直交補空間の性質

部分空間の包含関係は、それぞれの直交補空間において逆転します。また、直交補空間をとることで、部分空間の「和空間」と「共通部分」は互いに入れ替わります。

これらは、いずれも直交補空間の包含関係に関して成り立つ性質です。

直交補空間の包含関係


定理 7.14 (直交補空間の包含関係)

VVKK 上の計量ベクトル空間、W1,W2W_{1}, W_{2}VV の部分空間とすると、次が成り立つ。

(1)W1W2    W2W1(2)(W1+W2)=  W1W2(3)(W1W2)=  W1+W2 \begin{align*} & (1) & W_{1} \subset W_{2} \; &\Leftrightarrow \; W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \tag{7.3.5} \\ & (2) & {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} & \, = \; W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} \tag{7.3.6} \\ & (3) & {(\, W_{1} \cap W_{2} \,)}^{\perp} & \, = \; W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} \tag{7.3.7} \\ \end{align*}



解説

(1)部分空間と直交補空間の包含関係

定理 7.14 (直交補空間の包含関係)の(11)は、W1W_{1}W2W_{2} の部分空間であることと、W2W_{2} の直交補空間(W2W_{2}^{\perp})が W1W_{1} の直交補空間(W1W_{1}^{\perp})の部分空間であることが同値であることを表しています。

すなわち、計量ベクトル空間 VV において、22 つの部分空間 W1,W2W_{1}, W_{2} の包含関係は、それぞれの直交補空間 W1,W2W_{1}^{\perp}, W_{2}^{\perp} において逆転するといえます。

(2)和空間の直交補空間

定理 7.14 (直交補空間の包含関係)の(22)は、22 つの部分空間 W1W_{1}W2W_{2} の和空間の直交補空間 (W1+W2){(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} が、それぞれの直交補空間の共通部分 W1W2W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} に等しいことを表しています。

(3)共通部分の直交補空間

同様に、定理 7.14 (直交補空間の包含関係)の(33)は、22 つの部分空間 W1W_{1}W2W_{2} の共通部分の直交補空間 (W1W2){(\, W_{1} \cap W_{2} \,)}^{\perp} が、それぞれの直交補空間の和空間 W1+W2W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} に等しいことを表しています。

和空間と共通部分の直交補空間の対応関係

22)と(33)はある種の対応関係にあります。(22)の左辺の「和空間」を「共通部分」に、右辺の「共通部分」を「和空間」に入れ替えたものが(33)に他なりません。また、(33)の左辺の「共通部分」を「和空間」に、右辺の「和空間」を「共通部分」に入れ替えたものが(22)になります。

くだけた表現でいえば、直交補空間をとることで、部分空間の「和空間」と「共通部分」は互いに入れ替わるといえます。

和空間と共通部分とは

W1W2W_{1} \cap W_{2}W1+W2W_{1} + W_{2} は、それぞれ、W1W_{1}W2W_{2}共通部分和空間を表しています。それぞれの定義は、次の通りです(定理 4.7(共通部分と和空間)参照)。

11)共通部分(intersection\text{intersection}
\quad W1W2={wwW1wW2}W_{1} \cap W_{2} = \{ \bm{w} \mid \bm{w} \in W_{1} \land \bm{w} \in W_{2} \}
22)和集合(union\text{union}
\quad W1W2={wwW1wW2}W_{1} \cup W_{2} = \{ \bm{w} \mid \bm{w} \in W_{1} \lor \bm{w} \in W_{2} \}
33)和空間(sum of spaces\text{sum of spaces}
\quad W1+W2={w1+w2w1W1,  w2W2}W_{1} + W_{2} = \{ \bm{w}_1 + \bm{w}_2 \mid \bm{w_1} \in W_{1}, \; \bm{w_2} \in W_{2} \}

和集合と和空間の違い

特に、W1W_{1}W2W_{2} の和空間(W1+W2W_{1} + W_{2})は、W1W_{1}W2W_{2} の和集合(W1W2W_{1} \cup W_{2})により生成される部分空間です。和空間と和集合を混同しないよう注意が必要です。

共通部分と和空間はともに部分空間

定理 4.7(共通部分と和空間)より、W1W_{1}W2W_{2} の和空間(W1+W2W_{1} + W_{2})と共通部分(W1W2W_{1} \cap W_{2})はともに VV の部分空間です。



証明

11)まず、W1W2W2W1W_{1} \subset W_{2} \Rightarrow W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} を導く。vW2\bm{v} \in W_{2}^{\perp} とすると、任意の w2W2\bm{w}_{2} \in W_{2} に対して vw2=0\bm{v} \cdot \bm{w}_{2} = 0 が成り立つ。このとき、W1W2W_{1} \subset W_{2} より、w1W1\bm{w}_{1} \in W_{1} ならば w1W2\bm{w}_{1} \in W_{2} であるから、任意の w1\bm{w}_{1} に対して vw1=0\bm{v} \cdot \bm{w}_{1} = 0 が成り立つ。よって、vW1\bm{v} \in W_{1}^{\perp} となる。したがって、W1W2W2W1W_{1} \subset W_{2} \Rightarrow W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp}

次に、W2W1W1W2W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \Rightarrow W_{1} \subset W_{2} を導く。vW1\bm{v} \in W_{1} とすると、任意の w1W1\bm{w}_{1}^{\perp} \in W_{1}^{\perp} に対して vw1=0\bm{v} \cdot \bm{w}_{1}^{\perp} = 0 が成り立つ。このとき、W2W1W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} より、w2W2\bm{w}_{2}^{\perp} \in W_{2}^{\perp} ならば w2W1\bm{w}_{2}^{\perp} \in W_{1}^{\perp} であるから、任意の w2\bm{w}_{2}^{\perp} に対して vw2=0\bm{v} \cdot \bm{w}_{2}^{\perp} = 0 が成り立つ。よって、vW2\bm{v} \in W_{2} となる。したがって、W2W1W1W2W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \Rightarrow W_{1} \subset W_{2}

以上から、W1W2W2W1W_{1} \subset W_{2} \Leftrightarrow W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} が成り立つ。


22W1W1+W2W_{1} \subset W_{1} + W_{2} かつ W2W1+W2W_{2} \subset W_{1} + W_{2} であることから、11より、(W1+W2)W1{(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} かつ (W1+W2)W2{(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} \subset W_{2}^{\perp} が成り立つ。すなわち、w(W1+W2)\bm{w} \in {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} とすると、wW1\bm{w} \in W_{1}^{\perp} かつ wW2\bm{w} \in W_{2}^{\perp} であるから、wW1W2\bm{w} \in W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} となる。したがって、(W1+W2)W1W2{(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp}

逆に、wW1W2\bm{w} \in W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} とすると、wW1\bm{w} \in W_{1}^{\perp} かつ wW2\bm{w} \in W_{2}^{\perp} であるから、任意の w1W1\bm{w}_{1} \in W_{1}w2W2\bm{w}_{2} \in W_{2} について ww1=0,ww2=0\bm{w} \cdot \bm{w}_{1} = 0, \, \bm{w} \cdot \bm{w}_{2} = 0 が成り立つ。したがって、任意の w1+w2W1+W2\bm{w}_{1} + \bm{w}_{2} \in W_{1} + W_{2} に対して、次が成り立つ。

w(w1+w2)=ww1+ww2=0+0=0 \begin{align*} \bm{w} \cdot (\bm{w}_{1} + \bm{w}_{2}) &= \bm{w} \cdot \bm{w}_{1} + \bm{w} \cdot \bm{w}_{2} \\ &= 0 + 0 \\ &= 0 \\ \end{align*}

よって、w(W1+W2)\bm{w} \in {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} であり、W1W2(W1+W2)W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} \subset {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp}

以上から、(W1+W2)=(W1W2){(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} = {(\, W_{1} \cap W_{2} \,)}^{\perp} が成り立つ。


33W1W_{1}^{\perp}W2W_{2}^{\perp} はともに VV の部分空間であるから、22より、次が成り立つ。

(W1+W2)=(W1)(W2)=W1W2 \begin{align*} {(\, W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} \,)}^{\perp} &= {(W_{1}^{\perp})}^{\perp} \cap {(W_{2}^{\perp})}^{\perp} \\ &= W_{1} \cap W_{2} \end{align*}

したがって、次が成り立つ。

(W1W2)={(W1+W2)}=W1+W2 \begin{align*} {(\, W_{1} \cap W_{2} \,)}^{\perp} % &= {\left\{\, {(\, W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} \,)}^{\perp} \,\right\}}^{\perp} \\ &= {\big\{\, {(\, W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} \,)}^{\perp} \,\big\}}^{\perp} \\ &= W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} \tag*{\square} \end{align*}



証明の考え方

11直交補空間の定義にしたがって、W1W2W2W1W_{1} \subset W_{2} \Rightarrow W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} かつ W2W1W1W2W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \Rightarrow W_{1} \subset W_{2} が成り立つことを示します。

22)と(33)の証明では、それぞれ(11)と(22)を利用します。

(1)の証明

W1W2W2W1W_{1} \subset W_{2} \Rightarrow W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} の証明
  • まず、W1W2W_{1} \subset W_{2} ならば W2W1W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} であることを示します。
    • これは、W1W2W_{1} \subset W_{2} を仮定して、W2W1W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} が成り立つことを示せばよいです。
    • すなわち、vW2vW1\bm{v} \in W_{2}^{\perp} \Rightarrow \bm{v} \in W_{1}^{\perp} を導きます。
  • いま、vW2\bm{v} \in W_{2}^{\perp} とすると、直交補空間の定義より、任意の w2W2\bm{w}_{2} \in W_{2} に対して vw2=0\bm{v} \cdot \bm{w}_{2} = 0 が成り立ちます。
  • また、仮定より W1W2W_{1} \subset W_{2} なので、w1W1\bm{w}_{1} \in W_{1} ならば w1W2\bm{w}_{1} \in W_{2} が成り立ちます。よって、v\bm{v} について、任意の w1W1\bm{w}_{1} \in W_{1} に対して vw1=0\bm{v} \cdot \bm{w}_{1} = 0 が成り立ちます。再び直交補空間の定義より、これは vW1\bm{v} \in W_{1}^{\perp} を意味します。
  • したがって、W1W2W2W1W_{1} \subset W_{2} \Rightarrow W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} が成り立つといえます。
W2W1W1W2W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \Rightarrow W_{1} \subset W_{2} の証明
  • 次に、W2W1W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} ならば W1W2W_{1} \subset W_{2} であることを示します。
    • 同様に、W2W1W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} を仮定して、W1W2W_{1} \subset W_{2} が成り立つことを示せばよいです。
    • すなわち、vW1vW2\bm{v} \in W_{1} \Rightarrow \bm{v} \in W_{2} を導きます。
  • いま、vW1\bm{v} \in W_{1} とすると、直交補空間の定義より、任意の w1W1\bm{w}_{1}^{\perp} \in W_{1}^{\perp} に対して vw1=0\bm{v} \cdot \bm{w}_{1}^{\perp} = 0 が成り立ちます。
  • また、仮定より、W2W1W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} なので、w2W2\bm{w}_{2}^{\perp} \in W_{2}^{\perp} ならば w2W1\bm{w}_{2}^{\perp} \in W_{1}^{\perp} が成り立ちます。よって、v\bm{v} について、任意の w2\bm{w}_{2}^{\perp} に対して vw2=0\bm{v} \cdot \bm{w}_{2}^{\perp} = 0 が成り立ちます。したがって、vW2\bm{v} \in W_{2} となります。
  • したがって、W2W1W1W2W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \Rightarrow W_{1} \subset W_{2} が成り立つといえます。
(1)の証明のまとめ
  • 以上から、W1W2W2W1W_{1} \subset W_{2} \Rightarrow W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} かつ W2W1W1W2W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \Rightarrow W_{1} \subset W_{2} が成り立つので、W1W2W2W1W_{1} \subset W_{2} \Leftrightarrow W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} であることが示されました。

(2)の証明

(W1+W2)W1W2{(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} の証明
  • まず、(W1+W2)W1W2{(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} であることを示します。

    • これは、w(W1+W2)wW1W2\bm{w} \in {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} \Rightarrow \bm{w} \in W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} を導くことで示せます。
  • いま、和空間の定義より、次が成り立ちます。

    W1W1+W2W2W1+W2 \begin{gather*} & W_{1} \subset W_{1} + W_{2} \\ & W_{2} \subset W_{1} + W_{2} \end{gather*}

  • また、11より、次が成り立ちます。

    W1W1+W2    (W1+W2)W1W2W1+W2    (W1+W2)W2 \begin{gather*} W_{1} \subset W_{1} + W_{2} \; \Leftrightarrow \; {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \\ W_{2} \subset W_{1} + W_{2} \; \Leftrightarrow \; {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} \subset W_{2}^{\perp} \end{gather*}

  • すなわち、w(W1+W2)\bm{w} \in {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} ならば wW1\bm{w} \in W_{1}^{\perp} かつ wW2\bm{w} \in W_{2}^{\perp} であり、wW1W2\bm{w} \in W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} が成り立ちます。

  • したがって、(W1+W2)W1W2{(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} が成り立ちます。

W1W2(W1+W2)W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} \subset {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} の証明
  • 次に、W1W2(W1+W2)W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} \subset {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} であることを示します。

    • 同様に、wW1W2w(W1+W2)\bm{w} \in W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} \Rightarrow \bm{w} \in {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} を導くことで、これを示します。
  • いま、wW1W2\bm{w} \in W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} とすると、wW1\bm{w} \in W_{1}^{\perp} かつ wW2\bm{w} \in W_{2}^{\perp} であるから、直交補空間の定義より、任意の w1W1\bm{w}_{1} \in W_{1}w2W2\bm{w}_{2} \in W_{2} について ww1=0,ww2=0\bm{w} \cdot \bm{w}_{1} = 0, \, \bm{w} \cdot \bm{w}_{2} = 0 が成り立ちます。

  • したがって、任意の w1+w2W1+W2\bm{w}_{1} + \bm{w}_{2} \in W_{1} + W_{2} に対して、次が成り立ちます。

    w(w1+w2)=ww1+ww2=0+0=0 \begin{align*} \bm{w} \cdot (\bm{w}_{1} + \bm{w}_{2}) &= \bm{w} \cdot \bm{w}_{1} + \bm{w} \cdot \bm{w}_{2} \\ &= 0 + 0 \\ &= 0 \\ \end{align*}

  • よって、wW1W2\bm{w} \in W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} ならば w(W1+W2)\bm{w} \in {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} であり、W1W2(W1+W2)W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} \subset {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} が成り立ちます。

(2)の証明のまとめ
  • 以上から、(W1+W2)W1W2{(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} かつ W1W2(W1+W2)W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} \subset {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} であり、したがって、 (W1+W2)=(W1W2){(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} = {(\, W_{1} \cap W_{2} \,)}^{\perp} が成り立つことが示されました。

(3)の証明

  • 22を用いて、(W1+W2)=W1W2{(\, W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} \,)}^{\perp} = W_{1} \cap W_{2} であることを導きます。

    • 上記の考察の通り、2233は、直交補空間をとることで、部分空間の「和空間」と「共通部分」が互いに入れ替わることを表しています。
    • したがって、2233のいずれかが示されていれば、もう一方はその裏返しなります。
  • いま、W1W_{1}^{\perp}W2W_{2}^{\perp} はともに VV の部分空間であるから、W1W_{1}^{\perp}W2W_{2}^{\perp} の和空間に対して22を適用すると、次が成り立ちます。

    (W1+W2)=(i)(W1)(W2)=(ii)W1W2 \begin{align*} {(\, W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} \,)}^{\perp} &\overset{(\text{i})}{=} {(W_{1}^{\perp})}^{\perp} \cap {(W_{2}^{\perp})}^{\perp} \\ &\overset{(\text{ii})}{=} W_{1} \cap W_{2} \tag{\ast} \end{align*}

    • i\text{i}W1W_{1}^{\perp}W2W_{2}^{\perp} に対して22を適用することで得られます。
    • ii\text{ii}前項定理 7.13(直交補空間)によります。すなわち、直交補空間の直交補空間はもとの部分空間に等しくなります。
  • \ast)式において、両辺の直交補空間をとることで、次が得られます。

    (W1W2)=(i){(W1+W2)}=(ii)W1+W2 \begin{align*} {(\, W_{1} \cap W_{2} \,)}^{\perp} &\overset{(\text{i})}{=} {\big\{\, {(\, W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} \,)}^{\perp} \,\big\}}^{\perp} \\ &\overset{(\text{ii})}{=} W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} \end{align*}

  • 以上から、(W1W2)=W1+W2{(\, W_{1} \cap W_{2} \,)}^{\perp} = W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} が得られ、題意が示されました。


まとめ

  • VVKK 上の計量ベクトル空間、W1,W2W_{1}, W_{2}VV の部分空間とすると、次が成り立つ。

    (1)W1W2    W2W1(2)(W1+W2)=  W1W2(3)(W1W2)=  W1+W2 \begin{align*} & (1) & W_{1} \subset W_{2} \; &\Leftrightarrow \; W_{2}^{\perp} \subset W_{1}^{\perp} \\ & (2) & {(\, W_{1} + W_{2} \,)}^{\perp} & \, = \; W_{1}^{\perp} \cap W_{2}^{\perp} \\ & (3) & {(\, W_{1} \cap W_{2} \,)}^{\perp} & \, = \; W_{1}^{\perp} + W_{2}^{\perp} \\ \end{align*}

    • 11)部分空間の包含関係は、それぞれの直交補空間において逆転する。
    • 22)部分空間の和空間の直交補空間は、それぞれの直交補空間の共通部分に等しい。
    • 33)部分空間の共通部分の直交補空間は、それぞれの直交補空間の和空間に等しい。

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初版:2023-11-22   |   改訂:2025-03-24