直線と平面の方程式 まとめ

直線と平面の方程式に関して、これまでに導いたことをまとめます。

平面上および空間内の直線と平面を表すベクトル方程式について整理します。また、平面上および空間内の点と直線の距離、点と平面の距離の公式について整理します。

直線と平面の方程式(まとめ)

概要

平面上の直線、空間内の直線と平面は、ベクトル方程式により、それぞれ次のように表すことができます。

方程式平面上空間内
直線の方程式(1)x=x0+ta  ,(2)(xx0)b=0[xx0a1=yy0a2  ,αx+βy+γ=0] \begin{gather*} \begin{array} {cc} (1) & \bm{x} = \bm{x}_{0} + t \bm{a} \; , \\ (2) & (\bm{x} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} = 0 \\ \end{array} \\ \left[ \begin{array} {c} \displaystyle \frac{\, x - x_{0} \,}{a_{1}} = \displaystyle \frac{\, y - y_{0} \,}{a_{2}} \; , \\ \alpha x + \beta y + \gamma = 0 \\ \end{array} \right] \end{gather*} (1)x=x0+ta[xx0a1=yy0a2=zz0a3  ,{α1x+β1y+γ1z+δ1=0α2x+β2y+γ2z+δ2=0] \begin{gather*} \begin{array} {cc} (1) & \bm{x} = \bm{x}_{0} + t \bm{a} \end{array} \\ \left[ \begin{array} {c} \displaystyle \frac{\, x - x_{0} \,}{a_{1}} = \displaystyle \frac{\, y - y_{0} \,}{a_{2}} = \displaystyle \frac{\, z - z_{0} \,}{a_{3}} \; , \\ \left\{ \begin{array} {c} \alpha_{1} x + \beta_{1} y + \gamma_{1} z + \delta_{1} = 0 \\ \alpha_{2} x + \beta_{2} y + \gamma_{2} z + \delta_{2} = 0 \end{array} \right. \\ \end{array} \right] \end{gather*}
平面の方程式(2)(xx0)b=0[αx+βy+γz+δ=0] \begin{gather*} \begin{array} {cc} (2) & (\bm{x} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} = 0 \end{array} \\ \left[ \begin{array} {c} \alpha x + \beta y + \gamma z + \delta = 0 \\ \end{array} \right] \end{gather*}

解説

方向ベクトルと法線ベクトル

平面上の直線、空間内の直線と平面は(11)方向ベクトルまたは(22)法線ベクトルを用いたベクトル方程式により表されます。

平面から空間への拡張

ベクトルの性質は、平面から空間へ自然な形で拡張されます。例えば、平面上の直線について成り立つ方向ベクトルの性質は、空間内の直線の方向ベクトルついても成り立ちます。

このような理由から、(11)方向ベクトル a\bm{a} を用いた平面上の直線の方程式は、空間内の直線の方程式と同じ形になります。また、(22)法線ベクトル b\bm{b} を用いた平面上の直線の方程式は、空間内の平面の方程式と同じ形になります。

座標系が与えられている場合

上記の一覧表において、大括弧内の方程式は、平面や空間に直交座標系が与えられた場合の直線と平面の方程式です。

座標変数に関する方程式

平面または空間に座標系が与えられている場合、直線や平面の方程式は、座標変数に関する方程式として表すことができます。これらは、対応するベクトル方程式に現れるベクトル(x,\bm{x}, x0,\bm{x}_{0}, a,\bm{a}, b\bm{b} など)を成分表示することで得られます。

直線と平面を表す一次方程式

平面上の直線の方程式22 つの座標変数(x,yx, y)に関する一次方程式で、空間内の平面の方程式33 つの座標変数(x,y,zx, y, z)に関する一次方程式でそれぞれ表されます。

また、空間内の直線の方程式は、 33 つの座標変数(x,y,zx, y, z)に関する連立一次方程式として表されます。これは、空間内の直線が 22 つの(一次方程式により表される)平面の交線であることに対応しています。


各方程式の詳細

各方程式の詳細については、それぞれ、次の項を参照してください。


距離の公式(まとめ)

概要

平面上の点と直線の距離、空間内の点と直線および平面の距離は、ベクトルを用いて、それぞれ次のように表すことができます。

距離平面上空間内
点と直線(1)d=x1x02a2{(x1x0)a}2avp1  ,(2)d=  (x1x0)b  bvp1[d=  αx1+βy1+γ  α2+β2VP1] \begin{gather*} \begin{array} {cc} (1) & d = \displaystyle \frac{\, \sqrt{\, {\lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{0} \, \rVert}^{2} {\lVert \, \bm{a} \, \rVert}^{2} - \big\{ (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{a} \big\}^{2} \,} \,}{\, \lVert \, \bm{a} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \; , \\ (2) & d = \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \; \big\rvert \,}{\, \lVert \, \bm{b} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ \end{array} \\ \left[ \begin{array} {c} d = \displaystyle \frac{\, \lvert \; \alpha x_{1} + \beta y_{1} + \gamma \; \rvert \,}{\, \sqrt{\, {\alpha}^{2} + {\beta}^{2} \vphantom{ {\bm{VP}}^{1} } \,} \,} \end{array} \right] \end{gather*} (1)d=x1x02a2{(x1x0)a}2avp1 \begin{gather*} \begin{array} {cc} (1) & d = \displaystyle \frac{\, \sqrt{\, {\lVert \, \bm{x}_{1} - \bm{x}_{0} \, \rVert}^{2} {\lVert \, \bm{a} \, \rVert}^{2} - \big\{ (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{a} \big\}^{2} \,} \,}{\, \lVert \, \bm{a} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ \end{array} \\ % \left[ \begin{array} {c} % \text{-} % \end{array} \right] \end{gather*}
点と平面(2)d=  (x1x0)b  bvp1[d=  αx1+βy1+γz1+δ  α2+β2+γ2VP1] \begin{gather*} \begin{array} {cc} (2) & d = \displaystyle \frac{\, \big\lvert \; (\bm{x}_{1} - \bm{x}_{0}) \cdot \bm{b} \; \big\rvert \,}{\, \lVert \, \bm{b} \, \rVert \vphantom{\sqrt{\, {\bm{vp}}^{1} \,}} \,} \\ \end{array} \\ \left[ \begin{array} {c} d = \displaystyle \frac{\, \lvert \; \alpha x_{1} + \beta y_{1} + \gamma z_{1} + \delta \; \rvert \,}{\, \sqrt{\, {\alpha}^{2} + {\beta}^{2} + {\gamma}^{2} \vphantom{ {\bm{VP}}^{1} } \,} \,} \end{array} \right] \end{gather*}

解説

方向ベクトルと法線ベクトル

平面上の点と直線の距離、空間内の点と直線および平面の距離は(11)方向ベクトルまたは(22)法線ベクトルを用いて表されます。

平面から空間への拡張

直線と平面の方程式と同様に、ベクトルの性質は、平面から空間へ自然な形で拡張されます。例えば、平面上の直線について成り立つ方向ベクトルの性質は、空間内の直線の方向ベクトルついても成り立ちます。

このような理由から、(11)方向ベクトル a\bm{a} を用いた平面上の点と直線の距離の公式は、空間内の点と直線の距離の公式と同じ形になります。また、(22)法線ベクトル b\bm{b} を用いた平面上の点と直線の距離の公式は、空間内の点と平面の距離の公式と同じ形になります。

座標系が与えられている場合

上記の一覧表において、大括弧内の式は、平面や空間に直交座標系が与えられた場合の距離の公式です。

座標変数による公式

平面または空間に座標系が与えられている場合、点と直線および平面の距離は、座標変数に関するとして表すことができます。これらは、対応する(ベクトルによる)公式において、各ベクトル(x,\bm{x}, x0,\bm{x}_{0}, a,\bm{a}, b\bm{b} など)を成分表示することで得られます。

平面上の直線は 22 つの変数を持つ一次方程式で、空間内の平面は 33 つの変数を持つ一次方程式で、それぞれ表されます。このため、平面上の点と直線の距離の公式空間内の点と平面の距離の公式は基本的に同じ形で、変数の数のみ異なる式となります。

空間内の点と直線の場合、座標変数による距離の公式はない

空間内の点と直線の距離については、与えられた座標から距離を計算する簡潔な公式はありません。

空間内の直線は 22 つの一次方程式の連立方程式として表され、11 つの式にまとめることができないためです(空間内の点と直線の距離を参照)。

空間内の点の座標と直線を表す連立一次方程式が具体的に与えられている場合、まず与えられた点から直線に下した垂線の足の座標を求め、次に垂線を表すベクトルの長さを求める、といった段階的なアプローチが有効です。具体的な計算手順については、空間内の点と直線の距離(計算例)に示した通りです。


各公式の詳細

各距離の公式の詳細については、それぞれ、次の項を参照してください。


まとめ


参考文献

[1] 齋藤正彦. 線型代数入門. 東京大学出版会. 1966.
[2] 永田雅宣 他. 理系のための線型代数の基礎. 紀伊國屋書店. 1986.
[3] 川久保勝夫. 線形代数学 [新装版]. 日本評論社. 2010.
[4] 松坂和夫. 線型代数入門 [新装版]. 岩波書店. 2018.
[5] 三宅敏恒. 線形代数学 初歩からジョルダン標準形へ. 培風館. 2008.
[6] S. Lang. Linear Algebra Third Edition. Springer. 1987.
[7] T. Miyake. Linear Algebra From the Beginnings to the Jordan Normal. Springer. 2022.
[8] 雪江明彦. 代数学 11 群論入門. 日本評論社. 2010.
[9] 雪江明彦. 代数学 22 環と体とガロア理論. 日本評論社. 2010.
[10] 桂利行. 代数学 I\text{I} 群と環. 東京大学出版会. 2004.
[11] 松坂和夫. 代数系入門. 岩波書店. 1976.
[12] 高木貞治. 代数学講義 [改訂新版]. 共立出版. 1965.
[13] S. Lang. Algebra Revised Third Edition. Springer. 2002.
[14] M. Artin. Algebra Second Edition. Pearson Education Limited. 2014.
[15] 青本和彦 他. 数学入門辞典. 岩波書店. 2005.


初版:2023-09-04   |   改訂:2025-01-02