、任意の互換により正負が入れ替わることを示します。
斉次連立一次方程式の解空間の次元と係数行列の階数の関係について解説します。斉次連立一次方程式の解空間の次元は係数行列の階数と型により定まります。これは、斉次連立一次方程式の基本解の数が係数行列の階数と型により決まることを意味しています。
斉次連立一次方程式の解空間の次元が係数行列により定まることを示します。この定理は、斉次連立一次方程式の任意の解(一般解)が解空間の基底(基本解)の線型結合で表せることを意味するものであり、一般の連立一次方程式の解法にも応用できる重要な定理です。
斉次連立一次方程式が自明な解のみを持つための条件(必要十分条件)と自明でない解を持つための条件(十分条件)を行列の階数を用いて証明します。ベクトル空間の次元より先に行列の階数を定義する場合、これらは、次元の一意性を示す重要な命題となります。
行列の基本変形を利用した斉次連立一次方程式の解法を示します。斉次連立方程式は(1)係数行列を行標準形に変形し(2)簡単になった斉次連立一次方程式を解くことで解が得られます。解法の手順や注意点、例題について解説します。
標準形は行標準形をさらに標準化した形です。任意の行列は基本変形により標準形に変形できます。標準形では、対角線上に並ぶ1の個数と行列の形は一意に定まります。このことは、行列の基本変形により階数が定義されうることを示唆しています。
標準的内積の定義と基本的な性質を解説します。標準的内積は数ベクトル空間の内積であり、数ベクトルの成分とその複素共役により定義されます。任意のベクトル空間に対して内積が定義できますが、標準内積はその中でもっとも簡単で自然な内積といえます。
正方行列のうち特に重要な正則行列を定義します。また、ある行列が正則である(逆行列をもつ)とき、逆行列が一意に定まることを示します。
正則行列について成り立つ演算法則を示します。すなわち、(1)行列の積の逆行列はそれぞれの逆行列の積に等しく(2)逆行列の逆行列は元の行列に等しく(3)転置行列の逆行列は逆行列の転置行列に等しくなります。
正方行列が正則である(逆行列をもつ)ための必要十分条件を整理します。正則行列の条件は、行列式やベクトルの線型独立性、連立一次方程式、階数など、様々な観点から示せます。ここでは、特に、行列の階数の観点に基づく正則行列の条件を証明します。
行列が正則である(逆行列を持つ)ための必要十分条件について解説します。特に、行列式の観点から行列が正則であることと同値な条件を示し、他の観点による条件との違いを整理します。また、逆行列が余因子行列を用いて表せることを証明します。
シュミットの正規直交化法の根拠について解説します。計量ベクトル空間において、任意の線型独立なベクトルの組から正規直交系を作ることができることを証明します。また、この定理とシュミットの正規直交化法との関係について解説します。
任意の計量ベクトル空間に正規直交基底が存在することを証明します。ベクトル空間の基底に対してシュミットの正規直交化法を適用することで正規直交基底が作れることについて解説し、シュミットの正規直交化法に関連する各定理の位置づけを整理します。
固有ベクトルとは線型変換によりスカラー倍されるベクトルであり、そのスカラー倍の値が固有値です。本記事では、線型変換と正方行列に対する固有値と固有ベクトルの定義について解説し、線型変換とその表現行列の固有値全体が一致することを証明します。
正規直交基底が与えられているとき、計量ベクトル空間の内積は正規直交基底に関する座標ベクトルの標準的内積に一致することを証明します。任意のベクトル空間において、与えられた基底が正規直交基底となるような内積が一意に存在することを解説します。
正規行列の固有値と固有ベクトルに関する基本的性質について解説します。すなわち、正規行列の相異なる固有値に属する固有ベクトルは互いに直交します。このことを、正規行列の定義や標準的内積と随伴行列の性質を用いて証明します。
正規行列の固有値に関する基本的性質を解説します。正規行列とその随伴行列の固有値は互いに複素共役であり、対応する固有値に属する固有ベクトルは等しいことを証明します。これは、ユニタリ行列やエルミート行列の固有値に関する性質を一般化したものです。
正規行列の定義について解説します。正規行列とは、随伴行列との積について可換である正方行列です。また、正規行列の例として、エルミート行列(実対称行列)や歪エルミート行列(実交代行列)、ユニタリ行列(直交行列)が正規行列であることを確かめます。
正規行列の対角化について解説します。すなわち、正規行列は対角化可能であり、正方行列が正規行列であることと、行列が対角化可能であることが同値であることを証明します。これは、一般の行列が対角化可能であるための条件(必要十分条件)を表しています。
点と直線の距離の公式を示します。特に、平面上の直線がベクトル方程式により与えられている場合の公式を証明します。また、方向ベクトルで表された公式と、直交座標系が与えられている場合(一次方程式で表された)公式の、数学的な対応関係について解説します。
点と直線の距離の公式を示します。特に、平面上の直線がベクトル方程式により与えられている場合の公式を証明します。また、法線ベクトルで表された公式と、直交座標系が与えられている場合(一次方程式で表された)公式の、数学的な対応関係について解説します。
直交補空間の定義と基本的性質について解説します。計量ベクトル空間において、ある部分空間の任意の元に直交するベクトル全体の集合を直交補空間といいます。計量ベクトル空間は、部分空間とその直交補空間の直和に分解できることを証明します。
直交補空間の包含関係に関する性質について解説します。すなわち、部分空間の包含関係が、それぞれの直交補空間において逆転することを証明します。また、直交補空間をとることで、「和空間」と「共通部分」が互いに入れ替わることを証明します。
平面上および空間内における、直線と平面の方程式について解説します。また、点と直線の距離、点と平面の距離の公式について解説します。平面と空間における類似点・相違点を明らかにしつつ、ベクトルと座標変数それぞれによる表現を体系的に整理します。
相似な行列とは同じ線型変換を表現する行列であり、正則行列により互いに変換可能です。このことを、線型変換の行列表示と基底変換行列を用いて証明します。また、基底の変更により表現行列がどのように変更されるか、可換図式を用いて解説します。
相異なる固有値に属する固有ベクトルは線型独立であることを証明します。これは、固有空間の和が直和であることを意味します。線型変換(正方行列)に関するこの性質は、行列が対角化可能であるための条件を導く際に非常に重要な役割を果たします。
固有の名称で呼ばれる種々の行列について整理します。詳しくは各行列の定義の項などを参照ください。
空間内の平面を表すベクトル方程式と一次方程式の関係を具体例とともに解説します。空間内の平面は法線ベクトルに関するベクトル方程式により表されます。座標系が与えられている場合、平面を表すベクトル方程式は座標変数に関する一次方程式に対応します。
空間内の点と平面の距離を与える公式を導きます。平面上の点と直線の距離を与える公式との類似性を考察しつつ、法線ベクトルに関するベクトル方程式による公式と、座標系が与えられている場合の(一次方程式による)公式との数学的な対応関係について解説します。
空間内の点と直線の距離を与える公式を導きます。平面の場合の公式との類似点や相違点を解説しつつ、具体的な距離の計算方法を示します。計算方法については、垂線の足の座標や垂線を表すベクトルの長さを求める方法について、具体例とともに解説します。
空間内の直線を表すベクトル方程式と連立一次方程式の関係を具体例とともに解説します。空間内の直線は方向ベクトルを用いたベクトル方程式で表せます。座標系が与えられている場合、直線を表すベクトル方程式は座標変数に関する連立一次方程式に対応します。
簡約階段行列は、階段行列をさらに標準化した形です。本記事では、任意の行列が簡約階段行列に変形可能であることを証明します。また、行列の階数や一意性の観点から、簡約階段行列と階段行列の違いについて解説します。
簡約階段行列は、任意の行列を行基本変形で変換したときに一意に定まる行列です。本記事では、簡約階段行列の一意性を証明するとともに、その性質が連立一次方程式の解法において果たす重要な役割について解説します。
線型写像の像(Image)と核(Kernel)の定義について解説します。特に、線型写像における像・核と、一般の写像における像・逆像との違いを明らかにします。像と核は部分集合として定義されますが、それぞれ部分空間でもあることを証明します。
線型写像が単射であるための条件について解説します。線形写像が単射であるためには核(Kernel)が零ベクトルのみであることが必要十分です。これを証明し、一般の写像が単射であるための条件と比較します。この定理は次元や階数の考察において重要です。
線形写像の基本定理について解説します。線型写像の核と像の次元の和が定義域の次元に等しいことを証明し、具体例として、零写像や単射の場合に成り立つ関係式をイメージ図とともに示します。この定理は、行列の階数や連立方程式の解法の考察において重要です。
線形写像の定義と基本的性質について解説します。線型写像とはベクトルの和とスカラー倍の演算(線型演算)を保存する写像です。その基本的性質として、「線型写像は零ベクトルを零ベクトルに移すこと」、「線型写像の合成も線型写像であること」を証明します。
線形写像の行列表示について解説します。線形写像の行列表示は定義域と値域の基底に依存します。しかしながら、基底を固定することで線型写像と行列が1対1に対応することを証明します。線形写像の行列表示は、線型代数学の中心的なアイディアの1つです。
線型写像の表現行列と座標ベクトルが満たす関係式について解説します。また、線形写像を行列で表現することで、ベクトルの像が表現行列と座標ベクトルの積に対応付けられることを証明します。これは、線形代数の基本的な考え方であり、応用上も重要です。
線型変換の行列表示について、線形写像の行列表示との違いを明らかにしつつ、解説します。線型変換は線型写像の特別な場合であり、表現行列は必ず正方行列になります。また、線型変換と表現行列の関係について可換図式を用いて明らかにします。
線型独立と線型従属の定義について解説します。自明でない線型関係が存在するベクトルを線型従属、自明でない線型関係が存在しないベクトルを線型独立であるといいます。また、線形独立なベクトルは零ベクトルや同じベクトルを含まないことを証明します。
線型独立・線型従属であることと同値な条件について解説します。線型結合の一意性の観点から、あるベクトルの組が線型独立・線型従属であることと同値な条件を示し、定義に従ってこれを証明します。これらは線型独立・線型従属なベクトルの基本的な性質です。
線型独立・線型従属なベクトルの基本的性質について解説します。線型従属なベクトルの組にいくつかのベクトルを加えたベクトルの組は線型従属であり、線型独立なベクトルの組からいくつかのベクトルを除いたベクトルの組は線型独立であることを証明します。
ベクトルの線型独立性と線型結合の一意性の関係について解説します。線型独立なベクトルの組にベクトルを加えて線型従属になるならば、加えられたベクトルはもとのベクトルの組の線型結合として一意に表せることを証明し、関連する定理について整理します。
線型結合や線型関係の定義と基本的性質について解説します。また、ベクトルの線型結合が部分空間を生成する(張る)ことを証明します。自明でない線型関係といった考え方は、線型独立や線型従属といった概念を導入する際に重要な役割を果たします。
ベクトルの線型結合を行列で表現する方法を導入し、その基本的性質を証明します。また、この表記法が行列のベクトル表記と整合することを確認します。この表記法は複数のベクトルをまとめて扱う際に便利であり、線型写像の行列表現を導入する準備として重要です。
線型結合の行列表記を用いて、線型独立なベクトルの組と行列の積に関して成り立つ性質について解説します。また、定理の証明とその考え方を併せて示します。これらの定理は、ベクトル空間の基底をまとめて効率的に扱うための重要な道具となります。
線型写像が単射/全射であるために表現行列が満たすべき条件(必要十分条件)について解説します。表現行列の階数が定義域/値域の次元に等しいことは、線型写像が単射/全射であることと同値です。これは、線型写像の性質を階数を用いて言い換えたものです。
任意の置換が互換の積として表せることの2通りの証明についてまとめます。数学的帰納法による証明がシンプルである一方、まず巡回置換に分解してから互換の積に分解する方法は、具体的な計算手順として便利です。
任意の置換は互換の積に分解できます。ここでは、任意の置換が巡回置換の積として表せることを証明するとともに、証明の考え方について解説します。
任意の巡回置換は互換の積に分解できます。しかしながら、巡回置換を互換の積として表す方法は一意に定まりません。ここでは、任意の巡回置換が互換の積に分解できることを証明するとともに、証明の考え方について解説します。
任意の置換は互換の積に分解できます。ここでは、任意の置換が互換の積として表せることを数学的帰納法により証明するとともに、証明の考え方について解説します。
置換の定義と表記法について解説します。集合から集合への全単射として、置換を定義し、置換と順列が1対1に対応することを解説します。また、置換の表記法を導入し、置換による文字の対応が表記順(並び順)に依存しないことを具体例とともに解説します。
置換の積の定義について解説します。置換の積とは2つの置換(全単射)の合成写像です。したがって、置換の積もまた1つの置換となります。このことを置換の定義より確かめます。また、具体的に与えられた置換の積を計算する方法を、具体例とともに示します。
置換の符号が一意に定まる理由について解説します。すなわち、置換を互換の積として表したとき、積に含まれる互換の数の偶奇(偶数か奇数か)は一意に定まることを証明します。これは、任意の置換に対して置換の符号が定義できる根拠となる定理です。
置換の符号と偶置換・奇置換の定義について解説します。また、置換の符号の基本的性質として(1)置換の符号が置換の積の演算を保存すること(2)恒等置換が偶置換であること(3)逆置換の符号がもとの置換の符号に等しいことを証明します。
群の定義について解説します。群とは(1)結合法則が成り立ち(2)単位元と(3)逆元が存在するような二項演算が定義された集合です。本記事では、群を定義するために必要な二項演算や、ある集合が群であるための条件について、具体例とともに解説します。
ベクトル空間Vから商ベクトル空間V/Wへの自然な写像が存在することを示すとともに、これが線型写像であることを確かめます。
行列を三角化する方法について解説します。固有値の個数から三角化可能性を判定する方法や、固有ベクトルと線形独立なベクトルから基底を作ることで、正方行列を段階的に三角化する方法について、具体例を示しつつ解説します。
行列の区分けについて解説します。行列をいくつかのブロックに分割して表記することを行列の区分けといいます。この考え方により、行列の計算や定理の証明を見通しよく進めることができます。行列が複数通りに区分けできることを具体例とともに示します。
行列の和とスカラー倍の定義について解説します。行列の和に関して結合法則や交換法則が成り立つことや、スカラー倍に関して分配法則に類似する演算規則が成り立つこと等を示します。また、これらの演算規則とベクトル空間の公理との対応について解説します。
行列の基本変形の定義と基本的性質について解説します。また、行列の基本変形が可逆的であることを証明します。基本変形により、階数などの特性を保ったまま、行列を簡単な形に変形できます。これは、連立一次方程式の解法等において重要な役割を果たします。
行列の定義について解説します。行列の成分(要素)や型(サイズ)などといった用語の定義や意味を整理します。また、成分や列ベクトル(行ベクトル)を用いて行列を表す方法と注意点を示します。行列は、線形代数において基本的で重要な考察対象です。
零行列、正方行列、対角行列、単位行列などの基本的で重要な行列の定義について解説します。また、これらの行列の役割や重要性、表記法を整理します。特に、単位行列がクロネッカーのデルタで表現されること等について解説します。
行列を対角化する方法について解説します。固有値の個数と固有空間の次元から対角化可能性を判定する方法と、線形独立な固有ベクトルによる対角化の方法について、具体例を示しつつ解説します。
任意の行列は基本変形によって4つの標準化された形(階段行列、簡約階段行列、行標準形、標準形)に変形できます。それぞれの特徴や変形手順、主な使途について整理します。これらを理解した上で、目的に応じて適宜使い分けることが重要です。
行列の積の定義と、行列の積が定義されるための条件について解説します。すなわち、2つの行列の積ABが定義されるのは、行列Aの列の数と行列Bの行の数が等しい場合に限られます。また、行列の積がどのように計算されるかを、図を用いて解説します。
行列の積の演算規則について解説します。行列の積に関して結合法則が成り立つことを、行列の積の成分に着目して証明します。また、行列の積に関して分配法則が成り立つことや、交換法則が成り立たないことを、具体例とともに解説します。
行列の積の階数について解説します。すなわち、2つの行列の積の階数は、もとの行列の階数のいずれをも超えません。このことは、行列の積を線型写像の合成に対応させて、線型写像の基本的性質を適用することで証明できます。
行列の階数の定義について解説します。行列の階数の2つの定義(線形写像による定義、基本変形による定義)の違いを比較します。また、行列に対して階数が一意に定まることを確認し、階数と列階数(線型独立な列ベクトルの最大数)が等しいことを証明します。
斉次連立一次方程式と行列式の関係について解説します。斉次連立一次方程式が自明でない解を持つための条件(必要十分条件)を示します。この定理の対偶は、行列式の観点から、係数行列が正則行列であるための条件(必要十分条件)を示すものです。
行列式と線型独立性の関係について解説します。列ベクトル・行ベクトルが線型独立であることは、正方行列が正則である(行列式の値が0でない)ための必要十分条件です。これは、正則行列の条件、および線型独立・線型従属なベクトルの条件を示す定理です。
置換や置換の符号などの概念を用いて行列式を定義します。また、実際に3次の正方行列の行列式について定義に則って計算します。2次や3次の行列式はサラスの公式(たすき掛けの規則)により簡単に計算することができます。
余因子を用いた行列式の展開について解説します。行列式は、ある行(または列)に沿った成分と余因子の積の和に展開できます。行列式の展開は具体的な計算において非常に重要です。行列式の展開により、高次の行列式の次数を下げることができるためです。
余因子を用いた行列式の展開について解説します。行列式の展開は、同じ行(または列)に沿った場合にしか成り立たず、異なる行(または列)に沿った成分と余因子の積の和は0に等しくなります。行列式の交代性などを用いて、これを証明・解説します。
多重線型性(n重線型性)は行列式を特徴づける基本的な性質です。行列式が多重線型であるとは、行列式が和とスカラー倍の演算を保存することを意味します。多重線型性より、零ベクトルを含む行列の行列式が0に等しいことが直ちに導けます。
行列式が交代的であるとは、置換による行の入れ替えにより行列式の値の正負が入れ替わる(交代する)ことを意味しています。交代性は(多重線型性と合わせて)行列式を特徴づける基本的な性質であり、行列式の計算テクニックとしても有用です。
転置行列の行列式がもとの行列の行列式に等しいことを示します。これにより、行列式の性質は行と列に関して対称的であり、行に関するして成り立つ行列式の性質が列に関しても成り立つことが導かれます。
行列式が多重線型性と交代性を満たす写像(線型写像)であることを示します。これは行列式の定義とほぼ同等の定理であり論理的に重要であるとともに、行列式の積に関する定理や三角行列の行列式に関する定理などの証明において大変便利です。
行列の積の行列式が元の行列の行列式の積に等しいことを示します。ここでは(1)行列式の定義と基本的性質(多重線型性と交代性)による証明と(2)行列式の写像としての性質による証明の2通りの証明方法について解説します。
零行列をブロックにもつ行列の行列式は、零行列に隣り合う2つの行列の積の形に分解されます。このことを2通りの方法で証明します。すなわち、(1)行列式の定義による証明と(2)写像としての行列式の性質を利用する証明、それぞれについて解説します。
1つの成分を除き、他のすべての成分が0である行(または列)を持つ行列の行列式について成り立つ性質を示します。また、定理の証明過程や考え方について解説します。この定理は、行列式の次数を下げる方法を与えるため、具体的な計算において重要です。
三角行列の行列式について解説します。三角行列の定義と正方行列が三角行列であるための条件を示した上で、三角行列の行列式が対角成分の積に等しいことを証明します。証明は、0を含む行列式の性質を利用した証明と行列式の定義による証明の2通り示します。
行列式の計算方法について解説します。行列式の基本的性質(多重線型性と交代性)と余因子による展開を用いた計算の各手順について、具体例とともに解説します。また、行列式を計算する際の注意点とよくある間違いについて、具体例とともに解説します。
行標準形は、簡約階段行列をさらに標準化した形です。任意の行列は、行基本変形と列の入れ替えにより行標準形に変形できます。簡約階段行列と異なり、簡約階段行列では、対角線上に並ぶ1の個数は一意に定まるが、行列の形は一意に定まりません。
係数拡大行列の定義と連立一次方程式が解をもつための条件について解説します。係数行列と係数拡大行列の階数が等しいことが、連立一次方程式が解を持つための必要十分条件であることを証明します。連立一次方程式の解の有無の判定方法について整理します。
計量同型なベクトル空間の次元について解説します。すなわち、次元の等しい計量ベクトル空間は互いに計量同型であることを証明します。これは、n次元計量ベクトル空間が、標準的内積を備えたn次元数ベクトル空間に計量同型であることを意味しています。
計量を保つ線型写像と長さを保つ線型写像を定義し、線型写像が計量を保つ(内積の値を保存する)、長さを保つ(ノルムの値を保存する)ための条件について解説します。また、線型写像が計量を保つことと長さを保つことが同値であることを証明します。
計量を保つ線型写像の基本的性質について解説します。すなわち、計量を保つことは、線型写像が単射であるための十分条件です。このことは、線型写像の基本的性質と計量を保つ(すなわち内積を保存する)線型写像の性質により、証明することができます。
線型写像が計量同型写像であるための必要十分条件について解説します。線型写像が計量同型写像であることと、線型写像が正規直交基底を正規直交基底に移すことが同値であることを証明します。
計量同型写像の定義について解説します。計量同型写像とは、計量を保つ線型写像であり、かつ全単射であるものです。また、ある写像が計量同型写像であるための条件(必要十分条件)について解説するとともに、定義の条件との同値性を証明します。
転置行列の定義と演算規則について解説します。特に、行列の積(AB)の転置行列が、もと行列(AとB)の転置行列の積に等しくなることを証明します。また、正方行列の場合に限って定義される、対象行列と交代行列の定義と基本的性質について解説します。
転置行列の階数について解説します。すなわち、行階数(線型独立な行ベクトルの最大数)は階数(列階数)に等しく、転置行列の階数はもとの行列の階数に等しいことを証明します。これらは、階数が行と列に関して対称的であることから導かれる性質です。
行列の基本変形を利用した逆行列の計算方法を示します。与えられた行列に対して(1)正則性を確認した上で(2)単位行列と結合した行列を(3)簡約階段行列に変形することで逆行列が得られます。計算方法の手順や注意点、例題について解説します。
連立一次方程式の解が同じ係数行列を持つ斉次連立一次方程式の解を用いて表せることを証明・解説します。連立一次方程式の特殊解と一般解について整理するとともに、一般の連立一次方程式の解の集合が必ずしもベクトル空間(解空間)ではないことを確かめます。
連立一次方程式の一般解の形を示します。すなわち、連立一次方程式の解は、特殊解と、同じ係数行列を持つ斉次連立一次方程式の基本解の線型結合の和で表せます。
基本的で重要な部分空間の例を示し、それらが部分空間であることを証明します。すなわち、2つの部分空間の共通部分と和空間は、もとのベクトル空間の部分空間です。また、n個の変数の斉次連立一次方程式の解空間は、n次元数ベクトル空間の部分空間です。
部分空間とは、ベクトル空間の部分集合で、それ自身がベクトル空間となるものです。部分空間の定義について、反例(部分集合が部分空間とならない例)を挙げながら解説します。ベクトル空間の部分集合が部分空間であるための必要十分条件を示し、証明します。
部分空間の次元の基本的な性質について解説します。部分空間の次元がもとのベクトル空間の次元を超えないこと、部分空間がもとのベクトル空間に等しくなる(同型である)ための必要十分条件が次元が等しいことであることを、考え方とともに証明します。
部分空間の次元の和について解説します。すなわち、2つの部分空間の次元の和は、それぞれの和空間と共通部分の次元の和に等しくなります。このことを証明するとともに、和空間と和集合の違いや、有限集合の元の個数に関する関係式との違いを解説します。
部分空間の直和を定義するとともに、部分空間の和(和空間)が直和であるための必要十分条件について解説します。ベクトル空間の元(ベクトル)がその部分空間の元の和として一意に表されるとき、もとのベクトル空間は部分空間の直和であるといいます。
ベクトル空間の直和分解について解説します。また、補空間を定義するとともに、任意の部分空間に対して補空間が存在することを証明します。直和分解の具体例として、正方行列全体の集合が対称行列全体と交代行列全体の直和に分解されることを確かめます。
行列の階数と小行列式の関係について解説します。行列の階数が、0でない小行列式の最大次数に等しいことを証明します。これは、行列の階数が小行列式により定まることを示すとともに、一般の行列に標準形が存在することを示唆する重要な定理です。
階段行列とは、主成分(各行の最も左にある0でない成分)が階段状に並ぶ行列です。任意の行列が行基本変形により階段行列へ変形可能であることを証明します。また、階段行列の段数が一意に定まり、それが行列の階数と一致する点について詳しく解説します。
随伴行列の定義と基本的性質について解説します。随伴行列とは、ある行列の共役行列の転置行列です。また、標準的内積と行列の積の対応関係を用いて、数ベクトル空間(計量ベクトル空間)の標準的内積と随伴行列について成り立つ演算規則を証明します。