空間内の直線の方程式

空間内の直線を表すベクトル方程式を示します。

空間内の直線は、方向ベクトルに関するベクトル方程式により与えられます。これは、 平面上の直線を表すベクトル方程式と同じ形になります。また、座標系が与えられている場合、直線の方程式は座標変数に関する連立一次方程式として表されます。

空間内の直線の方程式


定義 1.10(方向ベクトル)

空間内の直線が、次のベクトルに関する方程式で与えられているとき、$\bm{a}$ を方向ベクトル($\text{direction}$ $\text{vector}$)という。

$$ \begin{equation*} \tag{1.4.1} \bm{x} = \bm{x}_{0} + t \bm{a} \end{equation*} $$


解説

方向ベクトルとは:直線に平行なベクトル

方向ベクトルとは、空間内の直線 $l$ に平行なベクトルです。方向ベクトルにより、直線 $l$ の向きが定まります。

空間内の直線の方向ベクトルは、 平面上の直線の方向ベクトルの自然な拡張です。したがって、平面上の直線について成り立つ方向ベクトルの性質は、基本的には、空間内の直線の方向ベクトルついても成り立ちます( 平面上の直線の方程式を参照)。

平面上の直線の場合と同様、 零ベクトルは方向ベクトルになり得ません。つまり (1.4.1)式において $\bm{a} \neq \bm{0}$ となります。


方向ベクトルによる直線の方程式

ベクトル方程式(方向ベクトル)

空間内の直線は、ベクトルに関する方程式(ベクトル方程式)として表すことができます。次の (1.4.1)式は、空間内の直線を表すベクトル方程式です。

$$ \begin{equation*} \tag{1.4.1} \bm{x} = \bm{x}_{0} + t \bm{a} \end{equation*} $$

(1.4.1)式をベクトル $\bm{x}$ に関する方程式としてみると、それぞれ、$\bm{x}_{0}, \bm{a}$ は定数、$\bm{x}$ は変数のように捉えることができます。このようなことから、$\bm{x}_{0}, \bm{a}$ を定数ベクトル、$\bm{x}$ を変数ベクトルと呼びます。

直線のベクトル方程式の意味(方向ベクトル)

次のような変形により、 (1.4.1)式は、「ベクトル $\bm{x} - \bm{x}_{0}$ が方向ベクトル $\bm{a}$ のスカラー倍であるための条件」を表しているともいえます。

$$ \begin{alignat*} {2} && \bm{x} &= \bm{x}_{0} + t \bm{a} \\ & \Leftrightarrow & \quad \bm{x} - \bm{x}_{0} &= t \bm{a} \end{alignat*} $$

このとき、 (1.4.1)式は、下図のように表すことができます。

方向ベクトルに関するベクトル方程式により与えられる空間内の直線

ここで、$\bm{x}_{0}, \bm{x}$ の終点をそれぞれ $X_{0}, X$ とすると、 (1.4.1)式は、「空間内の点 $X$ が($X_{0}$ を通り、$\bm{a}$ に平行な)直線 $l$ 上にあるための条件」を表す方程式であるといえます。

ベクトル方程式の媒介変数

(1.4.1)式において、$t$ は任意の実数であり $- \infin \lt t \lt \infin$ です。したがって、$t \gt 0$ であれば $\bm{x} - \bm{x}_{0}$ は $\bm{a}$ と同じ向きのベクトル、$t \lt 0$ であれば $\bm{x} - \bm{x}_{0}$ は $\bm{a}$ と逆の向きのベクトルとなります。

このような実数 $t$ を、直線の方程式における媒介変数($\text{parameter}$)といいます。


直線を表すベクトル方程式と連立方程式の対応

空間に座標系が与えられているとき、直線を表すベクトル方程式 (1.4.1)式は、座標変数に関する連立一次方程式に対応します。

$$ \begin{equation*} \tag{1.4.1} \bm{x} = \bm{x}_{0} + t \bm{a} \end{equation*} $$

このことは、次のようにして確かめられます。

ベクトルの成分と座標変数の対応

空間に座標系が与えられているとき、 (1.4.1)式の定数ベクトル $\bm{x}_{0}, \bm{a}$ の成分は一意に定まります。また、変数ベクトル $\bm{x}$ の成分を $3$ つの変数(座標変数)を用いて $(x, y, z)$ とすると、ベクトル方程式 (1.4.1)式に現れる $3$ つのベクトル $\bm{x}_{0}, \bm{a}, \bm{x}$ の成分表示は、それぞれ、次のようになります。

$$ \begin{array} {ccc} \bm{x}_{0} = \begin{pmatrix} \, x_{0} \, \\ \, y_{0} \, \\ \, z_{0} \, \end{pmatrix}, & \bm{a} = \begin{pmatrix} \, a_{1} \, \\ \, a_{2} \, \\ \, a_{3} \, \end{pmatrix}, & \bm{x} = \begin{pmatrix} \, x \, \\ \, y \, \\ \, z \, \end{pmatrix} \end{array} $$

このとき、直線を表すベクトル方程式 (1.4.1)式は、次のように表されます。

$$ \begin{align*} & \bm{x} = \bm{x}_{0} + t \bm{a} \\ \Leftrightarrow \; & \left\{ \begin{array} {cc} x = x_{0} + a_{1} t \\ y = y_{0} + a_{2} t \\ z = z_{0} + a_{3} t \\ \end{array} \right. \tag{1.4.2} \end{align*} $$

(1.4.2)式は、 (1.4.1)式を成分ごとに表したものであり、$3$ つの変数 $x, y, z$ に関する連立一次方程式に他なりません。

媒介変数の消去

(1.4.2)式において、座標変数 $x, y, z$ はそれぞれ媒介変数 $t$ により表されているため、次に媒介変数を消去することを考えます。

方向ベクトル $\bm{a}$ が零ベクトルでない($\bm{a} \neq \bm{0}$)ことから、$a_{1}, a_{2}, a_{3}$ の少なくとも $1$ つは $0$ ではありません。そこで、 方向ベクトルの成分のうち $0$ に等しいものがいくつあるかにより場合分けします。

(1)方向ベクトルの $2$ つの成分が $0$ に等しい場合

まず、仮に $a_{1}, \, a_{2}, \, a_{3}$ のうち $2$ つが $0$ に等しければ、残り $1$ つは必ず $0$ でないことになります。例えば、$a_{1} = 0$ $\, \land \,$ $a_{2} = 0$ ならば $a_{3} \neq 0$ であり、このとき (1.4.2)式は次のようになります。

$$ \left\{ \; \, \begin{align*} x &= x_{0} \\ y &= y_{0} \\ z &= z_{0} + a_{3} t \\ \end{align*} \right. $$

ここで、$- \infin \lt t \lt \infin$ より $z$ は任意の実数となるため、媒介変数 $t$ は消去されます。よって、上の式を満たす直線 $l_{1}$ は $z$ 軸に平行な直線となります。また、これは $x$ 軸に垂直な平面 $x = x_{0}$ と $y$ 軸に垂直な平面 $y = y_{0}$ の交線であるともいえます。

座標空間内の直線(方向ベクトルの2つの成分が0に等しい場合)

いま、$a_{1} = 0$ $\, \land \,$ $a_{2} = 0$ $\, \land \,$ $a_{3} \neq 0$ の場合を考えましたが、他の $2$ つの成分が $0$ に等しい場合も、同様に考えることができます。

すなわち、方向ベクトルの $2$ つの成分が $0$ に等しい場合、 (1.4.2)式が表す直線は、座標軸に平行な直線となります。

(2)方向ベクトルの $1$ つの成分が $0$ に等しい場合

次に、$a_{1}, \, a_{2}, \, a_{3}$ のうち $1$ つが $0$ であり残り $2$ つが $0$ でない場合について考えます。例えば、$a_{1} = 0$ $\, \land \,$ $a_{2} \neq 0$ $\, \land \,$ $a_{3} \neq 0$ とすると、このとき (1.4.2)式は次のようになります。

$$ \begin{align*} &\left\{ \; \, \begin{align*} x &= x_{0} \\ y &= y_{0} + a_{2} t \\ z &= z_{0} + a_{3} t \\ \end{align*} \right. \\ \Leftrightarrow \; & \left\{ \; \, \begin{align*} x &= x_{0} \\ (\, t &= \,) \; \frac{\, y - y_{0} \,}{\, a_{2} \,} = \frac{\, z - z_{0} \,}{\, a_{3} \,} \\ \end{align*} \right. \\ \Leftrightarrow \; & \left\{ \; \, \begin{align*} & x = x_{0} \\ & a_{3} y - a_{2} z - (a_{3} y_{0} + a_{2} z_{0}) = 0 \\ \end{align*} \right. \end{align*} $$

次項に詳しく見るように、空間において $1$ つの一次方程式は平面を表します。ここでは、$x = x_{0}$ は $x$ 軸に垂直な平面を、$a_{3} y - a_{2} z - (a_{3} y_{0} + a_{2} z_{0}) = 0$ は $yz$ 平面に垂直な平面を、それぞれ表します。よって、上の式を満たす直線 $l_{2}$ は下図のような $2$ つの平面の交線となります。

座標空間内の直線(方向ベクトルの1つの成分が0に等しい場合)

すなわち、方向ベクトルの $1$ つの成分が $0$ に等しい場合、 (1.4.2)式が表す直線は、座標軸に垂直な平面内の直線となります。

(3)方向ベクトルのすべての成分が $0$ と異なる場合

最後に、$a_{1}, \, a_{2}, \, a_{3}$ のいずれも $0$ でないとすると、$a_{1} \neq 0$ $\, \land \,$ $a_{2} \neq 0$ $\, \land \,$ $a_{3} \neq 0$ であり (1.4.2)式は次のように変形できます。

$$ \begin{gather*} & \left\{ \begin{array} {cc} x = x_{0} + a_{1} t \\ y = y_{0} + a_{2} t \\ z = z_{0} + a_{3} t \\ \end{array} \right. \\ \\ \Leftrightarrow & (\, t = \,) \; \frac{\, x - x_{0} \,}{a_{1}} = \frac{\, y - y_{0} \,}{a_{2}} = \frac{\, z - z_{0} \,}{a_{3}} \tag{1.4.3} \end{gather*} $$

(1.4.3)式には等号が $2$ つありますので、更に、次のような($2$ つの一次方程式からなる)連立一次方程式に変形できます。

$$ \begin{align*} & \frac{\, x - x_{0} \,}{a_{1}} = \frac{\, y - y_{0} \,}{a_{2}} = \frac{\, z - z_{0} \,}{a_{3}} \\ \Leftrightarrow \quad & \left\{ \begin{array} {cc} \displaystyle \frac{\, x - x_{0} \,}{a_{1}} = \frac{\, y - y_{0} \,}{a_{2}} \\ \displaystyle \frac{\, y - y_{0} \,}{a_{2}} = \frac{\, z - z_{0} \,}{a_{3}} \\ \end{array} \right. \\ \Leftrightarrow \quad & \left\{ \begin{array} {cc} a_{2} x - a_{1} y - (a_{2} x_{0} + a_{1} y_{0}) = 0 \\ a_{3} y - a_{2} z - (a_{3} y_{0} + a_{2} z_{0}) = 0 \\ \end{array} \right. \\ \end{align*} $$

$2$ つの一次方程式について、$a_{2} x - a_{1} y - (a_{2} x_{0} + a_{1} y_{0}) = 0$ は $xy$ 平面に垂直な平面を、$a_{3} y - a_{2} z - (a_{3} y_{0} + a_{2} z_{0}) = 0$ は $yz$ 平面に垂直な平面を、それぞれ表します。よって、上の式を満たす直線 $l_{3}$ は、下図のような $2$ つの平面の交線となります。

座標空間内の直線(方向ベクトルのすべての成分が0と異なる場合)

平面の交線により表される直線

以上の考察から、空間に座標系が与えられている場合、直線を表すベクトル方程式 (1.4.1)式は、座標変数に関する連立一次方程式に対応することがわかりました。また、座標空間内の直線は、連立一次方程式の解として、$2$ つの平面の交線として表されることがわかります。

次項に詳しく見るように、空間内の平面は $1$ つの一次方程式により表されます。したがって、基本的には、空間内の直線の方程式は $2$ つの一次方程式からなる連立一次方程式として表されることになります。

また、同様の考え方から、$3$ つの一次方程式からなる連立一次方程式は、空間内の点を表すことがわかります。$3$ つの一次方程式から、$2$ つの平面の交線と、もう $1$ つの平面の交点が得られるためです( 次項の考察を参照)。


法線ベクトルによる直線の方程式

平面上の直線の方程式

平面上の直線をベクトル方程式で表す方法は $2$ 通りありました。次の($1$)方向ベクトルによるベクトル方程式と($2$)法線ベクトルによるベクトル方程式です( 平面上の直線の方程式)。これらは、与えられた条件などにより使い分けられるものであり、どちらも一般によく用いられる方程式です。

$$ \begin{gather*} (1) & \bm{x} = \bm{x}_{0} + t \bm{a} \tag{1.3.1} \\ (2) & (\bm{x} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} = 0 \tag{1.3.4} \end{gather*} $$

ベクトル方程式の使い分け(空間内の直線と平面)

これに対して、空間内の直線については、主に、方向ベクトルによるベクトル方程式を用いるのが一般的です。

($1$)平面上の直線を表す方向ベクトルによる方程式 (1.3.1)式は、同じ形のまま空間内の直線を表すベクトル方程式として拡張することができるためです。また、 次項にみるように、($2$)平面上の直線を表す法線ベクトルによる方程式 (1.3.4)式は、空間内においては平面を表すベクトル方程式に拡張されます。

すなわち、空間内の直線は方向ベクトルを用いて( (1.3.1)式)、空間内の平面は法線ベクトルを用いて( (1.3.4)式)それぞれ表すのが一般的です。

法線ベクトルによる空間内の直線のベクトル方程式

空間内の直線を法線ベクトルによるベクトル方程式として表すこともできますが、この場合、方程式の表現はかなり冗長になります。法線ベクトルを用いて空間内の直線を表そうとすると、$2$ つのベクトル方程式を連立させる必要があるためです。

例えば、$\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}$ を互いに平行でない $2$ つの法線ベクトルとして、$\bm{b}_{1}, \bm{b}_{2}$ により定まる $2$ つの平面の交線は、空間内の直線に対応します。

$$ \left\{ \; \; \begin{align*} (\bm{x} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b}_{1} &= 0 \\ (\bm{x} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b}_{2} &= 0 \end{align*} \right. $$

しかしながら、これは方向ベクトルによる直線の方程式( (1.4.1)式)と比較して明らかに冗長です。このような理由から、空間内の直線を表す方法として、法線ベクトルが用いられることはほどんどありません。


まとめ

  • 空間内の直線は、直線に平行な方向ベクトルに関するベクトル方程式として表すことができる。

    $$ \begin{equation*} \bm{x} = \bm{x}_{0} + t \bm{a} \end{equation*} $$

  • 空間に座標系が与えられているとき、直線を表すベクトル方程式は、座標変数に関する($2$ つの一次方程式からなる)連立一次方程式と同じものになる。


参考文献

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初版:2023-08-28   |   改訂:2025-04-04