一般の連立一次方程式の解法(2) 目次 一般の連立一次方程式の解法を示します。
一般の連立一次方程式(A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b )は、拡大係数行列を行標準形に変形することで解を得ることができます。
一般の連立一次方程式の解法# 斉次連立一次方程式との違い(解の有無判定)# 斉次連立一次方程式 A x = 0 A \bm{x} = \bm{0} A x = 0 の場合と異なり、一般の連立一次方程式 A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b は必ずしも解を持つとは限りません。
このため、一般の連立一次方程式 A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b を解く際は、まず、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b が解を持つか否かを判定する必要があります。解の有無を判定する方法は前項 の通りです。
斉次連立一次方程式との違い(解法の手順)# 解法の手順も、斉次連立一次方程式の解法と一般の連立一次方程式の解法は若干異なります。
連立一次方程式が斉次(A x = 0 A \bm{x} = \bm{0} A x = 0 )の場合、係数行列 A A A を行標準形に変形することで解が得られました(斉次連立一次方程式の解法 )。一方で、一般の連立一次方程式(A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b )の場合、係数拡大行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) を行標準形に変形することで解が得られます。
クラメルの公式による解法との違い# 我々は、一般の連立一次方程式の解法として、クラメルの公式 を既に得ています。当然ながら、クラメルの公式は斉次連立一次方程式にも適用できます。
しかしながら、クラメルの公式 は行列式を用いた解法であり、特に式の数(m m m )と変数の数(n n n )が等しい場合にのみ適用できる解法です。また、変数の数に応じて計算しなければならない行列式の数が増えていきます( ( n + 1 ) (n + 1) ( n + 1 ) 個の行列式を計算する必要がある)。
このような理由から、クラメルの公式はあまり実用的でない場合がほとんどです。
行列の基本変形による解法# 以下に整理する解法は行列の基本変形による解法であり、本節のはじめ(基本的な考え方 )に示した掃き出し法の考え方に則っています。
解を得るために必要な手続きが明確であり、計算量も(比較的)少ないため、連立一次方程式の解法として実用的といえます。また、この解法はコンピュータによる計算にも適してます。
A A A を ( m , n ) (m, n) ( m , n ) 型行列とすると、次の手順(1 1 1 )∼ \sim ∼ (3 3 3 )により連立一次方程式 A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b の解が得られます。
(1)解の有無の判定# 連立一次方程式の解の有無の判定方法 にしたがって、連立一次方程式 A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b が解を持つか否か判定します。詳細は、前項 を参照ください。
(1-1)階段行列への変形# 拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) を階段行列に変形します。 変形の結果得られる行列は、次のような形になります。 (1-2)解の有無判定# b r + 1 b_{r+1} b r + 1 の値により解の有無を判定します。
b r + 1 = 0 b_{r+1} = 0 b r + 1 = 0 であれば、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b は解を持ちます。
このとき、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b は連立一次方程式が解を持つための条件 rank ( A ∣ b ) = rank A \text{rank} \, (\, A \mid \bm{b} \,) = \text{rank} \, A rank ( A ∣ b ) = rank A を満たします。 b r + 1 ≠ 0 b_{r+1} \neq 0 b r + 1 = 0 であれば、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b は解を持ちません。
このとき、rank ( A ∣ b ) ≠ rank A \text{rank} \, (\, A \mid \bm{b} \,) \neq \text{rank} \, A rank ( A ∣ b ) = rank A となり、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b は連立一次方程式が解を持つための条件 を満たしません。 連立一次方程式 A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b が解を持つ場合、次の手順(2 2 2 )行標準形への変形 に進みます。
(2)行標準形への変形# 拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) を行標準形に変形します。(1 1 1 )解の有無の判定 において階段行列まで変形が完了しています。この階段行列に対して更に行基本変形と列の入れ替えの操作を行い、行標準形まで変形を進めます。 変形の結果得られる行列 ( A ′ ∣ b ′ ) (\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) ( A ′ ∣ b ′ ) は、次のような行列となります。ここで、r = rank A = rank ( A ∣ b ) r = \text{rank} \, A = \text{rank} \, (\, A \mid \bm{b} \,) r = rank A = rank ( A ∣ b ) が成り立ちます(定理 5.14(行標準形) )。 ( A ′ ∣ b ′ ) = ( 1 ⋱ 1 a 1 r + 1 ⋯ a 1 n ⋮ ⋮ a r r + 1 ⋯ a r n b 1 ⋮ b r O O )
(\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) = \left( \begin{array} {c:c|c}
\begin{matrix}
1 & & \\ & \ddots & \\ & & 1
\end{matrix} &
\begin{matrix}
a_{1 \, r+1} & \cdots & a_{1n} \\ \vdots & & \vdots \\ a_{r \, r+1} & \cdots & a_{r n}
\end{matrix} &
\begin{matrix}
b_{1} \\ \vdots \\ b_{r}
\end{matrix} \\
\hline
\begin{matrix}
& & \\ & \Large{O} & \\ & &
\end{matrix} &
\begin{matrix}
& & \\ & & \Large{O} \\ & &
\end{matrix} & \\
\end{array} \right)
( A ′ ∣ b ′ ) = 1 ⋱ 1 O a 1 r + 1 ⋮ a r r + 1 ⋯ ⋯ a 1 n ⋮ a r n O b 1 ⋮ b r (3)解の整理# 行標準形への変形により、簡単になった斉次連立一次方程式 A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ を解きます。( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) から ( A ′ ∣ b ′ ) (\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) ( A ′ ∣ b ′ ) への変形は可逆的であり(定理 5.7(基本変形の可逆性) )、対応する連立一次方程式の変形も可逆的です(定理 5.16(基本変形の可逆性) )。したがって、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b と A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ は同じ解を持ちます。 A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ は次のような連立一次方程式となります。{ x 1 + a 1 r + 1 x r + 1 + ⋯ + a 1 n x n = b 1 x 2 + a 2 r + 1 x r + 1 + ⋯ + a 2 n x n = b 2 ⋱ ⋮ ⋮ x r + a r r + 1 x r + 1 + ⋯ + a r n x n = b r ⟺ { x 1 = b 1 − ( a 1 r + 1 x r + 1 + ⋯ + a 1 n x n ) x 2 = b 2 − ( a 2 r + 1 x r + 1 + ⋯ + a 2 n x n ) ⋮ x r = b r − ( a r r + 1 x r + 1 + ⋯ + a r n x n )
\begin{gather*}
\left\{ \begin{array} {ll}
x_{1} & + \; a_{1 \, r+1} x_{r+1} + \cdots + a_{1 n} x_{n} = b_{1} \\
\quad \; x_{2} & + \; a_{2 \, r+1} x_{r+1} + \cdots + a_{2 n} x_{n} = b_{2} \\
\quad \; \quad \; \ddots & \; \vdots \quad \quad \quad \quad \quad \, \vdots \\
\quad \; \quad \; \quad \; \quad x_{r} & + \; a_{r \, r+1} x_{r+1} + \cdots + a_{r n} x_{n} = b_{r} \\
\end{array} \right. \tag{5.4.3} \\ \\
\iff \left\{ \; \begin{split}
x_{1} &= b_{1} - (\, a_{1 \, r+1} x_{r+1} + \cdots + a_{1 n} x_{n} \,) \\
x_{2} &= b_{2} - (\, a_{2 \, r+1} x_{r+1} + \cdots + a_{2 n} x_{n} \,) \\
& \; \; \vdots \\
x_{r} &= b_{r} - (\, a_{r \, r+1} x_{r+1} + \cdots + a_{r n} x_{n} \,) \\
\end{split} \right.
\end{gather*}
⎩ ⎨ ⎧ x 1 x 2 ⋱ x r + a 1 r + 1 x r + 1 + ⋯ + a 1 n x n = b 1 + a 2 r + 1 x r + 1 + ⋯ + a 2 n x n = b 2 ⋮ ⋮ + a r r + 1 x r + 1 + ⋯ + a r n x n = b r ⟺ ⎩ ⎨ ⎧ x 1 x 2 x r = b 1 − ( a 1 r + 1 x r + 1 + ⋯ + a 1 n x n ) = b 2 − ( a 2 r + 1 x r + 1 + ⋯ + a 2 n x n ) ⋮ = b r − ( a r r + 1 x r + 1 + ⋯ + a r n x n ) ( 5.4.3 ) ここで、d r + 1 , ⋯ , d n ∈ K d_{r+1}, \cdots, d_{n} \in K d r + 1 , ⋯ , d n ∈ K を任意のスカラーとして、( n − r ) (n - r) ( n − r ) 個の変数 x r + 1 , ⋯ , x n x_{r+1}, \cdots, x_{n} x r + 1 , ⋯ , x n について x r + 1 = d r + 1 , ⋯ , x n = d n x_{r+1} = d_{r+1}, \cdots, x_{n} = d_{n} x r + 1 = d r + 1 , ⋯ , x n = d n とすると、A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ の解は次のように表すことができます。 { x 1 = b 1 − ( a 1 r + 1 d r + 1 + ⋯ + a 1 n d n ) x 2 = b 2 − ( a 2 r + 1 d r + 1 + ⋯ + a 2 n d n ) ⋮ x r = b r − ( a r r + 1 d r + 1 + ⋯ + a r n d n ) x r + 1 = d r + 1 ⋮ x n = d n (5.4.4)
\left\{ \; \begin{split}
x_{1} &= b_{1} - (\, a_{1 \, r+1} d_{r+1} + \cdots + a_{1 n} d_{n} \,) \\
x_{2} &= b_{2} - (\, a_{2 \, r+1} d_{r+1} + \cdots + a_{2 n} d_{n} \,) \\
& \; \; \vdots \\
x_{r} &= b_{r} - (\, a_{r \, r+1} d_{r+1} + \cdots + a_{r n} d_{n} \,) \\
x_{r+1} &= d_{r+1} \\
& \; \; \vdots \\
x_{n} &= d_{n} \\
\end{split} \right. \tag{5.4.4}
⎩ ⎨ ⎧ x 1 x 2 x r x r + 1 x n = b 1 − ( a 1 r + 1 d r + 1 + ⋯ + a 1 n d n ) = b 2 − ( a 2 r + 1 d r + 1 + ⋯ + a 2 n d n ) ⋮ = b r − ( a r r + 1 d r + 1 + ⋯ + a r n d n ) = d r + 1 ⋮ = d n ( 5.4.4 ) 基本変形の可逆性から、これは A x = 0 A \bm{x} = \bm{0} A x = 0 の解に他なりません。 以上から、斉次連立一次方程式 A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b の解を求めることができました。解法の要所は拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) を行標準形 ( A ′ ∣ b ′ ) (\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) ( A ′ ∣ b ′ ) に変形するところであり、基本変形により得られた ( A ′ ∣ b ′ ) (\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) ( A ′ ∣ b ′ ) の形により解が定まります。
一般解と基本解# (5.4.4 5.4.4 5.4.4 )式 より、連立一次方程式の解は、次のように ( n − r ) + 1 (n - r) + 1 ( n − r ) + 1 個の n n n 項列ベクトルの線型結合として表すことができます。
( x 1 x 2 ⋮ x r x r + 1 x r + 2 ⋮ x n ) = ( b 1 b 2 ⋮ b r 0 0 ⋮ 0 ) + d r + 1 ( − a 1 r + 1 − a 2 r + 1 ⋮ − a r r + 1 1 0 ⋮ 0 ) + ⋯ + d n ( − a 1 n − a 2 n ⋮ − a r n 0 0 ⋮ 1 )
\begin{pmatrix}
x_{1} \\ x_{2} \\ \vdots \\ x_{r} \\ x_{r+1} \\ x_{r+2} \\ \vdots \\ x_{n}
\end{pmatrix}
= \begin{pmatrix}
\, b_{1} \, \\ \, b_{2} \, \\ \, \vdots \, \\ \, b_{r} \, \\ \, 0 \, \\ \, 0 \, \\ \, \vdots \, \\ \, 0 \,
\end{pmatrix} + d_{r+1} \begin{pmatrix}
-a_{1 \, r+1} \\ -a_{2 \, r+1} \\ \vdots \\ -a_{r \, r+1} \\ 1 \\ 0 \\ \vdots \\ 0
\end{pmatrix} + \cdots + d_{n} \begin{pmatrix}
-a_{1 n} \\ -a_{2 \, n} \\ \vdots \\ -a_{r n} \\ 0 \\ 0 \\ \vdots \\ 1
\end{pmatrix}
x 1 x 2 ⋮ x r x r + 1 x r + 2 ⋮ x n = b 1 b 2 ⋮ b r 0 0 ⋮ 0 + d r + 1 − a 1 r + 1 − a 2 r + 1 ⋮ − a r r + 1 1 0 ⋮ 0 + ⋯ + d n − a 1 n − a 2 n ⋮ − a r n 0 0 ⋮ 1
それぞれの n n n 項列ベクトルを左から x 0 , x r + 1 , ⋯ , x n \bm{x}_{0}, \bm{x}_{r+1}, \cdots, \bm{x}_{n} x 0 , x r + 1 , ⋯ , x n とすると、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b の解は次のように表すことができます。
x = x 0 + d r + 1 x r + 1 + ⋯ + d n x n
\begin{equation*}
\bm{x} = \bm{x}_{0} + d_{r + 1} \bm{x}_{r + 1} + \cdots + d_{n} \bm{x}_{n}
\end{equation*}
x = x 0 + d r + 1 x r + 1 + ⋯ + d n x n
これは、定理 5.6(連立一次方程式の解の形) に示した連立一次方程式の一般解の形に他なりません。
すなわち、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b の解は、1 1 1 つの特殊解 x 0 \bm{x}_{0} x 0 と、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b と同じ係数行列を持つ斉次連立一次方程式 A x = 0 A \bm{x} = \bm{0} A x = 0 の基本解 x r + 1 , ⋯ , x n \bm{x}_{r + 1}, \cdots, \bm{x}_{n} x r + 1 , ⋯ , x n の線型結合との和として表すことができるということです。
斉次連立一次方程式の解との関係# 拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) を行標準形に変形する操作は b \bm{b} b によりません。( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) を変形して得られる行標準形 ( A ′ ∣ b ′ ) (\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) ( A ′ ∣ b ′ ) の左側のブロック A ′ A^{\prime} A ′ は、係数行列 A A A を行標準形に変形して得られる行列 A ′ A^{\prime} A ′ と等しくなります。
したがって、斉次連立一次方程式 A x = 0 A \bm{x} = \bm{0} A x = 0 の任意の解を y \bm{y} y とすれば、y \bm{y} y は次のように表すことができます。
y = d r + 1 x r + 1 + ⋯ + d n x n
\begin{equation*}
\bm{y} = d_{r + 1} \bm{x}_{r + 1} + \cdots + d_{n} \bm{x}_{n}
\end{equation*}
y = d r + 1 x r + 1 + ⋯ + d n x n
以上から、連立一次方程式 A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b の解 x \bm{x} x と、同じ係数行列を持つ斉次連立一次方程式 A x = 0 A \bm{x} = \bm{0} A x = 0 の解 y \bm{y} y の間には次の関係が成り立ちます。
x = x 0 + y
\bm{x} = \bm{x}_{0} + \bm{y}
x = x 0 + y
この考察もまた、定理 5.5(連立一次方程式の解の集合) の主張に整合するものです。
解法の注意点# 基本変形による解法の妥当性# 行列の基本変形による解法において、もとの連立一次方程式 A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b と、変形後の A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ が同じ解を持つということは重要な点です。
連立一次方程式の変形が可逆的であり 2 2 2 つの連立一次方程式が同じ解を持つということが、基本変形によるこの解法に妥当性を与えているからです。
基本変形に対応する操作# 行列の基本変形のすべての操作が可逆的であることは定理 5.7(基本変形の可逆性) により担保されます。
一方で、連立一次方程式の基本変形に関して、可逆的であることが証明されているのは行基本変形に対応する操作についてのみです(定理 5.16(基本変形の可逆性) )。つまり、列基本変形に対応する連立一次方程式の変形に関しては、必ずしも可逆的であるとはいえません。
上記の解法では、行標準形を得るために列の入れ替えの操作を行いますが、これは問題ないのでしょうか?係数行列における列の入れ替えの操作は、連立一次方程式に対するどのような操作に対応しているのでしょうか?
列の入れ替えに対応する操作# 結論からいえば、係数拡大行列における列の入れ替えは、対応する連立一次方程式における変数の和の順番の入れ替え に相当し、行っても問題ありません。
例えば、係数拡大行列において、次のように第 i i i 列と第 j j j 列を入れ替えることを考えます。
( ⋯ a 1 i a 2 i ⋮ a m i ⋯ a 1 j a 2 j ⋮ a m j ⋯ b 1 b 2 ⋮ b m ) ⟶ ( ⋯ a 1 j a 2 j ⋮ a m j ⋯ a 1 i a 2 i ⋮ a m i ⋯ b 1 b 2 ⋮ b m )
\begin{gather*}
& \left( \begin{array} {ccccc|c}
\cdots &
\fbox{a 1 i a 2 i ⋮ a m i \begin{matrix}
a_{1i} \\ a_{2i} \\ \vdots \\ a_{mi}
\end{matrix} a 1 i a 2 i ⋮ a mi } & \cdots &
\fbox{a 1 j a 2 j ⋮ a m j \begin{matrix}
a_{1j} \\ a_{2j} \\ \vdots \\ a_{mj}
\end{matrix} a 1 j a 2 j ⋮ a mj } & \cdots &
\begin{matrix}
b_{1} \\ b_{2} \\ \vdots \\ b_{m}
\end{matrix}
\end{array} \right) \\ \\
\longrightarrow
& \left( \begin{array} {ccccc|c}
\cdots &
\fbox{a 1 j a 2 j ⋮ a m j \begin{matrix}
a_{1j} \\ a_{2j} \\ \vdots \\ a_{mj}
\end{matrix} a 1 j a 2 j ⋮ a mj } & \cdots &
\fbox{a 1 i a 2 i ⋮ a m i \begin{matrix}
a_{1i} \\ a_{2i} \\ \vdots \\ a_{mi}
\end{matrix} a 1 i a 2 i ⋮ a mi } & \cdots &
\begin{matrix}
b_{1} \\ b_{2} \\ \vdots \\ b_{m}
\end{matrix}
\end{array} \right)
\end{gather*}
⟶ ⋯ a 1 i a 2 i ⋮ a mi ⋯ a 1 j a 2 j ⋮ a mj ⋯ b 1 b 2 ⋮ b m ⋯ a 1 j a 2 j ⋮ a mj ⋯ a 1 i a 2 i ⋮ a mi ⋯ b 1 b 2 ⋮ b m
これは、対応する連立一次方程式において第 i i i 項と第 j j j 項を入れ替えることに相当します。
{ ⋯ + ⋯ + ⋮ ⋯ + a 1 i x 1 a 2 i x i ⋮ a m i x i + ⋯ + + ⋯ + ⋮ + ⋯ + a 1 j x j a 2 j x j ⋮ a m j x j + ⋯ = b 1 + ⋯ = b 2 ⋮ + ⋯ = b m ⟺ { ⋯ + ⋯ + ⋮ ⋯ + a 1 j x j a 2 j x j ⋮ a m j x j + ⋯ + + ⋯ + ⋮ + ⋯ + a 1 i x 1 a 2 i x i ⋮ a m i x i + ⋯ = b 1 + ⋯ = b 2 ⋮ + ⋯ = b m
\begin{gather*}
& \left\{ \begin{array} {ccccc}
\begin{matrix}
\cdots + \\ \cdots + \\ \phantom{\vdots} \\ \cdots +
\end{matrix} &
\fbox{a 1 i x 1 a 2 i x i ⋮ a m i x i \begin{matrix}
a_{1i} x_{1} \\ a_{2i} x_{i} \\ \vdots \\ a_{mi} x_{i}
\end{matrix} a 1 i x 1 a 2 i x i ⋮ a mi x i } &
\begin{matrix}
+ \cdots + \\ + \cdots + \\ \phantom{\vdots} \\ + \cdots +
\end{matrix} &
\fbox{a 1 j x j a 2 j x j ⋮ a m j x j \begin{matrix}
a_{1j} x_{j} \\ a_{2j} x_{j} \\ \vdots \\ a_{mj} x_{j}
\end{matrix} a 1 j x j a 2 j x j ⋮ a mj x j } &
\begin{matrix}
+ \cdots = b_{1} \\ + \cdots = b_{2} \\ \phantom{\vdots} \\ + \cdots = b_{m}
\end{matrix}
\end{array} \right. \tag{∗ \ast ∗ } \\ \\
& \iff \left\{ \begin{array} {ccccc}
\begin{matrix}
\cdots + \\ \cdots + \\ \phantom{\vdots} \\ \cdots +
\end{matrix} &
\fbox{a 1 j x j a 2 j x j ⋮ a m j x j \begin{matrix}
a_{1j} x_{j} \\ a_{2j} x_{j} \\ \vdots \\ a_{mj} x_{j}
\end{matrix} a 1 j x j a 2 j x j ⋮ a mj x j } &
\begin{matrix}
+ \cdots + \\ + \cdots + \\ \phantom{\vdots} \\ + \cdots +
\end{matrix} &
\fbox{a 1 i x 1 a 2 i x i ⋮ a m i x i \begin{matrix}
a_{1i} x_{1} \\ a_{2i} x_{i} \\ \vdots \\ a_{mi} x_{i}
\end{matrix} a 1 i x 1 a 2 i x i ⋮ a mi x i } &
\begin{matrix}
+ \cdots = b_{1} \\ + \cdots = b_{2} \\ \phantom{\vdots} \\ + \cdots = b_{m}
\end{matrix}
\end{array} \tag{∗ ′ \ast^{\prime} ∗ ′ } \right.
\end{gather*}
⎩ ⎨ ⎧ ⋯ + ⋯ + ⋮ ⋯ + a 1 i x 1 a 2 i x i ⋮ a mi x i + ⋯ + + ⋯ + ⋮ + ⋯ + a 1 j x j a 2 j x j ⋮ a mj x j + ⋯ = b 1 + ⋯ = b 2 ⋮ + ⋯ = b m ⟺ ⎩ ⎨ ⎧ ⋯ + ⋯ + ⋮ ⋯ + a 1 j x j a 2 j x j ⋮ a mj x j + ⋯ + + ⋯ + ⋮ + ⋯ + a 1 i x 1 a 2 i x i ⋮ a mi x i + ⋯ = b 1 + ⋯ = b 2 ⋮ + ⋯ = b m ( ∗ ) ( ∗ ′ )
それぞれの方程式において、各項の和の順序は任意です。したがって(∗ \ast ∗ )と(∗ ′ \ast^{\prime} ∗ ′ )はまったく同じ連立一次方程式といえます。
つまり、上記の解法の手順 おいて(行基本変形に加えて)列の入れ替えを行っても問題なく、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b と A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ は同じ解を持つ連立一次方程式であるといえます。
定数項に対応する最右列(b \bm{b} b )は入れ替えてはいけない# ただし、拡大係数行列の最右列とその他の列を入れ替えてはいけません。
拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) の最右列にある b \bm{b} b は、連立一次方程式の各方程式の右辺にある定数項(b 1 , ⋯ , b m b_{1}, \cdots, b_{m} b 1 , ⋯ , b m )に対応しています。これを他の項と入れ替えてしまうと、拡大係数行列と連立一次方程式の対応が崩れてしまいます。
したがって、拡大係数行列を変形して行標準形を得る際は、行基本変形に加えて、最右列を除く列の入れ替えは行っても問題ない 、といえます。
解の変数の順序# 列の入れ替え操作を行った場合、注意すべき点があります。それは、得られた解における変数の順序です。
上記の(∗ \ast ∗ ) と(∗ ′ \ast^{\prime} ∗ ′ ) をそれぞれ A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b と A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ と表したとき、係数拡大行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) から ( A ′ ∣ b ′ ) (\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) ( A ′ ∣ b ′ ) への変形に伴って(解にあたる)変数ベクトル x \bm{x} x がどのように変化するか考えてみましょう。
注意深くみれば、もとの(∗ \ast ∗ ) の解に対応する x \bm{x} x に対して、変形後の(∗ ′ \ast^{\prime} ∗ ′ ) の解に対応する x ′ \bm{x}^{\prime} x ′ では第 i i i 項と第 j j j 項が入れ替わっていることがわかります。
x = ( ⋮ x i ⋮ x j ⋮ ) , x ′ = ( ⋮ x j ⋮ x i ⋮ )
\begin{array} {ccc}
\bm{x} = \begin{pmatrix}
\, \vdots \, \\ \, x_{i} \, \\ \, \vdots \, \\ \, x_{j} \, \\ \, \vdots \,
\end{pmatrix},
& & \bm{x}^{\prime} = \begin{pmatrix}
\, \vdots \, \\ \, x_{j} \, \\ \, \vdots \, \\ \, x_{i} \, \\ \, \vdots \,
\end{pmatrix} &
\end{array}
x = ⋮ x i ⋮ x j ⋮ , x ′ = ⋮ x j ⋮ x i ⋮
すなわち、係数拡大行列を行標準形に変形する際に列の入れ替えを行った場合、得られた解において、対応する変数の順序も(列の順序に合わせて)入れ替わっていなければなりません。
基本変形による解法を用いて連立一次方程式を解く際は、この点を忘れないよう充分注意する必要があります。
解法の例# 行列の基本変形による解法の例として、次の 2 2 2 つの連立一次方程式を行列の基本変形を用いて解いてみます。
例題1(行基本変形のみの場合)# 次の連立一次方程式を解け。
{ x y + 3 z = 1 y + z = 3 2 x − y + 5 z = − 1
\begin{align*}
\left\{ \; \begin{alignat*} {5}
& & & x & & \phantom{y} + {} & 3 & z = {} & {} & 1 \\
& & & & & y + {} & & z = {} & {} & 3 \\
& & 2 & x - {} & & y + {} & 5 & z = {} & - {} & 1 \\
\end{alignat*} \right.
\end{align*}
⎩ ⎨ ⎧ 2 x x − y + y + y + 3 5 z = z = z = − 1 3 1
解答(例題1)# 与えられた連立一次方程式を A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b のように表すと、拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) は、行基本変形により次のような階段行列に変形することができる。
( A ∣ b ) = ( 1 0 3 1 0 1 1 3 2 − 1 5 − 1 ) ⟶ ( i ) ( 1 0 3 1 0 1 1 3 0 − 1 − 1 − 3 ) ⟶ ( ii ) ( 1 0 3 1 0 1 1 3 0 0 0 0 )
\begin{split}
(\, A \mid \bm{b} \,)
&= \left( \begin{array} {ccc|c}
1 & 0 & 3 & 1 \\
0 & 1 & 1 & 3 \\
2 & -1 & 5 & -1 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{i})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {ccc|c}
1 & 0 & 3 & 1 \\
0 & 1 & 1 & 3 \\
0 & -1 & -1 & -3 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{ii})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {ccc|c}
1 & 0 & 3 & 1 \\
0 & 1 & 1 & 3 \\
0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
\end{split}
( A ∣ b ) = 1 0 2 0 1 − 1 3 1 5 1 3 − 1 ⟶ ( i ) 1 0 0 0 1 − 1 3 1 − 1 1 3 − 3 ⟶ ( ii ) 1 0 0 0 1 0 3 1 0 1 3 0
したがって、係数行列 A A A の階数と拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) の階数はともに 2 2 2 に等しく、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b は解を持つ。上記の変形により得られた拡大係数行列は既に行標準形であり、対応する斉次連立一次方程式は次の通り。また、変形は可逆的であるからこれは A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b と同じ解をもつ。
{ x y + 3 z = 1 x + y + z = 3
\begin{align*}
\left\{ \; \begin{alignat*} {5}
& & & x & & \phantom{y +} & 3 & z = {} & {} & 1 \\
& & & \phantom{x +} & & y + {} & & z = {} & {} & 3 \\
\end{alignat*} \right.
\end{align*}
{ x x + y + y + 3 z = z = 1 3
したがって、d d d を任意のスカラーとすると A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b の解は次のとおり。
{ x = 1 − 3 d y = 3 − d z = d
\begin{gather*}
\left\{ \; \; \begin{split}
x &= 1 - 3 d \\
y &= 3 - d \\
z &= d \\
\end{split} \right.
\end{gather*}
⎩ ⎨ ⎧ x y z = 1 − 3 d = 3 − d = d
これをベクトルとして表せば次のようになる。
x = ( 1 3 0 ) + d ( − 3 − 1 1 )
\bm{x} = \begin{pmatrix}
\, 1 \, \\ \, 3 \, \\ \, 0 \,
\end{pmatrix} + d \begin{pmatrix}
\, -3 \, \\ \, -1 \, \\ \, 1 \,
\end{pmatrix}
x = 1 3 0 + d − 3 − 1 1
解答の考え方(例題1)# 基本変形による解法の手順 に従います。(1 1 1 )拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) を階段行列に変形して解の有無を判定した後に(2 2 2 )更に行標準形 ( A ′ ∣ b ′ ) (\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) ( A ′ ∣ b ′ ) まで標準化を進め(3 3 3 )簡単になった連立一次方程式 A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ を解きます。
(1)解の有無の判定# 階段行列への変形は次のような手順で行います。
( A ∣ b ) = ( 1 0 3 1 0 1 1 3 2 − 1 5 − 1 ) ⟶ ( i ) ( 1 0 3 1 0 1 1 3 0 − 1 − 1 − 3 ) ⟶ ( ii ) ( 1 0 3 1 0 1 1 3 0 0 0 0 )
\begin{split}
(\, A \mid \bm{b} \,)
&= \left( \begin{array} {ccc|c}
1 & 0 & 3 & 1 \\
0 & 1 & 1 & 3 \\
2 & -1 & 5 & -1 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{i})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {ccc|c}
1 & 0 & 3 & 1 \\
0 & 1 & 1 & 3 \\
0 & -1 & -1 & -3 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{ii})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {ccc|c}
1 & 0 & 3 & 1 \\
0 & 1 & 1 & 3 \\
0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
\end{split}
( A ∣ b ) = 1 0 2 0 1 − 1 3 1 5 1 3 − 1 ⟶ ( i ) 1 0 0 0 1 − 1 3 1 − 1 1 3 − 3 ⟶ ( ii ) 1 0 0 0 1 0 3 1 0 1 3 0
変形の結果得られる階段行列は次のようになります。
( 1 0 3 1 0 1 1 3 0 0 0 0 )
\left( \begin{array} {ccc|c}
1 & 0 & 3 & 1 \\
0 & 1 & 1 & 3 \\
\hline
0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right)
1 0 0 0 1 0 3 1 0 1 3 0
左側のブロックは係数行列 A A A を変形して得られる階段行列に等しく、A A A の階数が 2 2 2 であることがわかります(定理 5.11(階段行列) )。 右下のブロックをみると、( 3 , 4 ) (3, 4) ( 3 , 4 ) 成分が 0 0 0 に等しいことがわかります。すなわち、拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) の階数も 2 2 2 であり、係数行列の階数に等しくなります。 よって、rank A = rank ( A ∣ b ) \text{rank} \, A = \text{rank} \, (\, A \mid \bm{b} \,) rank A = rank ( A ∣ b ) が成り立ち、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b が解を持つための条件(定理 5.1(連立一次方程式が解を持つための条件) )を満たすことが確かめられました。
(2)行標準形への変形# (1 1 1 )解の有無の判定 で得られた階段行列は、既に行標準形となっています。この場合、更なる変形の操作は不要です。
(3)解の整理# 変形により得られた連立一次方程式 A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ は次の通りです。
{ x y + 3 z = 1 x + y + z = 3 ⟺ { x = 1 − 3 z y = 3 − z
\begin{gather*}
\left\{ \; \begin{alignat*} {5}
& & & x & & \phantom{y +} & 3 & z = {} & {} & 1 \\
& & & \phantom{x +} & & y + {} & & z = {} & {} & 3 \\
\end{alignat*} \right. \\
\iff \left\{ \; \begin{split}
x &= 1 - 3 z \\
y &= 3 - z \\
\end{split} \right.
\end{gather*}
{ x x + y + y + 3 z = z = 1 3 ⟺ { x y = 1 − 3 z = 3 − z
ここで、d d d を任意定数として z = d z = d z = d ( d ∈ K ) \; (\, d \in K \,) ( d ∈ K ) とすることで解が得られます。
{ x = 1 − 3 z y = 3 − z z = d
\begin{gather*}
\left\{ \; \; \begin{split}
x &= 1 - 3 z \\
y &= 3 - z \\
z &= d \\
\end{split} \right.
\end{gather*}
⎩ ⎨ ⎧ x y z = 1 − 3 z = 3 − z = d
例題2(列の入れ替えを含む場合)# 次の連立一次方程式を解け。
{ 3 x 2 + 3 x 3 − 2 x 4 = − 4 x 1 + x 2 + 2 x 3 + 3 x 4 = 2 x 1 + 2 x 2 + 3 x 3 + 2 x 4 = 1 x 1 + 3 x 2 + 4 x 3 + 2 x 4 = − 1
\begin{align*}
\left\{ \; \begin{alignat*} {7}
& & & & 3 & x_{2} + {} & 3 & x_{3} - {} & 2 & x_{4} = {} & - {} & 4 \\
& & & x_{1} + {} & & x_{2} + {} & 2 & x_{3} + {} & 3 & x_{4} = {} & & 2 \\
& & & x_{1} + {} & 2 & x_{2} + {} & 3 & x_{3} + {} & 2 & x_{4} = {} & & 1 \\
& & & x_{1} + {} & 3 & x_{2} + {} & 4 & x_{3} + {} & 2 & x_{4} = {} & - {} & 1 \\
\end{alignat*} \right.
\end{align*}
⎩ ⎨ ⎧ x 1 + x 1 + x 1 + 3 2 3 x 2 + x 2 + x 2 + x 2 + 3 2 3 4 x 3 − x 3 + x 3 + x 3 + 2 3 2 2 x 4 = x 4 = x 4 = x 4 = − − 4 2 1 1
解答(例題2)# 与えられた連立一次方程式を A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b のように表すと、拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) は、行基本変形により次のような階段行列に変形することができる。
( A ∣ b ) = ( 0 3 3 − 2 − 4 1 1 2 3 2 1 2 3 2 1 1 3 4 2 − 1 ) ⟶ ( i ) ( 1 1 2 3 2 0 3 3 − 2 − 4 0 1 1 − 1 − 1 0 2 2 − 1 − 3 ) ⟶ ( ii ) ( 1 1 2 3 2 0 1 1 − 1 − 1 0 0 0 1 − 1 0 0 0 1 − 1 ) ⟶ ( iii ) ( 1 1 2 3 2 0 1 1 − 1 − 1 0 0 0 1 − 1 0 0 0 0 0 )
\begin{split}
(\, A \mid \bm{b} \,)
&= \left( \begin{array} {cccc|c}
0 & 3 & 3 & -2 & -4 \\
1 & 1 & 2 & 3 & 2 \\
1 & 2 & 3 & 2 & 1 \\
1 & 3 & 4 & 2 & -1 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{i})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 1 & 2 & 3 & 2 \\
0 & 3 & 3 & -2 & -4 \\
0 & 1 & 1 & -1 & -1 \\
0 & 2 & 2 & -1 & -3 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{ii})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 1 & 2 & 3 & 2 \\
0 & 1 & 1 & -1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{iii})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 1 & 2 & 3 & 2 \\
0 & 1 & 1 & -1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
\end{split}
( A ∣ b ) = 0 1 1 1 3 1 2 3 3 2 3 4 − 2 3 2 2 − 4 2 1 − 1 ⟶ ( i ) 1 0 0 0 1 3 1 2 2 3 1 2 3 − 2 − 1 − 1 2 − 4 − 1 − 3 ⟶ ( ii ) 1 0 0 0 1 1 0 0 2 1 0 0 3 − 1 1 1 2 − 1 − 1 − 1 ⟶ ( iii ) 1 0 0 0 1 1 0 0 2 1 0 0 3 − 1 1 0 2 − 1 − 1 0
したがって、係数行列 A A A の階数と拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) の階数はともに 3 3 3 に等しく、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b は解を持つ。また、( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) は、更に行基本変形と列の入れ替えを行うことで、行標準形に変形することができる。
( A ∣ b ) ⟶ ( iv ) ( 1 0 1 4 3 0 1 1 − 1 − 1 0 0 0 1 − 1 0 0 0 0 0 ) ⟶ ( v ) ( 1 0 1 0 7 0 1 1 0 − 2 0 0 0 1 − 1 0 0 0 0 0 ) ⟶ ( vi ) ( 1 0 0 1 7 0 1 0 1 − 2 0 0 1 0 − 1 0 0 0 0 0 )
\begin{split}
\phantom{(\, A \mid \bm{b} \,)} & \\
&\overset{(\text{iv})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 0 & 1 & 4 & 3 \\
0 & 1 & 1 & -1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{v})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 0 & 1 & 0 & 7 \\
0 & 1 & 1 & 0 & -2 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{vi})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 0 & 0 & 1 & 7 \\
0 & 1 & 0 & 1 & -2 \\
0 & 0 & 1 & 0 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
\end{split}
( A ∣ b ) ⟶ ( iv ) 1 0 0 0 0 1 0 0 1 1 0 0 4 − 1 1 0 3 − 1 − 1 0 ⟶ ( v ) 1 0 0 0 0 1 0 0 1 1 0 0 0 0 1 0 7 − 2 − 1 0 ⟶ ( vi ) 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 1 1 0 0 7 − 2 − 1 0
(vi \text{vi} vi )で第 3 3 3 列と第 4 4 4 列を入れ替えたので、変形により得られた斉次連立一次方程式は次のようになり、これは A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b と同じ解をもつ。
{ x 1 x 2 + x 4 + + x 3 = 7 x 1 + x 2 x 4 + + x 3 = − 2 x 1 + x 2 + x 4 x 3 = − 1
\begin{align*}
\left\{ \; \begin{alignat*} {7}
& & & x_{1} & & \phantom{x_{2} +} & & \phantom{x_{4} +} + {} & & x_{3} = {} & {} & 7 \\
& & & \phantom{x_{1} +} & & x_{2} & & \phantom{x_{4} +} + {} & & x_{3} = {} & - {} & 2 \\
& & & \phantom{x_{1} +} & & \phantom{x_{2} +} & & x_{4} & & \phantom{x_{3}} = {} & - {} & 1 \\
\end{alignat*} \right.
\end{align*}
⎩ ⎨ ⎧ x 1 x 1 + x 1 + x 2 + x 2 x 2 + x 4 + + x 4 + + x 4 x 3 = x 3 = x 3 = − − 7 2 1
したがって、d d d を任意のスカラーとすると A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b の解は次のとおり。
{ x 1 = 7 − d x 2 = − 2 − d x 3 = d x 4 = − 1
\begin{gather*}
\left\{ \; \; \begin{split}
x_{1} &= 7 - d \\
x_{2} &= -2 - d \\
x_{3} &= d \\
x_{4} &= -1 \\
\end{split} \right.
\end{gather*}
⎩ ⎨ ⎧ x 1 x 2 x 3 x 4 = 7 − d = − 2 − d = d = − 1
これをベクトルとして表せば次のようになる。
x = ( 7 − 2 0 − 1 ) + d ( − 1 − 1 1 0 )
\bm{x} = \begin{pmatrix}
\, 7 \, \\ \, -2 \, \\ \, 0 \, \\ \, -1 \,
\end{pmatrix} + d \begin{pmatrix}
\, -1 \, \\ \, -1 \, \\ \, 1 \, \\ \, 0 \,
\end{pmatrix}
x = 7 − 2 0 − 1 + d − 1 − 1 1 0
解答の考え方(例題2)# 基本変形による解法の手順 に従います。(1 1 1 )拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) を階段行列に変形して解の有無を判定した後に(2 2 2 )更に行標準形 ( A ′ ∣ b ′ ) (\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) ( A ′ ∣ b ′ ) まで標準化を進め(3 3 3 )簡単になった連立一次方程式 A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ を解きます。
(1)解の有無の判定# 階段行列への変形は次のような手順で行います。なお、解の有無判定までは前項 の例題1とまったく同じです。
( A ∣ b ) = ( 0 3 3 − 2 − 4 1 1 2 3 2 1 2 3 2 1 1 3 4 2 − 1 ) ⟶ ( i ) ( 1 1 2 3 2 0 3 3 − 2 − 4 0 1 1 − 1 − 1 0 2 2 − 1 − 3 ) ⟶ ( ii ) ( 1 1 2 3 2 0 1 1 − 1 − 1 0 0 0 1 − 1 0 0 0 1 − 1 ) ⟶ ( iii ) ( 1 1 2 3 2 0 1 1 − 1 − 1 0 0 0 1 − 1 0 0 0 0 0 )
\begin{split}
(\, A \mid \bm{b} \,)
&= \left( \begin{array} {cccc|c}
0 & 3 & 3 & -2 & -4 \\
1 & 1 & 2 & 3 & 2 \\
1 & 2 & 3 & 2 & 1 \\
1 & 3 & 4 & 2 & -1 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{i})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 1 & 2 & 3 & 2 \\
0 & 3 & 3 & -2 & -4 \\
0 & 1 & 1 & -1 & -1 \\
0 & 2 & 2 & -1 & -3 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{ii})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 1 & 2 & 3 & 2 \\
0 & 1 & 1 & -1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{iii})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 1 & 2 & 3 & 2 \\
0 & 1 & 1 & -1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
\end{split}
( A ∣ b ) = 0 1 1 1 3 1 2 3 3 2 3 4 − 2 3 2 2 − 4 2 1 − 1 ⟶ ( i ) 1 0 0 0 1 3 1 2 2 3 1 2 3 − 2 − 1 − 1 2 − 4 − 1 − 3 ⟶ ( ii ) 1 0 0 0 1 1 0 0 2 1 0 0 3 − 1 1 1 2 − 1 − 1 − 1 ⟶ ( iii ) 1 0 0 0 1 1 0 0 2 1 0 0 3 − 1 1 0 2 − 1 − 1 0
変形の結果得られる階段行列は次のようになります。
( 1 1 2 3 2 0 1 1 − 1 − 1 0 0 0 1 − 1 0 0 0 0 0 )
\left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 1 & 2 & 3 & 2 \\
0 & 1 & 1 & -1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
\hline
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right)
1 0 0 0 1 1 0 0 2 1 0 0 3 − 1 1 0 2 − 1 − 1 0
左側のブロックは係数行列 A A A を変形して得られる階段行列に等しく、A A A の階数が 3 3 3 であることがわかります(定理 5.11(階段行列) )。 右下のブロックをみると、( 4 , 5 ) (4, 5) ( 4 , 5 ) 成分が 0 0 0 に等しいことがわかります。すなわち、拡大係数行列 ( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) も 3 3 3 であり、係数行列 A A A の階数に等しくなります。 よって、rank A = rank ( A ∣ b ) \text{rank} \, A = \text{rank} \, (\, A \mid \bm{b} \,) rank A = rank ( A ∣ b ) が成り立ち、A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b が解を持つための条件(定理 5.1(連立一次方程式が解を持つための条件) )を満たすことが確かめられました。
(2)行標準形への変形# 上記の階段行列に対して、更に行基本変形と列の入れ替えを行い、行標準形まで標準化を進めます。行標準形への変形は次のような手順で行います。
( A ∣ b ) ( 1 1 2 3 2 0 1 1 − 1 − 1 0 0 0 1 − 1 0 0 0 0 0 ) ⟶ ( iv ) ( 1 0 1 4 3 0 1 1 − 1 − 1 0 0 0 1 − 1 0 0 0 0 0 ) ⟶ ( v ) ( 1 0 1 0 7 0 1 1 0 − 2 0 0 0 1 − 1 0 0 0 0 0 ) ⟶ ( vi ) ( 1 0 0 1 7 0 1 0 1 − 2 0 0 1 0 − 1 0 0 0 0 0 )
\begin{split}
\phantom{(\, A \mid \bm{b} \,)} & \\
& \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 1 & 2 & 3 & 2 \\
0 & 1 & 1 & -1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{iv})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 0 & 1 & 4 & 3 \\
0 & 1 & 1 & -1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{v})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 0 & 1 & 0 & 7 \\
0 & 1 & 1 & 0 & -2 \\
0 & 0 & 0 & 1 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
&\overset{(\text{vi})}{\longrightarrow} \; \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 0 & 0 & 1 & 7 \\
0 & 1 & 0 & 1 & -2 \\
0 & 0 & 1 & 0 & -1 \\
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right) \\
\end{split}
( A ∣ b ) 1 0 0 0 1 1 0 0 2 1 0 0 3 − 1 1 0 2 − 1 − 1 0 ⟶ ( iv ) 1 0 0 0 0 1 0 0 1 1 0 0 4 − 1 1 0 3 − 1 − 1 0 ⟶ ( v ) 1 0 0 0 0 1 0 0 1 1 0 0 0 0 1 0 7 − 2 − 1 0 ⟶ ( vi ) 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 1 1 0 0 7 − 2 − 1 0
変形の結果得られる行標準形 ( A ′ ∣ b ′ ) (\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) ( A ′ ∣ b ′ ) は次のようになります。
A ′ = ( 1 0 0 1 7 0 1 0 1 − 2 0 0 1 0 − 1 0 0 0 0 0 )
A^{\prime} = \left( \begin{array} {cccc|c}
1 & 0 & 0 & 1 & 7 \\
0 & 1 & 0 & 1 & -2 \\
0 & 0 & 1 & 0 & -1 \\
\hline
0 & 0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array} \right)
A ′ = 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 1 1 0 0 7 − 2 − 1 0
(3)解の整理# 変形により得られた連立一次方程式 A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ は次の通りです。
{ x 1 x 2 + x 4 + + x 3 = 7 x 1 + x 2 x 4 + + x 3 = − 2 x 1 + x 2 + x 4 x 3 = − 1
\begin{gather*}
\left\{ \; \begin{alignat*} {7}
& & & x_{1} & & \phantom{x_{2} +} & & \phantom{x_{4} +} + {} & & x_{3} = {} & {} & 7 \\
& & & \phantom{x_{1} +} & & x_{2} & & \phantom{x_{4} +} + {} & & x_{3} = {} & - {} & 2 \\
& & & \phantom{x_{1} +} & & \phantom{x_{2} +} & & x_{4} & & \phantom{x_{3}} = {} & - {} & 1 \\
\end{alignat*} \right.
\end{gather*}
⎩ ⎨ ⎧ x 1 x 1 + x 1 + x 2 + x 2 x 2 + x 4 + + x 4 + + x 4 x 3 = x 3 = x 3 = − − 7 2 1
例題1 と異なり、行基本変形に加えて、列の入れ替えの操作を行うことで行標準形への変形が完了します。変形(vi \text{vi} vi )における第 3 3 3 列と第 4 4 4 列を入れ替えに伴って、変数の順序(x 3 x_{3} x 3 と x 4 x_{4} x 4 の順序)も入れ替わっている点に注意が必要です。 A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ を解くと、次のようになります。
{ x 1 x 2 + x 4 + + x 3 = 7 x 1 + x 2 x 4 + + x 3 = − 2 x 1 + x 2 + x 4 x 3 = − 1 ⟺ { x 1 = 7 − x 3 x 2 = − 2 − x 3 x 4 = − 1
\begin{gather*}
\left\{ \; \begin{alignat*} {7}
& & & x_{1} & & \phantom{x_{2} +} & & \phantom{x_{4} +} + {} & & x_{3} = {} & {} & 7 \\
& & & \phantom{x_{1} +} & & x_{2} & & \phantom{x_{4} +} + {} & & x_{3} = {} & - {} & 2 \\
& & & \phantom{x_{1} +} & & \phantom{x_{2} +} & & x_{4} & & \phantom{x_{3}} = {} & - {} & 1 \\
\end{alignat*} \right. \\
\iff \left\{ \; \begin{split}
x_{1} &= 7 - x_{3} \\
x_{2} &= -2 - x_{3} \\
x_{4} &= - 1 \\
\end{split} \right.
\end{gather*}
⎩ ⎨ ⎧ x 1 x 1 + x 1 + x 2 + x 2 x 2 + x 4 + + x 4 + + x 4 x 3 = x 3 = x 3 = − − 7 2 1 ⟺ ⎩ ⎨ ⎧ x 1 x 2 x 4 = 7 − x 3 = − 2 − x 3 = − 1
ここで、d d d を任意定数として x 3 = d x_{3} = d x 3 = d ( d ∈ K ) \; (\, d \in K \,) ( d ∈ K ) とすることで解が得られます。
{ x 1 = 7 − d x 2 = − 2 − d x 3 = d x 4 = − 1
\begin{gather*}
\left\{ \; \; \begin{split}
x_{1} &= 7 - d \\
x_{2} &= -2 - d \\
x_{3} &= d \\
x_{4} &= -1 \\
\end{split} \right.
\end{gather*}
⎩ ⎨ ⎧ x 1 x 2 x 3 x 4 = 7 − d = − 2 − d = d = − 1
まとめ# 一般の連立一次方程式(A x = b A \bm{x} = \bm{b} A x = b )は、拡大係数行列を行標準形に変形することで解を得ることができる。
解法の手順は次の通り。
(
1 1 1 )係数拡大行列
( A ∣ b ) (\, A \mid \bm{b} \,) ( A ∣ b ) を階段行列に変形し、解の有無を判定する。
(
2 2 2 )係数拡大行列を行標準形
( A ′ ∣ b ′ ) (\, A^{\prime} \mid \bm{b}^{\prime} \,) ( A ′ ∣ b ′ ) まで変形する。
(
3 3 3 )簡単になった連立一次方程式
A ′ x ′ = b ′ A^{\prime} \bm{x}^{\prime} = \bm{b}^{\prime} A ′ x ′ = b ′ を解いて、解を整理する。
手順(2 2 2 )行標準形への変形において列の入れ替えの操作を行った場合、連立方程式の対応する変数の順序を入れ替える必要がある。
手順(2 2 2 )行標準形への変形において 、連立一次方程式の定数項に対応する最右列(b \bm{b} b )と他の列を入れ替えてはいけない。
[1] 齋藤正彦. 線型代数入門. 東京大学出版会. 1966. [2] 永田雅宣 他. 理系のための線型代数の基礎. 紀伊國屋書店. 1986. [3] 川久保勝夫. 線形代数学 [新装版]. 日本評論社. 2010. [4] 松坂和夫. 線型代数入門 [新装版]. 岩波書店. 2018. [5] 三宅敏恒. 線形代数学 初歩からジョルダン標準形へ. 培風館. 2008. [6] S. Lang. Linear Algebra Third Edition. Springer. 1987. [7] T. Miyake. Linear Algebra From the Beginnings to the Jordan Normal. Springer. 2022. [8] 雪江明彦. 代数学 1 1 1 群論入門. 日本評論社. 2010. [9] 雪江明彦. 代数学 2 2 2 環と体とガロア理論. 日本評論社. 2010. [10] 桂利行. 代数学 I \text{I} I 群と環. 東京大学出版会. 2004. [11] 松坂和夫. 代数系入門. 岩波書店. 1976. [12] 高木貞治. 代数学講義 [改訂新版]. 共立出版. 1965. [13] S. Lang. Algebra Revised Third Edition. Springer. 2002. [14] M. Artin. Algebra Second Edition. Pearson Education Limited. 2014. [15] 青本和彦 他. 数学入門辞典. 岩波書店. 2005.
初版:2023-07-29 | 改訂:2024-12-04